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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
14/135

ほぼほぼ心肺停止

突如現れたお兄ちゃんによって窮地を脱した英星たちだが……?

「お兄ちゃん!」

「よかった、うまくいった。本当は時間がなくて中級神聖系スペルの《ホーリーブラスト》のつづりしか書けなかったのよね」

「お兄ちゃーんッ! 怖かったよーッ!」


 僕は目に涙を溜めに溜めて、目の前の兄に抱きつき、泣きじゃくる。


「ははッ! お前が突っ込まないなんて珍しいな英星えいせい!」

「だって……、だってぇぇぇ――――――ッ!」

「……そういえば紫電しでんのガキは?」

「そうだ! 紫電!!」


 僕らは紫電に駆け寄ったが……重傷を通り越して心肺停止に近かった。

 右側頭部がぱっくり裂けて出血しており、開きっぱなしの両目はうつろで光がない。身体中からだじゅう青あざだらけで、深く痛々しい切り傷がそこかしこに見られた。更に、右足が折れているのか、すねが途中から身体の前方に曲がっている。荒波あらなみ紫電は今まさに黄泉よみへと旅立とうとしていた。


「紫電! 紫電!」


 僕の呼びかけにぴくりとも反応しない。

 身体に触れて、思わず「ひっ!」とおびえた声を出してしまった。

 身体が……身体が冷たい!


かろうじて……まだ息はあるようだな……」

「お兄ちゃんどうしよう! 紫電が死んじゃう!」

「まかせろ。綴りを書く!」


 綴りを書いたお兄ちゃんの体からまばゆい光が発せられる。神聖系回復スペル《キュアライト》だ。

 ――――しかし瀕死なためか、なかなか傷が塞がらない。


「お兄ちゃんもっと頑張って!」

「……頑張っとる!!」


 お兄ちゃんがありったけの魔力を注ぎ込み、更に体から光を発する。


「これでどうだ――――――――ッ!」

「もっと! もーっと頑張って!」


 お兄ちゃんは最後の力を振り絞ると、くるりと回ってその場に伸びた。


「もうすっからかんどすえ……!」

「紫電!」

「……あ………………う…………」


 光が戻らぬ瞳のまま、紫電がうめいた。


「……これで危機は脱した。後は……時間が経てば……ゼエ……ゼエ…………」

「よかった……! よかった……!」


 ぎゅっと紫電を抱きしめる。


「……えい……せ……い…………? いい……にお……い…………」


 ぶっ飛ばしたくなったが、なんとかこらえた。相手は重傷者だ。


「英星……あいつは……? さっきの……敵……」

「大丈夫よ紫電! 話すと長くなるんだけど、なんとか追い返した!」

「ほらね……英星は強いんだから……どんな時も諦めちゃダメだよ……」


 その言葉を聴いた時、何故か涙がぶわわっと溢れてきた。


「う……うんっ! そだね……ぐすっ。うっ……うっ……!」

「英星、神であるお前が諦めたら奇跡も何も起きないからな! そこだけは言っておくぞ!」


 紫電の顔色もだいぶ良くなってきた。僕の胸に顔をうずめて、すんすんと鼻を鳴らしている。

 あれ? 紫電も泣いている……?


「うーん……英星……やっぱりいい匂いだ……」

「ぎゃ――――――――――ッ! 変態――――――――――ッ!」

「ふごぉっ!?」


 しまった。とうとうぶっ飛ばしてしまった。紫電はバトル漫画のように何度か派手に転げたのち、近くにあった岩に頭から思いっ切り激突。岩に大きなヒビ入っちゃったけど大丈夫だったかな。

 ま、いいや。僕は悪くない。


「ぃい痛ったあ――――――――ッ! ちょっとやめてよ! ボク死にかけ……て、あれ? 立てる……」

「紫電! 我が妹に手を出すなど100年早いわ――――――――ッ!」

「わ、我が妹って?」

「あ、いや、弟」

「英星がソラの弟……?」

「ま、紫電も元気になったみたいだし。……あ、やっと雨降ってきたね。話の続きは木陰ででも」

「ヌンの奴にだいぶ燃やされちまったけどな。紫電! 行くぞ!」

「もー、なんなんだよーっ!」



なんとか回復した紫電!


次回もお楽しみに!

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