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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第15章》 いざ、最終決戦へ――
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決戦の時

いよいよ決戦の時!

ここまで長かったですなあ!

「おい。起きろ淫乱いんらん王子」


 頭の上でひよこが回っていた紫電しでんを叩き起こし、コウモリの紋章を輝かせて再生の光の波動を送る。満身創痍で暴走していた淫乱王子は目をナルトのように回しながらも覚ます。


「あいたたたたたた……あれ? ボクは?」


 セリフが古典そのものだな。何か他に気が利いたことは言えんのか。


「ねえねえ! ボクのおかげであいつを倒せたんだよ? あの禁呪のダルボワ文字だって決戦前夜に股間が痛むのも我慢しつつ、一晩かかって覚えたんだから!」


 はいはいそーですかー。僕らは紫電の言葉が耳の穴の一方からもう一方に通り過ぎていってしまう。

 その倒した後に豹変したのはどこのどなたでしたっけ?


「ね! 苺柄ちゃん!」

「誰が苺柄ちゃんですか!」


 クラリスはパンツの柄で呼ばれて怒声を上げた。そりゃ誰でも怒るわ。


「わー! 本当に苺柄ですー!」


 何者かが後方からクラリスのスカートに侵入した。これは――


「ぎゃああああああああああ! 変態! どすけべ! 痴漢ーッ!!」


 先ほど治療を施したばかりの王児おうじがクラリスにボッコボコに殴られ、心肺停止に陥った。

 少しは治す側の身にもなってくれよな。けっこう集中力使うんだぞ。

 再びコウモリの紋章を輝かせる。王児が蜂の巣にいたずらした子供のように腫れあがりまくった顔から、元のショタコンが沸き立つかわいい顔に戻った。


「少しはデシューの清純さを見習ってほしいものデス」

「ホントだよ! あんたら決戦直前なのに緊張感なさすぎ!」


 その時、荒波あらなみつるぎが輝いた。


『たーだいまー。すばるだよー』


 荒波の剣の刀身から現れた青白い武士の上半身に、僕らは「こいつ誰だったっけ?」という視線を送る。クラリスだけは初めて見る光景に腰を抜かしていたけど。

 紫電と王児は腰を抜かしたクラリスのパンツを見ようと必死だった。誰かこいつらの性欲をなんとかしてくれ。


「あー久しぶり! 昴さん……! あんた今までどこに行ってたのよ!」


 今回の昴は面具めんぐの上にサングラスをかけている。いきの見事なノリ突っ込みにも動じない。


『少しブラジル旅行に。ほら、これお土産ーっ』

「ブラジルって地球の裏側ですけど……?」


 クラリスの問いを無視して昴が差し出したのは、真っ黒な玉手箱。一体何が入っているんだ……。

 僕がびくつきながら箱を開けると、入っていたのは色とりどりのリボンだった。


「これはボンフィンというミサンガの一種デスね」

「確か手首に2周巻きつけて3つの結び目を作るごとにお願い事を祈願するんでしたっけ?」


 王児が久しぶりに頭脳明晰ずのうめいせきぶりを発揮する。


『自然に切れると願いが3つ叶うよ~』

「3つも!? 何にしようかなっ!」


 僕らは早速着けてみることにした。僕の願いはなんだろうか……。

 世界平和……? 違う。じゃあみんな平等に……これもなんか違う。そもそもこの世に平等とか公平って概念は存在しないんだよ。んなもん昔の夢見る大間抜けが考え出した愚かしさ極まる戯言たわごとだ。だとしたらなんだろう……。

――思い付いた。僕の願いは1つだ。

 僕は虹色がかったボンフィンを着けた。紫電は赤、粋は青、王児は緑、クラリスは黄、デシューは黒と順当に決まった。

 つーかデシューも着けられんのか。器用にもほどがある。


『さあ諸君! いよいよ決戦だな。解っているだろうが目標は1つだ。生き残ること――』


 僕は知らん間にリーダーヅラをし始めた昴の面具を足蹴あしげにする。

 サングラスが曲がっただのと泣き叫ぶ昴の前で、こほんと咳払いをして喉の調子を整えた。僕らは誰からともなしにスクラムを組み、デシューもクラリスの頭の上にぴょこんと飛び乗る。


「いい? 泣いても笑っても最後! どうせなら最後に思いっ切り笑おう!」

「オレのカンペの威力……見せてやりますよ!」

「王児くん! そこは頭のキレをアピールした方がいいのでは?」

「あたしの完璧なボディラインで厳星げんせいの目を釘付けにしてやるわ!」

「最後デス! レイチェル様をお守りし、なんとしても勝ちましょう!」

「あぁ~、3つ目の願いが決まらないよ~……!」


 ……紫電らしいな。

 僕らはくすっと微笑む。

 行こう! 大聖堂はすぐそこだ!


――行くよ! お兄ちゃん!


 僕らが扉の外れた大聖堂に駆け込むと、厳星が主祭壇しゅさいだんの前に屹立きつりつしていた。

 主神は若干うつむきがちに右手に聖杖せいじょうスターストームを持ち、左手には……なんだろう。黒く小さめの桶を持っている。

 堂内はこの前僕らが暴れたまんま、荒れ果てていた。長椅子は乱れてひっくり返り、燭台は倒れ、ステンドグラスはほとんど割れてしまっている。あの神族自慢の美しい大聖堂が……惨めよのう。

 しかしいざ厳星を目の前にするとやっぱり怖いな。堂内が暗く、厳星が真っ黒にしか見えないのも余計に怖さをそそる。

 足が震えだし、歩みが止まった僕の手を赤い髪の勇者が握りしめた。


「厳星! リーネさんを返せ! そして大人しく降伏しろ!」


 紫電の高い声が堂内で反響し、やまびこのように鳴り響く。

 紫電ってやっぱりカッコいい~!


「リーネか……。返してやろう」


 厳星が黒い桶を放り投げた。地面に落ち、破損した桶からごろごろと何かが飛び出て、転がるのを止めた。これは……腐乱した女性の首。

 あまりに損傷が激しくぼろぼろな首と、首が発する臭いに僕らは嘔吐えずく。

 腐敗して骨がところどころ見えているが、僕はどことなくお顔に見覚えがあった。


「お母……様……?」

「この人英星えいせいの……! ウソでしょ……? ウソよね……?」


 それはリーネお母様の首だった。



なんということ! リーネの首が!


……次回もお楽しみに。

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