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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第16章》 いよいよ最終決戦!
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最終決戦

厳星げんせいに死神の罰を!

 床の上にぞんざいに転がる腐敗しきったリーネお母様の首。

 みんな言葉を失った。僕はただ一人両膝をついてへたりこんだ。両手で頭を抱える。


「あ、ぅ、ウソだ。お母様が、お、かあ、さまが、おかあ、おかあさま……」


 いつもいじめられた僕を優しく励ましてくれた。

 いつも家に帰ったら僕とお兄ちゃんに温かいお料理を作って待っていてくれた。

 いつも悪いことばかりする僕を優しく叱ってくれた。

 もう二度と叱られることはない。


「いやああああああああっ! お母様――ッ!」

英星えいせいっ!」


 気が遠くなり、視界が暗くなる。僕は竜槍ラースの穂先を左手で握りつけた。

 噴き出す血に、痛みに。僕は意識を覚醒させた。

 頭がずきりと痛むが戦闘に支障はない。

 泣きながら厳星げんせいめつける。どこまでも真っすぐに。

 僕の視線を受けてか、厳星が顔をしかめた気がした。

 僕はゆっくりと立ち上がる。


「厳星! 僕らは自分たちや死神族のみんなのために戦う! 誰のためにも戦えないお前なんかに負けるもんか!」

「面白い! ならわしに勝ってみせろ!」


 厳星が聖杖せいじょうスターストームを一閃する。

 4匹の凍れる虎が杖の先端クラッチから現れた。


「《フリーズタイガー》か……!」

「英星! あの虎たちはボクたちにまかせて厳星の相手をしてきて!」


 ありがとう紫電しでん! 駆け出した紫電が猛る氷の虎たちと戦い始めた。

 僕はお母様の首を大事にデシューに渡す。クラリスやいき王児おうじも虎たちと交戦しだした。

 それを横目で見ながら、僕は竜槍ラースを構えて厳星に真っ正面から突っ込む。

 厳星は僕の竜槍ラースによる一撃を難なく受け止めた。


「あれは4年前じゃったか……」


 厳星が何かを思い出すように喋り出す。


「人間界でアクセル・キルンベルガーとかいう死神を復活させたのじゃが……まさかその娘にこんな仕打ちを受けるとはなぁ……」

「なんですって!?」

「……くく。アクセル・キルンベルガーを復活させたのはこの儂じゃよ」


 訳が解らなかった。パパを復活させたのは……厳星? 何のために……!

 更に厳星は続ける。


「それを偶然人間の夫婦に見られてなあ。やむなく手にかけたのじゃ。確か……広瀬ひろせとかいう夫婦じゃったなぁ……くくく……!」


 何かが砕ける音がした。

 厳星と鍔迫つばぜり合いしながら後ろを見ると、粋がかかとを落として氷の虎を叩き割っていた。

 粋は鬼の形相でこちらを睨む。


「あんただったのね……パパとママを殺したのは……!」

「おぉ、そういえば広瀬の娘がおったのを忘れておったわい」


 厳星はうすら笑いを浮かべて舌をべろりと出した。

 粋は悔し涙を目に溜めて、


「厳星! あんただけは絶対に許さないからッ!」


 怒りに我を忘れて厳星に突撃する。


「あたしがっ! あたしが殺してやるっ!」


 厳星は聖杖スターストームのクラッチを輝かせた。粋の足元に氷の虎挟みができる。


「い、粋! ストップ!」


 粋は止まらない。もはや聞く耳を持たないようだ。

 厳星が口の端を不気味に吊り上げる。


「《フリーズトラップ》」

「ぎゃっ!」


 氷の虎挟みが粋の左足を捉えた。

 粋はつんのめって顔から床に激突した。氷の罠が少女の左足を蝕む。


「い、痛い……痛いよう……パパ……ママ……」

「お前はそこで大人しくしておれ。後で儂の慰み者にしてやるわ。どんな風に抱かれたいかのう……?」

「ひっ!? ひいいぃいいぃいっ!」


 先ほどまでの戦意はどこへやら、粋はすっかりおびえてしまった。


「粋お姉さんっ!」


 粋の危機を見て、虎との交戦もそこそこに王児が粋の救援に入る。


「王児! 助けて王児!」

「大変です! 傷口から凍りかけてます!」

「何をよそ見しておる? レイチェル姫っ!」


 厳星の聖杖スターストームが僕の脇腹をぐ。


「がうっ!」


 横なりに吹き飛んだ僕は、ごろごろと転がって背中から壁に激突した。く……苦しい……息ができない……! 厳星が僕にゆらりと近づいてくる。

 身体が動かない……! でも……動かさなくちゃ!

 僕は竜槍ラースを床に突き立てて全体重を槍にかけながら、歯を食いしばって腕の力だけで立ち上がる。


「お前には教えてやろう。何故儂がアクセル・キルンベルガーを復活させたのか」


 厳星は聖杖スターストームで《シャイニング》のスペルを発動させる。杖の先端クラッチから発生した光がじりじりと僕の肌を焼く。


「……それはな。人間界と死神界の制圧のためじゃ!」

「なん……だって……!?」


 懸命に槍を構えて障壁を張るが、熱を帯びた光が障壁を貫通してくる。槍を持つ両の手の指から肉の焼ける臭いがしてきた。


「くぁ……あ……!」

「熱いじゃろう……? じゃが儂の恨みは今お前が感じている熱さとは比べ物にならんくらい熱く深い……!」


 死神族と人間に恨みだと……!?


「人間は最低最悪のクソ生物。守るに値せん! それを理解せよ死神の小娘!」

「そんなの……死にかけた年寄りの戯言だ……ぁ……!」

「なんじゃと死神風情が!」

「厳星っ!」


 疾風となって駆けてきた赤い髪の勇者が厳星の腰に飛び蹴りを放つ。ばきりと音がして厳星の身体がくの字・・・に曲がった。


「がはっ!」


 文字通り話の腰をへし折った紫電を見て安堵した僕は、焦げ付いた指を床につく。


「英星大丈夫? うわっ! 指が……!」

「紫電。僕のことはいいから……厳星を……あの悪魔を……!」


 クラリスをちらと見ると、まだ氷の虎と戦っていた。王児が倒さずに残した虎の分も相手にしているから時間がかかっているらしい。

 デシューはメガホンを持って応援していた。あのデススライムめ……!



デシュー「厳星をかっ飛ばせー! レ・イ・チェ・ル!」

英星「逆転サヨナラホームラン打って見せるよ!」


次回もお楽しみに!

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