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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
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デューク・フィレゾー

神族始末屋ことデューク・フィレゾーと遭遇した英星たち!

いかにも強そうな相手だが……?

「ど、どうしよう。ヌンと違って強そうだよ……!」


 紫電しでんが弱気になるのも無理はない。

 デュークの容姿を一言で言い表すならば、大悪魔だいあくまといったところだろうか。筋骨隆々とした黒光りする肉体に、体中に生えた大きなとげ。尾骨から伸びた長い尻尾を、縦の長さだけでも人間の大人3人分はあろうかと思われる巨大な翼が覆っている。何よりもが怖い。何日徹夜したのかと突っ込みたくなるほど、その両のまなこは深いくれないに染まっている。明らかに上位の死神族……!


「神界を追放になった哀れな神族がいるようだったからな。通りすがりに首を取っておこうと考えた。お前かな……?」

「なん……だって……! 英星えいせいを! 英星を侮辱するなあッ!!」


 紫電がデュークに向かって駆け出した。いつもながら速い!


「ふん!」


 デュークのてのひらから炎の弾がバルカンのように連続で発射された。

 紫電はそれらを右に左にかわしながら、デュークめがけて疾走する。


「うおおぉおおぉおぉおぉ!」


 紫電がデュークのふところに飛び込んだ。先ほど入手した荒波あらなみつるぎうならせる。


「やああああああああっ!」


 がきんっ!

 ……無情にも帰ってきたのは鈍い金属音。刃が通らなかったのだ。

 なまくらというわけではなさそうな刀だったが……。


「えっ……?」


 紫電から驚愕の声が漏れた。

 そんな彼を無骨な手が襲う。


「わああああああああっ!」


 デュークが紫電を鷲摑わしづかみにし、高々と掲げた。


「見ていろ見習い神族。こいつが内臓をまき散らし四散する様を……!」


 紫電の小さな身体にぎりぎりと圧力がかかる。


「う……ぐ……あ…………!」


 更にデュークの長い指爪が、紫電に深々と食い込む。皮膚が破け、身体の至る所から血が噴き出し始めた。


「ぎゃああああああああ!!」

「いいぞ小僧。もっと叫べ! もっと! もっとだ!」


 焦土に血の海が形作られていく。

 デュークと遭遇してから、ここまでかかった時間はまだ1分ほどしか経っていないだろう。

 あまりに絶望的な状況に、僕は両手をついてへたりとその場に崩れた。


「やめて! もうやめてえ! 僕を……僕を好きにしていいから! お願い……紫電だけは……紫電だけは……!」

「だ……め……だ……! え…………いせ…………い……!」

「黙れ」

「…………っ!」


 まるでボロ雑巾か何かのように地面に叩きつけられる紫電。

 ……もう悲鳴を上げない。

 力が違いすぎる。順調に強くなっているつもりだった。でも、それは僕らの勝手な自惚うぬぼれだったのだ。

 血まみれの紫電はぐったりとして、動かない。

 僕はその紫電を直視できず、顔をうつむかせてなんとか正気を保っている。

 デュークの気配が近づいてきた。……顔をゆっくりと上げる。

 ……大悪魔がわらっていた。


「あ……ああ…………」

「雑魚が……お前の首から下だけ吹き飛ばすとしよう。俺が欲しているのは首だけなのでね」


 デュークの掌が赤く光る。


「情けない奴め! 絶望に支配されるなッ! 戦い抜けッ!」


 スペルによる障壁が眼前に出現し……デュークのカースから僕を護った。

 デュークのカースは一瞬にして消滅する。


「なんだと……?」

「《スペルシールド》。神聖系補助スペルさね」


 デュークの驚きの声に答えたのはソラだった。ずけずけと僕とデュークの間に入って来る。


「こ、このコウモリ! 邪魔しよって!」

「コウモリではない! ついでに言うと竜でもない……! ソラでもない!」

「え……!?」

「我が名は川上雷星かわかみらいせい! ここにいる英星の兄! 中級神族の雷星だ!」


 そう叫んだソラの背中には、小さく十字のアザがあった。お兄ちゃんと同じような位置に。


「ウソ……お兄ちゃん……なの……? ホントに……?」

「話は後だ。さてデュークん、取引をしよう。私は今しがた《セイントクロス》のつづりを書き終わった。あの上級神聖系スペルの《セイントクロス》だ。無論君も反撃するだろうが、私は刺し違える覚悟だ。ここで私と果てるか? それとも逃げるか? 選びたまえ」


 お兄ちゃんがかざした小さな手の先には、確かに神聖系スペルの綴りが刻まれていた。


「くっ……! 今日のところは見逃してやろう……!」


 デュークは悔しげにそう言い残すと、闇に包まれ消えていった。



ソラの正体はまさかのお兄ちゃん!


次回もお楽しみに!

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