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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第10章》 そして今度は神界へ!?
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転移を妨害する装置

荒ぶるレイチェル!

 どうやらこの部屋にはリーネお母様しかいなかったようだ。


「くそっ! さっきの神族、偽情報を吐きやがったな! 結局転移を妨害する装置なんてないじゃんか!」

「でもレイチェルのリーネお母さんが見つかってよかったね!」

「ま、まあそれは……ね」


 紫電しでんはいつも僕をフォローしてくれる。


「英星、あなたもう自分の正体に気付いたのね」

「は、はい! お母様、僕はレイチェル・キルンベルガーです」

「頼もしいわね! もうレイチェルって呼んだ方がいいかしら?」

「い、いえいえ。そこはもうどちらでも……ただ、ただ……お兄ちゃんが……雷星らいせいお兄ちゃんが……僕のせいで!」


 僕は涙を堪えきれなくなった。

 お母様は黙って僕の頭を撫で、抱きしめる。


「「ぴぎゃぎゃ!」」


 ドアの近くに立たせていたデススライム隊の2匹が、僕らに何かを知らせる。

 槍の穂先がドカドカと何本もドアを貫通して突き刺さり。

 そしてドアが木っ端微塵に飛び散ったかと思うと、神族どもが雪崩を打って部屋に飛び込んで来た。

 くっ、悲しんでいる暇もないのか!

 僕は紫電の陰に隠れて、腕だけ出しつつ必死に神族どもと斬り結ぶ。


「ちょっとレイチェル! 迷惑!」

「ごめん」


 僕に突っ込んだ紫電の顔が少し青く感じられた。

 ん? どっか具合悪いの?


「みんな私につかまって! 転移を妨害する装置はこの上の階よ!」


 リーネお母様の方に視線を移すとお母様がダルボワ文字でつづりを刻んでいた。

 必死で手を伸ばし、みんなでお母様の言うとおり摑まる。

 神族と応戦していたいき王児おうじ、デススライム隊の2匹も僕らにくっついて、


「《ロケットジャンプ》!」


 リーネお母様の足元に白く光り輝くエネルギーが集まり、身体が弾み――僕らは天井を突き破った。

 床に開いた穴より少し前に着地すると、分厚い障壁に護られた石碑が僕らの視界に飛び込む。


「いかにもって感じですね!」

「じゃああたしの《カオスレーザー》で!」


 粋の首に掛けられた形見の指輪が光り、《カオスレーザー》が放たれた。

 しかし障壁に触れるや、暗黒光線は蒸発するように消えていく。

 こういう障壁ってなかなか割れないんだよな。お決まりのパターンだ。

 僕は竜槍ラースを構えた。


「このっ! 割れなさい!!」


 槍の穂先で障壁を突くも、ぶよんとしたゴムのような手応えしか返ってこない。

 部屋の入口のドアが開いた。


「レイチェル・キルンベルガー! 覚悟!!」

「ぎゃああああ! 追手が!」


 おまけに紫電が青い顔をして片膝をつく。

 どうした紫電!? 消費期限切れの物でも食ったか!?

 うつろな目をしている。


「紫電? あたしのあまりのかわいさに恋に落ちたとか!?」

「違うよ! きっと僕の知的さに胸が苦しくなって!」

「あんたに知的さなんて欠片かけらもないじゃない」

「んだとてめえ! 死ねい!」


 ラースの突きが粋の首をかすめた。

 粋は再び股から黄色い液体を漏らしてへたり込む。

 まだ膀胱ぼうこうにおしっこ残っていたのか。

――お兄ちゃんを亡くしてから感情のコントロールが利かない。

 どうしちゃったのかな……僕。

 王児とお母様たちは神族どもの相手をしてくれていた。


「苦しい……苦しいよう……」


 紫電がうわ言のように繰り返す。

 僕は何気なく紫電の左肩に刺さっている矢を見た。まさか――!

 紫電の法衣を無理矢理に脱がし、左肩を露出させる。

 矢が刺さっている上部僧帽筋じょうぶそうぼうきんが紫色に腫れていた。

――毒矢!

 慌てて毒矢を引っこ抜いて打ち捨てると、コウモリの紋章を輝かせて治療を開始する。


 ……しかし紫電の戦闘不能は大きかった。

 神族どもはじわじわと詰め寄り、もはや目と鼻の先。

 更に後ろの僕らがこの部屋に上ってきた穴からも神族が。


「英星。投降しましょう。もう……終わりみたい」

「やだやだ戦う! こんなゴキブリみたいな奴らに絶対投降しないもん!」

我儘わがままね……」


 お母様を困らせることで抱く一抹の罪悪感。

 お母様、ごめんね。


「ぴぎゃ――っ!」


 前線で必死に神族をかじり殺していたデスたろうの甲高い悲鳴。

 デスたろ――う!!

 残るデススライム隊|(もはや隊ではないが)は鉢巻を巻いたデシューのみ。

 くぅーっ! 志半ばで倒れた4匹のためにも頑張れデシュー!


「うわぁああああぁ!」


 ん? この女の子みたいな悲鳴はどのデススライムだったかな?

 デシューとはちょっと感じが違うしなあ。

――この声は王児だ。


「た、助けて! 助けてぇぇぇぇぇ!」


 神族が王児の片足を持ち、逆さにぶら下げている。

 でも僕は紫電の治療で手が離せなくて……!

 王児は瞬く間に生け捕りにされた。


「死神族の一味よ! これまでだ! このガキの命が惜しければおとなしく投降しろ!」


 外道なる神族はそう脅すと、王児の首に白刃を突き付ける。


「ひいぃっ!」


 何度目だろうか。王児の股ぐらの濡れている面積が広がった。

 こいつは何度ちびれば気が済むんだ。


「えいせ……レイチェル。……ごめん」


 粋が両手を上げた。

 お母様も両手を上げる。


「くそっ! くそっ! くそおぉおぉおおおっ!!」


 僕はラースをその場に叩きつけた。

 両手を上げ、近づいてくる神族どもを目から火が出る勢いでめつける。

 ……ごめんねお兄ちゃん。仇をとれなかったよ。

 堪えていた悔し涙が溢れ、瞑目めいもくする。


「貴様らに姫は渡さん!」


――轟音ごうおんとともに間近から神族の悲鳴が聞こえてきた。

 僕は慌てて目を開く。


 白いブラウスと金髪のロングヘアーが印象的な少女はぶんぶんと両手斧を振り回して突き立てて。

 その両手斧による一撃で王児を救出すると、立ちはだかる神族どもを無双していく。


「卑しい神族どもよ! 死神族、クラリス・オールスバーグが相手だ!!」



ここでクラリスが見参! どこまでも頼もしい死神族!!


次回もお楽しみに!

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