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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第12章》 旧友との再会
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死霊使い

平和な死神界が突如として何者かに襲われた!

 首が消え、残った豚の死神の親子の体は血を噴水のように胴体から噴き出し、地面に崩れ落ちた。

 血が胴体からどくどくと流れ落ちる。

 襲撃者はその胴体を見て冷たい笑みを浮かべた。


「うん。やっぱりいいねえ。死神族を手にかける快感は最高だ!」

紫電しでん

「うん。行くよ英星えいせい……いや、レイチェル!」


 僕は紫電につかまり、襲撃者の背後にワープする。

 襲撃者は気付いていないようだな。

――今度はお前の番だ。

 そう思いつつ僕は襲撃者の首めがけ竜槍ラースを一薙ひとなぎ。

 しかし漆黒のコートを身にまとった襲撃者は飛びあがり、僕の不意打ちを回避した。


「えっ!? どこ!?」

「ぐっ!」


 背後から金属音がして振り返れば、紫電が襲撃者の仕込み杖による一撃を僕のうなじのぎりぎり手前で受けていた。

 ……あっぶねえ!

 襲撃者は飛びのき、その漆黒のコートに縫い付けられたフードの中から凍るような声を発する。


「惜しかったなあ……もう少しでお前の首もねられたのになあ」

「あ、あんた何者よ!?」


 蒼白そうはくとなったいきが震えながらく。豚の死神の親子の血を頭から浴び、粋自身が大怪我を負ったようになっている。

 襲撃者はフードから口だけを見せてにやりと笑った。


「俺は死霊使い、ポール・ウェーバー。三度の飯より死体が好きな神族よ。お前ら全員ホルマリン漬けにしてやんぜ!」

「姫様!? 一体何の騒ぎです――? きゃああああ!?」


 城から飛び出して来たクラリスが豚の死神の親子のむくろを見て悲鳴を上げる。

 穏やかだった城下町は突如として血生臭い戦場へと変貌し、辺りをあっという間に野次馬たちが取り囲んだ。


「こんなこともできるぞ? そら!」


 襲撃者ポール・ウェーバーが杖の水晶にダルボワ文字を浮かび上がらせた。


「粋! 後ろ!」


 紫電が何者かの攻撃を荒波あらなみつるぎで受ける。

 鈍い音がした方向を見れば、首のない豚のゾンビが粋を襲おうと殴りかかってきていた。

 いつの間にこんな奴を召喚――

 そこまで考えてはたと気付く。これは……さっきの――!


「はっ! 気付いたようだな。そいつはさっき俺が処分してやった豚だ!」

「くっ……あんたなんて外道なの! 僕が許さない!」

「死神族が神族に外道って言うかねえ? 分際をわきまえろ! そら、豚はもう1頭いるぞ!」


 豚の死神の子供が跳躍し、頭上から僕らに襲いかかる。

 こんなのカースかスペルを使えば簡単なんだけど……!

 相手は同じ死神族。同族なんて攻撃できない!

 きっとそれがこのポールの狙いなんだろう。本物の外道クズだ。

 僕らはその場から素早く散らばると親子の攻撃をなんとか回避し、敵を正面に見据える。


「姫様!」


 クラリスが僕らの盾になるように躍り出た。


王児おうじは? デシューは何してるのよ!?」


 粋に訊くと、


「知らないわよ! さっき2人して城門から出てったきり――」


 2人して城門から出てったあ?

 こんな時に何しに行ったんだ?


「すみません通るデス!」


 ポールの側の野次馬をき分けて、小さな2つの影がこちらに歩いてきた。


「まったく。王児くんは思考が残念すぎる上に運もないんデスね! 入れ食いになった瞬間に餌が切れるなんて」

「……ぅぅぅうううう!」


 王児は必死に泣くのを堪えているように見えるけど……あれなんだろ。

 デシューは頭の上に、王児は手に、それぞれバケツや釣り具を持っている。


「お兄さん、お勤めご苦労!」


 デシューがしれっとポールに声掛けし、ポールはそれに、おう……と応じる。

 デシューは僕らの姿を確認すると、手(?)をビッと挙げて、


「レイチェル様! お疲れ様デス。デシューたちは今、手が生臭いのでちょっと洗って来ますね!」

「お前どこで何してたんだよ」

「王児くんが気分転換に何かしたい、って言うからデシューたちは釣りに行きました! デシューは入れ食いだったんデス! すごいでしょ?」


 デシューがバケツを斜めにすると、そこには人面魚やら牙の生え揃った人食い魚やらがうようよと泳いでいた。怖えって。


「聞いて下さい! 王児くんはデシューが気に入らないらしく、デシューよりも多く釣ってやる~! なんて言い出して。序盤で餌を大量に投入したところ、案の定餌切れデス。結果的にデシューはその後の入れ食いの到来で大逆転デス!」


 僕は思った。

 ……死ぬほどどうでもいい。

 デシューはくるりと体を反転させ、


「ところでこれは一体何の映画撮影デスか?」

「撮影じゃねえよ!! モノホンの本番だよ!!」


 あごが外れんばかりに口を開き、デシューと王児を怒鳴りつける。

 王児は釣り具を置いて腕組みをした。


「英星お姉さん。怒るとシワが増えますよ?」


 こいつの腹立たしいキャラは健在なんだな。

 我慢ならなくなったポールが、杖先を城下の石畳に叩きつけた。

 石畳に放射状の亀裂が走る。


「お前らいい加減にしやがれ! このポール・ウェーバー様をからかいやがって!! 我が親愛なる下僕よ! その姿を現せ!」


 杖の水晶が光り、闇の柱がポールの前に立ち昇り。

 1体の子供のゾンビが闇の柱から現れた。


「行け! 洸汰こうたよ! 奴らを食い尽くせ!!」


 王児がガシャン! と釣り具を落とし、瞠目どうもくした。

 ……どうしたんだろう。


「王児くん? どうしましたか?」


 クラリスが語りかけるも、小生意気な少年は上の空で何も聞こえていないようだった。唇が震えている。


「こ、洸汰って……洸汰って……まさか……!?」



ひょっとして王児は敵のゾンビと面識があるのか!?


……次回もお楽しみに!

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