表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第15章》 いざ、最終決戦へ――
127/135

人面樹

英星えいせいの大ピンチ! 紫電しでん! クラリス! 助けてーっ!

 僕の手足に伸びる無数の枝。首にまで伸びてきた。

 状況が呑み込めないうちに僕はすっかり縛り上げられてしまう。

 竜槍ラースは……!? そうか、さっき土下座した時に地面に刺したままだった……!

 身体が宙に浮いていく。


「姫様っ!」


 背後からクラリスの声が聞こえ、僕の首近くの枝が両手斧で切られる。

 最近クラリスが活躍中だな……そんな感慨にふけっている場合でもないか。

 首近くの切断された枝がすぐに再生する。こういうのにありがちなアビリティで再生能力も高いらしい。


「ちょっと紫電しでんくん! 姫様が大変ですよ!? 起きて下さい!」

「あべべべべ……にゃに? 亀様が大変?」


 誰が亀様だこの野郎。

 ほっぺをつねられて紫電が起きた。

 首と脇腹を痛め、満身創痍の紫電。……待てよ、ということは。


「死神族の姫の首をへし折ってやるぞ! 見ていろ……! あいててててて……!」


 一瞬首を絞めつける力が強まってここまでかと思ったが、そうでもなかった。

 ジャスティン――人面樹は首を枝で押さえて苦悶の表情を浮かべる。

 更に脇腹も痛そうだ。体をよじり、根を地面に叩きつけて痛がっている。


「こ……これは……?」


 クラリスが戸惑いにも似た声を上げ、首を傾げた。

――やはりこいつは紫電を乗っ取った時の傷が癒えていない。だったら……!


「クラリス! こいつの周りをぐるぐる走って!」

「ええ!? こ、こうですか?」


 戸惑いながらクラリスが人面樹の周りをぐるぐると回り込むように駆け出す。

 人面樹がクラリスを正面に捉えようと体をねじる。

 たちまち痛そうに首と脇腹を押さえてうめきだした。

 紫電とクラリスもこいつが抱える弱点に気付いたらしい。


「クラリスちゃん!」

「ええ! 紫電くん!」

「今日のパンツは何色?」

「……今この人面樹は紫電くんが受けている痛みと同じ痛みで苦しんでいます。私がこいつを引き付けますから紫電くんはそのうちに仕留めて下さい」


 クラリスは早口かつ棒読みでまくし立てた。


「うぅ……ひどいや。教えてくれてもいいのに」


 クラリスがまた走り出した時、クラリスの足元からうねうねとした木の根が飛び出して来た。


「え? きゃああぁああぁあっ!」

「貴様ら……私を散々舐め腐りおって~! 体をねじらずともこれくらいはできるわっ!」


 人面樹はクラリスを根で捕らえて宙に持ち上げた。

 これからどうする? いき王児おうじは仲良く伸びているし……。

 宙に浮いたクラリスを地上から見た紫電は瞳を輝かせた。


「苺柄! しかもよく考えたら英星とクラリスちゃん2人と触手プレイ!」


 これで燃えなきゃ男がすたるとでも言いたげに、紫電は興奮したいのししのように鼻息を荒げる。

 紫電は両手をこめかみに当てて目を閉じる。何か思い出そうとしているらしい。

 目を開いた紫電が、宙にダルボワ文字のつづりを書きながら疾風の如く駆け出した。どうでもいいが動きが怪我人のそれじゃねえ。こいつはホントに首と脇腹を痛めているのか。

 紫電が綴りを書き終えた。


「食らえ人面妖怪樹! これは多分禁呪……! 《羅刹獄炎らせつごくえん》!!」


 荒波の剣から地獄の炎が噴き出し、辺りを朱色に染める。紫電は細長い獄炎の塊を振りかぶり、炎を撒き散らしながら呪われし人面樹をまき割りのように両断した。

 炎に包まれ、白目をいた人面樹が首と脇腹を押さえてゆっくりと倒れていく。人面樹に白目があったということも驚きだな。首と脇腹は最後まで痛かったのか……ってちょっと待て。僕とクラリスは人面樹に捕らえられているんだけど……?

 人面樹は《ドグマブラスト》による陥没事故現場に倒れていこうとしていた。

 ちょっと待てストップストップーッ!

 誰かの着地音が聞こえた。僕を拘束している枝の近くに紫電が立っていた。落ちゆく枝の上で、紫電は僕の周りの枝を切っていく。

 ああ、颯爽とした赤い髪の王子様。

 僕を拘束している枝を全部カットし終えた王子様は、クラリスの救出に向かう。

 ほどなくして2人の救出が終わった。王子様は僕とクラリスを抱えて飛び立つ。直後に人面樹が陥没した大穴に転落し、轟音とともに大地が揺れた。間一髪。王子様は僕とクラリスを抱えて着地し、地面に並べる。


「ありがとう紫電! なんてお礼を言ったらいいか!」

「紫電くんありがとうございます!」


 さあ僕とクラリスに纏わりついている残りの枝もカットしてくれ!

 王子様は下卑げびた笑いを顔に浮かべる。


「英星。クラリスちゃん。ボクと楽しいことしよっか!」

「「へ?」」


 颯爽とした赤い髪の王子様は突如として変態セクハラエロガキに姿を変える。


「英星はとっておきってことでクラリスちゃんから。お洋服脱ぎ脱ぎしまちょうね~♪」

「いやあああああああああぁああぁあああ!!」


 変態セクハラエロガキがクラリスを脱がしにかかって、いつの間にか足元に潜んでいたデシューが落ちていた太い枝の切れ端をくわえた。高らかにジャンプし、ハンマーのようにして紫電の後頭部を打ちのめす。


「がはっ!」


 勇者デシューの遠心力を利用した一撃が変態セクハラエロガキの頭を粉砕した。

 颯爽とした赤い髪の王子様は巨大なたんこぶを作ってその場にぶっ倒れる。因果応報とはまさにこのことだ。

 急転直下、今回のヒーローは見事淫乱いんらん王子を倒した勇者デシューということになった。



紫電の将来は変態どすけべ親父確定か?

ハッキリ言って心配です!


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ