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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第13章》 広瀬と武久
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碧い髪の赤ん坊

優人ゆうとの首が跳び、怒りに燃えるじゅん

英星えいせいたちはこいつらに勝てるのか?

「……優人ゆうと……!!」


 じゅんが眉を吊り上げ、顔に鬼の形相ぎょうそうを貼り付けた。


「貴様ら……貴様ら許さんっ!!」

「ちょっ、うわっ!?」


 紫電しでんは烈火の如く繰り出される純の槍撃をかろうじて受け止めていく。

 純が何度目かに槍を振るった遠心力で串刺しにされていた王児おうじがすぽんと飛んでいった。

 早く王児に再生の光の波動を送らなきゃ――


「貴様ら全員串刺しにして焼いて食う!!」

「わああああああ! こっちにも来た――っ!」


 純の槍から逃れようとした僕を何者かが大股で飛び越える。


「姫様! 私の後ろに隠れて下さい!」

「クラリス! あんた……あんた……!」


 クラリスが押されていた紫電の助太刀に入り、純との力が拮抗した。


「死神の底力! 見せてあげます!」

「クラリス! あんた今日のパンツは水玉なんだ!」

「……いやああああああ!」


 両手斧を振りかざしたクラリスが真っ赤になって僕に襲いかかる。


「ちょっとクラリスちゃん!」


 紫電の言葉で我に返ったクラリスは再び純との交戦に戻っていった。

 紫電は純の槍を受け止めながら、


「クラリスちゃん後でちゃんと見せてね! 約束だよ?」

「絶対嫌です!」


 この2人の会話飽きないなあ。


「パパ……パパぁ……!」


 いきはさめざめと泣いていた。

 いつの間にかって優人の首のもとへ移動したらしい。

 粋を助けようとした王児の身体は遥か彼方のがれきの向こうで時おりぴくんぴくんと震えていて。

――こいつ!!


武久たけひさ

英星えいせい! パパを助けて! なんでもするから! なんでもするから!!」

「無理。もう死んでる」


 僕は武久を突き放した。


「そんな……!」


 武久はなおも物言わぬ優人の首に涙を零す。


「武久。あんたいい加減にしなさいよ」

「え? 今あたしのことなんて……?」

武久・・


 武久の顔が怒りに歪んだ。


「なんで……なんで……! なんでその名前で呼ぶのぉ!! えっ、やだちょっと……!」


 僕は竜槍ラースを足元に突き刺し、目の前の身体ばかり大きい赤ん坊を自分の腰に抱えた。

 ばしりばしりと尻を引っぱたく。


「きゃっ!? いやっ! やだっ!」

「おら武久! あんたにはそんな大きな胸もこんな大きな尻も似合わないよ! だってあんたはまだ赤ん坊なんだから! おむつ替えたげようか? ぇえ?」

「ひゃんっ! やぁっ! やんっ!」

「あんたを助けようとした王児は生死の境をさ迷ってんでしょうが! 助けられてばっかで自分じゃ何もできない赤ん坊! 頭空っぽの赤ん坊!!」

「ぅぐっ……! ひぐっ! ぅぅうううう……!」


 僕は武久を捨てるように地面に落とした。

 あおい髪の赤ん坊はうつ伏せのまま嗚咽おえつする。


「英……星……」

「レイチェル・キルンベルガーと呼べ!!」

「ひっ!?」


 武久が驚きのあまりうつ伏せから仰向けにひっくり返った。


「僕だって川上英星でいたかった・・・・・・・・・・!!」


 武久は瞠目どうもくして僕の頬を伝うものを見ていた。


「英……レイチェル……キルンベルガー……」


 武久は涙をぬぐい、焼けただれた足裏でアスファルトの上に立ち上がる。

 そして一陣の風となって駆け出した。


「王児! 王児! ごめんなさい王児!!」

「姫様! こっちを手伝って下さい!」


 クラリスが救援を乞う。よっしゃ任せろ!

 足元に刺した竜槍ラースを抜き放ち、紫電とクラリスのもとへと駆ける。

 背後から純に袈裟斬けさぎりの一閃を刻みこんだ。


「ぐうっ!」


 動きが止まった純の腹に、正面から紫電とクラリスの剣と斧が突き立つ。


「ぐお……ぅ……!」


 ゆっくりと。純は仰向けに倒れた。


「勝っ……た……! 英星とどめはどうする……?」


 紫電が純の喉笛に荒波あらなみつるぎをあてがう。


「とどめは刺さないで」

「こっちデスお母さん!」


 デシューが意識を取り戻した粋のお母さんを誘導してきた。

 ずっと粋のお母さんの頭の上で跳ねていたのは見えていたけど、デシューはいつも縁の下の力持ち的な働きをしてくれる。

 粋はというと、痛みに顔を歪めながらこっちに向かって懸命に走っていた。その胸には王児を抱えている。



―――



「王児。よく頑張ったね」


 息も絶え絶えの王児に再生の光の波動が送られ、王児は徐々に意識を取り戻す。


「粋! 粋!」


 粋のお母さんは足裏を真っ赤に染めた愛娘の心配をしていた。粋もホント頑張ったな。

 王児を治療し、粋の治療も終わった後。僕らは倒れている純を包囲した。

 うっすらと目を開け、こっちを見てくる。


「勝負あったね」


 紫電はずっと純の喉笛に剣をあてがっている。


「ママ……私の……1人目の……」

「……粋」


 親子はしばし見つめ合う。

 どうしようかなあ。こいつ回復させた方がいいのかなあ。

 悩んでいると、純の身体が黒い波動を発し始める。


「ふふふふふ……ははははははっ!」


 純の身体が空に向かって上昇していく。


「ひえっ? ナニコレ!?」

「私は……純にあらず。私がこうして2人を操り人形にしていることにも気づかぬ愚か者どもよ」


 この声は聞いたことがあった。あれは神界の大聖堂……。確か厳星びちくそに犯されかけていた時。

 ……その時居合わせたスパイ神族!


「あんた……ジャスティン・デイビッドソン!」

「知ってるの英星?」


 僕は粋の疑問に答えず、閃光のカースを発してジャスティンを攻撃しようとするが障壁を張られて回避される。


「この者の身体を自爆させれば……この街くらいは吹き飛ばせられるだろう……」


 地鳴りがする。

 ……これけっこうヤバくね?



ぎゃああああ!

ここにきて自爆なんて!


次回もお楽しみに!

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