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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
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優しすぎる紫電

英星、まさかの神界追放……?

どうなるこの女神!?

「……え…………せ……い……! い……せい……! えいせい……! 英星えいせい!」


 僕を呼ぶ声がする…………誰……?

 目をうっすらと開ける。どこかで見た赤髪の美少年の顔が、ぼんやりと視界に浮かんできた。

 え……と……、紫電しでん……だっけか。なんでそんなに青い顔しているの……?


「う……」

「英星! よかった! 英星!」


 紫電が抱きついてきたのが解った。いつもこういう時どうしていたんだっけ……? 解らないや……身体に力が入らない。


「英星ぃぃぃぃぃ! 英星がっ! 英星がいきなり倒れるからっ! ボク……っ! ボク――っ!」


 僕……倒れたんだ……なんで……? 何も考えられない……もう……全部どうでもいい……。

 闇夜やみよの中、ひとしきり僕を抱きしめて泣いた後、紫電は僕を抱きかかえて移動し始めた。

 さっきから冷たいものがポツポツと足に当たっているので、どうやら雨が降ってきたらしい。紫電によって木陰に移された後、僕は身体を毛布でくるんでもらった。暖かい。

 紫電の優しさが身に染みる。

 でも、目も口も半開きで、今の僕はさぞかし呆けた顔をしているんだろうな……。


「そうだ! 英星、ホットココア作ったげようか」


 僕が力なく頷くと、紫電は「見てて!」と笑みを浮かべ、500ミリリットルのペットボトルに入った天然水を、やかんに入れる。そしてそれをスチール製の五徳の上に置き、下部にスペルで小型の火の玉を発生させた。

 ……紫電がスペルを習得したのはさっきだったっけ? なかなか様になっている。

 あっという間に湯が沸いた。

 紫電はあらかじめココアパウダーを入れておいたステンレスのカップに湯を注ぎ、


「はい、英星」


 と手渡してくれる。


「あ……りがと……」


 朦朧もうろうとする意識の中、僕は紫電作・ホットココアを口にした。


「ど、どう……?」


 心配そうに顔を覗き込んでくる。


「おいしい……!」

「あぁ、よかった……!」

「ホ……ホントにおいしい……! うっ……ううっ……!」


 おいしすぎて泣けてきた。


「そ、そんなに? あ、ありがとう……」


 紫電はぽっと赤くなって、照れ臭そうに頬をぽりぽりとかいて微笑んだ。

 なんだか紫電のココアを飲んだら急に頭が冴えてきたぞ。

 確か僕らは洞窟で紫電の家に代々伝わる剣をゲットして、その後地上に戻って……!

 戻って…………!!


「おげぇっ!! ゲホッ! げえぇえぇえ!!」


 ステンレスのカップが手から滑り落ちる。紫電のココアも地面に飲み干されてしまった。


「英星! 英星……よしよし、よしよし……」


 紫電が背中をさすってくれた。


「紫電……紫電……! 僕……お父様に……お父様に見捨てられちゃった……! ああ……ああああああああ……!」

「英星……」

「もう……もうお家に帰れないよう……もう…………!」

「私も同じだ。自分だけ被害者面するな」


 ソラの声が聞こえてきた。


「紫電、勝手に移動するな。探したぞ。声ぐらい出してくれ」


 大量の木の枝を抱えながら、少しねたようにソラは言う。


「あ、そういえばお布団になりそうな物探してもらってたんだった。ゴメン」

「え? お布団って、毛布あるのに?」

「うん、毛布はあるんだけど、その1枚しかないんだよね。お布団も薄いのしかなくってさ。春の夜ってこんなに寒いと思わなかったなあ。まして山頂だもんね」


 心優しい紫電のことだから、「毛布使いなよ」って言っても「具合い悪いのは英星なんだから英星が使いなよ」って言って聞いてくれないんだろうなあ……。

 ……ん? あれはあかい流れ星! まあ綺麗! そうだ、お願いしなきゃ! お願い!


「紫電とずっと一緒にいられますように……紫電とずっと一緒にいられますように……紫電とずっと一緒にいられますように……言えたあ!」

「どしたの? 英星もう寝た方が……」

「いやいや、あそこに流れ星がね……」

「本当だ……! って、あれこっちに向かって来てない?」

「へ? ぎゃあああああああ!」


 紅い流れ星が僕らを襲った。


「きゃああああああ!」 「わああああああ!」 「ぎょええええええ!」


 三者三様の悲鳴を上げて吹っ飛ぶ。

 確認すると、僕らがいた木陰のすぐ後ろに大きなクレーターができ、焼けただれていた。


「み、見ろ!」


 ソラが珍しく深刻な声を出す。


「ど、どうしたのソラ!?」

「わ、私が布団代わりに持って来た木の枝が1本残らず吹っ飛んだんだよ!」

「そ、それって……!」


 僕らは息を呑む。


「「「布団が吹っ飛んだ――――――!!」」」


「やかましっ! 3人で言わんでええわ! 俺のカースをかわしやがって!」


 聞いたことがない声が僕らに突っ込みを入れた。


「ええい! なに奴ぅ!」


 突っ込みに対するソラの突っ込みに、その声の主は不敵な笑みを浮かべ答える。


「俺は死神族デューク・フィレゾー……! 神族始末屋よ」



なんかヤバそうな奴が来た!


次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 毎回ワクワクする展開で次回が楽しみです。 ダジャレが現実となるシーンもありましたね! 英星さんの今後はどうなるのでしょう。 [一言] これからも一ファンとして投稿…
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