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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第11章》 不屈
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新しい仲間たち

謁見の間での話は続く――

「――して、レイチェルよ。お前はこれからどうするのだ?」

「知らない」


 あっけらかんとして答えると、パパは砂埃を舞い上げて玉座からずり落ちた。


「姫。もう少し計画性という言葉を知って下さい」


 デュークが額に手を当てて嘆く。

 他の死神たちも残らずうなだれていた。

 なんだろう。僕何か問題発言しちゃった?


「いいよ英星えいせい。ボクたちは君を見捨てないよ」


 紫電しでんもどこか呆れたような顔をしているけど気のせいだよね!

 ありがとう紫電! 僕も紫電を見捨てないよ!


「英星お姉さんはとことんアホですね。こういう時こそ書物の出番です」


 王児おうじが賢者の書を開き、ページを繰る。

 こいつ生意気すぎるんだが。


「王児くんは口が悪すぎるデス! 少しはデシューを見習うデス!」


 言いながらデシューは王児の頭の上に乗っかる。

 ああ、ぷるぷるとした体がかわいいなあ。


「…………」


 ……王児? 何を黙り込んで……?

 僕が賢者の書を覗き込むと、


「あ、あの英星お姉さん! 少しお話しませんか!?」

「え? あ、ちょっと! 手ぇ引っ張らないで!」

「まさか王児! 英星に告白!? ずるい! 英星の身体はあたしの物よ!」


 いきの言葉に紫電もうろたえる。


「ええ!? ボクという男がいながら! 待ってよ英星ーっ!」

「死神さんたち! ちょっとこいつらを足止めしといて下さい!」


 王児は僕の手をつかんだまま死神兵たちの群れに突っ込み、パパが座るクソでかい玉座の裏に回り込んだ。


「英星! ボクを見捨てないで!」


 紫電の涙声を遠くに聞きつつ、王児は声を潜めて。


「今神界への門は閉じられています。それを開くには『神の宝玉』を3つ集めなきゃいけないらしいんですが……」

「それがどうしたのよ」

「その神の宝玉がある場所に、紫電お兄さんの家と粋お姉さんの家がリストアップされていました」


 王児は少しうつむき、上目遣いで訊いてきた。


「聞けばお二人ともかなり複雑な家庭に育ったらしいじゃないですか。いきなり訪ねて大丈夫かと」

「王児」

「なんでしょう」


 しばらく僕は間をおいて。


「お前の上目遣いってかわいいなあ。もっと近くで見せて!」

「や、やめろこの変態!」


 よだれを垂らして王児に接近するも、華奢きゃしゃな手で頬をむぎゅうと押し返された。

 ちぇっ。せっかく襲おうと思ったのに。

 王児は呼吸を整えると、


「い、いずれにせよ徐々に伝えた方がいいですね……!」


 僕らは玉座の裏から出ると、紫電と粋が死神たちにもみくちゃにされていた。まあ僕も死神なんだけどね。


「え、英星!」


 紫電が泣いている。

 泣くことかよ。


「もう子作り終わったの?」


 粋。お前はホントに小学生か。


「ちょっと作戦会議をしてただけです! 子作りなんていう事実はありません!」

「なんだ。見せ合い・・・・で終わったのか。よかったよかった!」


 紫電のセリフもえらく大人びて聞こえることがあるよな。

 頭の上の方から重々しいパパの声が響く。


「我々は近く厳星げんせいを討つ。レイチェルがこれほどの思いをし、我が死神族の兵士たちにも多数の犠牲者が出た。全面戦争もやむを得まい」

「そうだよね……」


 パパはその大きな頭でうなずいた。


「そこでだ。クラリスをお前たちに同行させようと思う。クラリスは強い。それはお前たちも解っているだろう」


 クラリスがその身体をぴくりと反応させる。


「キルンベルガー様……よろしいのですか?」

「えー? クラリスちゃん来てくれるんだ!?」


 紫電が歓喜の声を上げた。お前の目当てはどうせこいつのパンツだろうがよ。


「クラリスはお前たちと同年代でもある。妙案だと思うが?」

「英星! ボクはクラリスちゃんと一緒に冒険したいな!」


 紫電が鼻の下を長くして言うので、僕はコブラツイストをかけながら、


「……解った。クラリス! 一緒に行こ! でも紫電と王児には気を付けてね」


 クラリスは背筋をまっすぐに伸ばした。


「はい! このクラリス・オールスバーグ、身命を賭して姫様をお守り致します!」

「クラリス! そんな気を遣わないでいいからさ。これからよろしくね!」

「あのー……」


 誰の声? 一同が王児の頭上にいる、ぷるぷるの物体に目を向ける。


「デシューも一緒に行くデス! ね!? いいでしょ!?」


 ええー!? デシューも!?


「でも……デシューってすごく弱そうだけど?」


 粋が僕の懸念を代弁する。

 ぴょんっと王児の頭上から飛び降りたデシューは、


「そんなことないデス! デシューの知恵はすごいんデス!」

「うーん……」


 コブラツイストをかけながら考える。

 そりゃあ危険じゃなければ連れて行ってやりたいけど……。


「……お、お願いデス! 人間界を見てみたいんデス!!」


 デシューが涙目になって訴えてくる。

 どうしようか……。


「紫電どうしよう?」

「は、早くコブラツイストを解いてよ……!!」


 すると王児が得意げに胸を張って、


「デシュー。君ははっきり言って役に立たないです。だってオレの賢者の書があればどんな知識でも手に入るから!」

「はん! 賢者の書がなんデス! それって要はなんでも調べられるだけでしょ?」

「そうですけど?」

「じゃあ王児くんは能無しの禿茶瓶はげちゃびんデス! 先日の戦いで転移を妨害する装置の場所も調べられたはずデスが、それをしなかった。何故か?」


 王児が、え? と喉だけで声を出した。

 デシューは不敵に笑い、蔑みの視線を王児に送る。


「それは検索しないと出てこない知識だからデス! そんなの本物の知識みたいに言われてもねえ。つまり王児くんの知識は検索する時間がある時はまだいいとしてそんな時間がない時はまるで役に立たないのデス! 解ったか禿茶瓶」

「オ、オレ……オレ禿茶瓶じゃないもん!」


 デシューは、ふう~、と大きな溜息ためいきをつく。


「いいえ。君はまごうことなき禿茶瓶デス! このお漏らし魔め」

「いや、今それ関係ないじゃな――」

「あれだけお漏らしするのは赤ん坊くらいデス! 赤ちゃんはみんな禿茶瓶デスから。ね? 王児ちゃん・・・・・?」


 王児の頭頂部と両耳から恥ずかしさや憤怒ふんぬ、悔しさといった感情がすべて混ざった蒸気が、ぼん! と出た。


「う……うぅ……ぅえええええええええええん!!」


 完全に論破された王児はそこいらの死神兵を投げ飛ばし始めた。


「デシューあなたすごいわ! あの小生意気な王児を論破するなんて!」


 粋がデシューを手に取り、尊敬と感謝の意を視線で送る。


「英星? いいんじゃない?」


 コブラツイストをかけられながらの紫電の問いに僕は大きく頷いた。


「うん! クラリスは頼りになるし、デシューは面白いから二人まとめて採用! 二人ともよろしくね!」



意外な敵に論破されてしまった王児!

デシューは王児のライバルになれるのか!?


次回もお楽しみに!

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