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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第1章》 紫電の旅立ち
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紫電の家宝

洞窟探検も大詰め!

紫電の家宝をゲットなるか?

 いよいよ本格的に薄暗くなってきた。

 しかしそれとはやたら対照的な紫電しでんのゴキゲンな鼻唄が、黒い岩壁に響き渡る。一方僕は何か特権を奪われたようで精神的ダメージがでかい。そしてソラはゴキゲンな紫電が気に食わないようで、イライラしながら飛んでいる。

 我らながら温度差が激しいパーティだ。


「見て英星えいせい! なんかある!」


 急に鼻唄が途切れ、紫電が黒く細長い箱に駆け寄った。長さは1メートルぐらいだろうか。


「これ? これがボクの家に伝わるお宝?」

「どれどれ」


 僕が《サーチライト》の光を当てる。どうやら洞窟はここで行き止まりのようだし、ならばこれが紫電ちの家宝で間違いないのかなあ。……と、何か文字のようなものが。


「なんて書いてあるの?」

「これはあんたんちの家宝なんだろうから、紫電が読んで。重々しい字体で書かれてる」

「解った! なになに……『荒波家の勇者よ……、まあいいからこの魔剣使えや』って書いてあるみたいだよ」

「えらくノリが軽そうな家宝だな」


 ソラが同意しか感じない突っ込みを入れた。

 ……この剣らしき物の歴史の説明とかないんか。

 重々しい字体で軽々しいことを書かないで欲しい。


「剣が入ってるんだ! ワクワクするなあ! じゃ、箱開けるよ……? あれ?」

「どしたの?」

「箱に鍵穴があるけど……ボクたち鍵なんて持ってないよね?」

「いいじゃんいいじゃん! 使えやって書いてあるんだし、そのまま開けちゃえ!」


 紫電がうなずき、腕に力を込めるが……。


「開かない! ふぎぎぎぎぎ……! どうしよう英星これ開かないよお!」

「ええ? まあいいからこの魔剣使えや、って書いといて開かないのお?」

「矛盾もはなはだしいわ――――ッ!」


 3人がかりで箱をディスる。こうなったら破壊してでも中の宝を……!

 僕が手から炎の塊を出すと、周囲が赤く照らし出された。


「待って英星! もっと下に小さく何か書かれてる!」

「へ……? ホントだ! えっと……『ホントに勇者なら魔法の文字をしるしてちょ。黒い弾丸の奴よろしく。これで開かなかったら諦めて帰りましょー。いい子には景品あり』……だって?」

「ボクの家宝ながらやっぱりノリが軽いなー。黒い弾丸、黒い弾丸……、あ! 英星! お風呂場でゴキブリが出た時、そんな魔法使ってなかった? ブラッディなんとかって……」

「や、奴を思い出させないで~……! って、そうか! 《ブラッディキャノン》だ!」


 僕は試しに《ブラッディキャノン》のダルボワ文字をその場で書いてみた。


『ブブー! は~ずれ~!』


 箱から声が出た刹那。

 ばしんという乾いた音とともに、天井から降ってきた巨大な物体に頭をはたかれた。


「何このでかいハリセン! ぷぷっ、英星、だい……じょう……あはははははっ! ごめん笑っちゃった――っ!」


 ――ぐすん。一生懸命に頑張って、なぜこんな目に遭わなければならないんだ。

 頑張る人が報われる社会になって欲しい。


「帰る」

「え? ごめん英星!」


 スタスタと引き返す。こんなん頑張るだけアホらしい。


「待ってよー、英星ー!」

「ガキどもは帰ってなー! 私はもうちょいこの箱調べるわ!」


 ぱんぱかぱんぱんぱーん!


『おめでとうございます! ちゃんと帰ったね! いい子いい子。景品だよ!』


 謎のファンファーレとともに声が聞こえ、部屋が赤く点滅する。


「おお! 『開かなかったら諦めて帰りましょー』ってそういうことか! やっと開くんだな?」


 ソラが嬉々として言い、


「ああっ! ちょっとソラ! ズルいよー!」


 紫電が叫び、2人して振り返った時。


『お前1人だけ帰らんかったろ! 覚悟しいや! 《羅刹獄炎らせつごくえん》!!』

「ぐぎゃああああああああああああああ!」


 箱の鍵穴から噴射された地獄の炎が暗い室内を朱色に照らす。瞬く間に鳥の丸焼きが出来上がった。

 あの鍵穴はどうやら火炎の噴射口だったらしい。

 この箱にはヤクザでも入っとるんか。今の剣幕はちびりそうになったぞ。

 次に、箱から白くまばゆい光が放たれる。

 ……こ、今度こそ開くのか?


『ぱっか~ん♪』


 先ほどとは打って変わって、ふざけた声とともに箱が開く。

 ――入っていたのは、ヤクザではなく1振りの日本刀だった。

 ここにヤクザが潜んでいないんだったらどこに潜んでいるんだろう……。

 紫電が日本刀を手に取った。刀身が淡く光っている。


「わ~、これってボクの固有装備だよね? あっ……なんか黄色い紙が……これにも何か書いてある」


 紫電が黄色い紙を読み上げる。


「『取扱説明書。この度はこの荒波あらなみつるぎをお買い上げ頂き誠にありがとうございます。今なら先着1名様限定でこちらのさやも差し上げます。終わりんご』……だって」

「ノリが軽すぎて頭おかしくなりそう。とりあえず固有装備おめでとう、紫電」

「ありがとう英星!」

「そこの丸焼きを試しにスライスしてみたら?」

「やめれ――――ッ!」

「やっぱ生きてたし」


 じゃれあっていると、洞窟全体がずどんと大きく揺れた。天井から砂と小石がぱらぱらと降ってくる。


「きゃああっ!」 「わわわっ!」


 思わず紫電に抱きついた。……って、なんで僕はこいつに抱きついてんだ。そのままの勢いで紫電をひっぱたく。


「ぷおっ!?」

「どすけべーッ!」

「自分から抱きついといて……」


 ソラは浮遊しているので、揺れの影響は全くないようだ。

 しかしおかしい。妙な胸騒ぎがする。


「紫電! 急いで上に戻りましょ!」

「う、うん!」



一体何が!?


次回もお楽しみに!

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