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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第12章》 旧友との再会
114/135

神族は○○○

英星えいせいが思い付いた作戦というのが少し不安ではあるけど……?

 1週間後、僕らの姿は人間界の雲の上にあった。

 紫電しでんが子供たち30人の入った巨大な直方体のケージを、身体に縛ったロープに吊り下げて空を飛んでいる。


「おらおら紫電! 飛べ! 飛び散らかせ!」

「ちょっと英星えいせい! 背中の上で跳ねないで!」

「紫電くん頑張るデス!」


 僕らから見て10メートルほど下方かほうのケージの中からは、大空を渡る子供たちの歓声が聞こえてくる。

 ただでさえ重たいケージ。その中に子供たち30人を収容して運ぶ紫電はさながら輸送機だ。

 僕は向かい風を全身で受けながら、持って来たポテチをつまむ。

 この輸送計画を思い付いたのは僕だ。

 死神城にあった怪鳥を飼うためのこのケージに、ちょっと改造を加えて子供たちを運ぶのにリサイクル。具体的には縦網の間隔を狭めて子供たちが移動中に落っこちないようにした。

 我ながらめっちゃ冴えている!

 いき王児おうじはジャンケンで負けたので死神城でお留守番だ。新婚さんは2人きりがいいだろうし。


「あとはこれにビールがあれば最高なんですけどねえ」


 髪をき上げながら、またクラリスが何歳か解らなくなることを言う。

 こいつホントにいくつだ。


「でもワープで行きたかったよ。なんでワープできないんだろう」


 紫電が身体を捻って視線を送ってきた。


「そんなの知らないよー。神族が神の宝玉を奪われにくくするためにでっかい転移を妨害する装置でも作動させたんじゃないの?」


 そう言ってポテチを1枚かじった時だった。

 遠くの空に黒い影がいくつも見えたのは。


「あれなに?」

「え? あれって?」


 紫電はまだ影を視認できていないようだ。

 影は刻一刻と増え続ける。

 これは――うん、間違いない。神族だ。


「神族に見つかったんじゃないですか!?」


 クラリスも最悪の可能性を口にする。

 どうしてバレたんだ。

 神族は拡声器で、


『そこの飛行物体! 停まりなさい!!』


 と告げてきた。お前らはおまわりか。


「後ろからもたくさん来てますよ姫様!」

「上下左右からもデス!」


 やばいー! 包囲されるぅ!

 ケージの中の子供たちもただ事ならぬ雰囲気を察したのだろう、泣き声が聞こえ始めた。


「紫電! スピード上げて!」

「――どこまでできるかどうか解らないけど……振り落とされないでね!」


 紫電がスピードを上げる。

 クラリスが「きゃっ!」と悲鳴を上げ、大きく揺れたケージからも子供たちの喚き声が聞こえてきた。

 ダメだ、振り切れない!

 追いついた神族は僕らを無視してケージを攻撃し始める。

――ケージを? 神族の狙いは子供たち!?

 咄嗟とっさに。

 僕はクラリスを紫電の背中から突き落とした。


「ぎいやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 馬鹿でっかく叫んだクラリスはなんとか直方体のケージの端っこに落下していった。

 僕もすぐに後を追う。

 紫電の身体に縛られているロープを伝ってケージの上に下り立った。


「クラリスーぅ、大丈夫ー!?」

「自分で突き落としておいて何言ってるんですか――っ!!」


 鬼の如きクラリスの剣幕に僕は3歩ほど後ずさり。


「あのさ、素早く飛び移らなきゃいけなかったからしょうがない」

「ケージに下りてって口で言って下さい!!」


 神族はなおもケージの縦網をスペルや槍で攻撃する。

 そんなことされたら縦網が傷む! こいつらは何が狙いなんだ?


「へへっ、わりいな! 広瀬ひろせ様のご命令でね!」


 周りを飛び交う神族の1人が薄笑いを浮かべて吐き捨てた。

――広瀬?

 群がる神族どもをクラリスと斬り払いながら、そのどこかで聞いた名前を必死に思い出そうとするが……。

 僕の記憶力じゃ無理だな。諦めよ。


「おい、見ろよあれ。あそこ狙えばいいんじゃね?」


 1人の神族が紫電の身体とケージを結ぶ1本の太いロープを槍で差した。

 背筋が凍りついた。

 こいつら正気か……正気なのか!?


「いけない姫様!」


 クラリスが僕の首根っこをつかんで駆けだした。

 僕を肩に担いで素早くロープをよじ登る。

 神族たちは僕らがよじ登っていたロープを次々と切りつけていき、太かったロープはどんどんとほころんで細くなっていく。


「待ってクラリス! このままじゃ子供たちが……!」

「今は姫様の無事が最優先事項です!」


――しかし間に合わなかった。

 無情にも退避していた所から上部分のロープが引きちぎれ、僕とクラリス、そして30人の子供たちが中に入ったケージは雲の上の高度から落下を開始する。


「「ぎゃああああああああああっ!!」」


 これは死んだ! 今回ばかりは間違いない!!

 412歳の若さで死にたくないよー!!


「紫電くん急ぐデス!」


 デシューの声。

 僕が恐る恐る目を開くと赤い髪の勇者を駆ったエースパイロット・デシュー大佐|(階級はテキトー)がこちらに急降下して来ていて――

 デシュー大佐は見事僕とクラリスを宙で拾う。


「ありがとうございます大佐~!!」

「大佐?」

「あ、いやこっちの話。ってか子供たちは!?」

「子供たちは……」


 デシューは静かに目をつむる。

 子供たちの入ったケージは既に小さくなっていた。


「ひゃっほう! やったぜぇ!」


 近くを飛んでいた羽根つき神族が歓声を上げる。

 僕はその羽根つき神族ぎろりと見据えた。


「こんな……こんなむごいことして! あんたら絶対に許さない!!」

「惨いこと? 惨いことしたのはそっちの方だろ?」

「なんですって!?」


 羽根つき神族は白い歯を見せて、


「今に解るさ。おっと、死神族の援軍が来やがったな」


 それだけ言って去って行った。

 僕らの後方からはおびただしい数の死神族が迫って来ていた。



―――



「偵察隊の情報によると、転移を妨害する装置があの一帯に即席で造られたようです! それで空を飛ぶことしかできなかったものとみられますね!」


 死神城の謁見の間でコノボス・ツエーが怒声を吐く。

 こんなことをするなんて。神族はうんこだ。


「……レイチェルよ。肩を落としているところすまぬが、敵兵は命令したのは『広瀬』と言っておったのか」

「……うん……」

「広瀬……か。そのような名の神族は聞かぬ。新たな神族のようだな」


 その時、あおい髪の少女がしれっと。


「広瀬ってあたしの名前と一緒じゃん」



英星「神族はうんこ! ここ次のテストに出るから覚えとくように!」

紫電「はーい! 神族はうんこ!」

アクセル・キルンベルガー「お食事中の方、大変申し訳ございません」


次回もお楽しみに!

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