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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第12章》 旧友との再会
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禁呪

今までとは違うダルボワ文字!

これはスゴそう!!

「――英星えいせいお姉さん!! なんか今までとは違うダルボワ文字が書いてあります!!」


 僕らは王児おうじの握る金色の羽根を一斉に覗き見る。

 そこには確かに今までとは複雑さの格が違うダルボワ文字が書いてあった。

 どんな形かというと、書き順の多い漢字を印鑑の印相体いんそうたいにしたような……そんな感じ。これは書くのが大変そう。


「これって強力なスペルのダルボワ文字なんじゃない?」


 いきが興味深げに微笑む。

 僕はもうスペルなんて使わんけどな。何が悲しくてクソばっちい神族の術を使わにゃならんのだ。


「オ、オレ……書いてみます! このダルボワ文字!」


 王児が宙にダルボワ文字のつづりを刻む。

 こいつがダルボワ文字を書くのは初めてだった気が。……レアだなあ。


「王児ー。賢者の書で発動できないの?」


 紫電しでんが横着なことをいた。王児もそれができりゃ苦労はしねえだろ。ホントこの赤髪はしょうがない奴だ。

 ダルボワ文字が書けた。緑色に輝く。


「どうせ大したことないっしょ?」


 コノボス・ツエーが鼻くそをほじりながら巨大なフラグを立てた瞬間。

 王児の手から紫紺しこんの突風が巻き起こった。


「どえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 荒れ狂う暴風は王児の正面方向の石畳をべりべりとぎ取り、木々を根こそぎ抜き去り……緑色の髪を持つ少年の眼前はさながら地獄絵図となった。

 コノボス・ツエー以外誰もいなくてよかったわ。

 クラリスがぽかんと口を開けて、


「すごい! コノボス・ツエーさん星になっちゃいました……!」

「《アメジストゲイル》……!」


 デシューが声を漏らす。


「禁呪デス。『デスチューブ』で動画を観たことがありますね。かつて神族との大戦ではこの禁呪で死神族側に甚大な被害が出たとか」


 王児は両手を前に突き出し、口を半開きにしたまま啞然としていた。


「やったじゃん王児!」


 僕は王児の肩を叩いた。

 嫉妬で内心は穏やかじゃないけど。

 なんでこいつにこんな強い術がああああああああああああっ!!

 王児はそんな僕をスルーしてあおい髪の少女の手を取り、真っすぐに見据えた。


「粋お姉さん……オレ……この《アメジストゲイル》でお姉さんを護るよ……!」

「え、あ、あぁ。うん……」


 お前らもう結婚しちゃえよっ!! なんだよバーカ!! いいもん! 僕には紫電がいるもん!!



―――



 僕らは謁見の間にいた。

 パパことアクセル・キルンベルガーが悠然と玉座に掛けている。


「ねえパパ」

「どうした」


 僕はジト目でパパを見て、


「なんで援護に来てくれなかったの?」


 パパは肩をすくめた。


「行きたかったのはやまやまだったのだがな。それではお前たちが成長せんだろう」

「そんなこと言うと思った! パパが来てくれたら絶対もっと楽に勝てたのに……! この無能クソデカ死神!!」


 僕はパパの足にぽかぽかと鉄拳をお見舞いする。

 クラリスとデシューが慌てて僕を制止した。

 そうだった。仮にも死神族の王だったっけ。


「実は別件もあってな」


 パパは重々しい声音で僕らに告げる。


「ゴーストデススライムを覚えているか」

「ゴーストデススライムぅ? 確かボクにとり憑いてたデススライムだったよね?」


 紫電の返答にパパはこくりとうなずく。


「そうだ。そのゴーストデススライムが人間界からさらって来た30人の子供たち。その子供たちを人間界に解放していないじゃないか、と厳星げんせいの奴が声だけで詰め寄ってきてな」


 あー、そういやそんなこともあったな。

 糞神げんせいの野郎め、痛いところを突きやがって。

 パパは頭をいた。


「すべては死神族の仕業、人間たちにそうばらすぞ……と啖呵たんかを切ってきたのだ」

「うーん、パパは別に悪くないじゃん」

「そうはいかん。これは死神族側の失態だ。イメージの悪化も懸念される」


 お前は芸能人か。

 その突っ込みを寸前で呑み込んだ僕の頭に天啓が閃いた。


「――パパ。僕が娘でホントによかったねえ」

「どうしたの英星。なんか思い付いた?」


 紫電たちにくるりと振り返る。


「思い付いた♪ 思い付いちゃった♪」

「さすが英星お姉さんです! こういう時の英星お姉さんは頼りになります!」

「あんたたち聞いて驚きなさいよ……? 覆水盆に返らず。ならば返せばいいのよ」

「それは一体?」


 デシューが目を点にして訊いてきた。

 ふっ。デシューよ。お前もその程度か。パーティいちの頭脳派の座はこの英星――レイチェル・キルンベルガーが奪うこととしよう!

 僕はきりっと仲間を視線で切り裂いて言った。


「さらっちまった奴らを帰せばいい!!」


 ……密室のはずの謁見の間に木枯らしが吹いた。

 錆びついたようにぎこちない動きで紫電が手を挙げる。僕は自信満々に咳払い。


「はい、荒波あらなみ紫電くん。時間が押してるから一人一問までとさせて頂きます」

「……あの。それって人間界に帰すってだけ?」

「ビンゴ――っ!!」


 仲間たちは全員白けきった。

 ハッハッハ。そんなに度肝を抜かれたか。


「そんなアホな発想ってないわ!」 「がっかりしました!!」 「姫様お気を確かに!」 「その愚かさは真似できないデス!」 「英星らしいや……」


 訳も解らず一斉に非難され、リアル大炎上した僕にパパが呆れながら、


「う~む、しかし実際それしか方法がないのだよ。今回はレイチェルの案に賭けてみよう!」



ちなみにコノボス・ツエーは3日後に帰ってきました。

おかえり!!


次回もお楽しみに!

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