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第91話

「コウ今日さ夜電話して良い?…やっぱりちょっと不安で…」


 対策会議?が終わり、帰り際に立花からこんなことを言われた。立花とは、ちょこちょこ電話してたが事前に聞いてきたのは初めてだな。


「勿論、何時でも掛けてくれ。正座して待ってる」


「…うん、ありがと」


 俺の小ボケにも反応しない位には、追い詰められてるんだろう。俺との電話で少しでも不安が晴れるなら、朝までだって構わない。


「ただいまー」


「お帰りなさいコウちゃん」


 何時もの出迎え、何時もの会話、しかしモヤモヤする。悪意を持って立花をはめようとする奴がいるのか?


 タクは予想で語っていたが、アイツにそんな事出来るのか?…とにかく今は立花の力になりたい。



 夕飯を食べて、風呂に入り何時もなら勉強の時間だか、今日は立花から連絡がある筈だから、準備?をしておく。何をするかは、わからんが。




 しばらくして、スマホに着信が入る。画面を見ると…立花からだ。別に何時も電話したりするのに、何故か今日はちょっと緊張してる。


「もしもし?」


「……もしもし?コウ?」


 立花の声だ。やはり少し元気が無い気がするが、今日はあんな事があったし、致し方無いだろう。


「おう、ちゃんと正座して待ってたぜ」


「そう言えばそんな事言ってたね?」


 少し沈黙が挟まる。お互い緊張してるのか?


「ん゛ん゛…今日は大変だったな。何つーか…その…」


 上手く言葉が出てこない。こんな時、王子やタクだったら励ましの言葉もすらすら出てくるのかな。


「んふふ、無理しなくて良いよ?ありがと。コウの気持ちは伝わってるから」


「っ!──そっか、それなら良かった」


 一瞬自分の好意がって事かと馬鹿みたいに思って、言葉が詰まる。文脈的にあり得ないだろ。行間を読め!俺!


「なんかねーあたしあんまり不安とか感じないと思ってたんだけど、弱くなったのかな?担任に色々言われてた時さ、皆の顔が浮かんできて助けてーって思ったら凄い不安になっちゃった」


 立花は、少し落ち着いたんだろう、何時もの調子であっけらかんと喋ってる。


「それは…弱くなったのか?不安な時に頼れる人が思い浮かぶって、悪いことじゃないだろ?それに、昔の立花が人に頼らなかったなら、俺は今の立花の方が好きだよ。人に頼ってみっともなく泣いてたとしても、俺は人に頼れるのも、強さだと思う」


 人に頼るのって実は凄く難しいと思うんだよ、俺は。押し付けるんじゃなくて頼るのってのは、相手を信頼して身を委ねるって事だろ?


 俺も、数は少ないけど、そんな人が何人か思い浮かぶ。勿論立花だってそうだ。でも、そこそこの付き合いの人間に、自分が泣く程辛い状況を委ねられるか?


 委ねられる人だって中には居るだろうが、ほとんどの人は無理だろ?だから、頼るって事は凄く難しいと思ってる。


「そーかな…?頼る…かぁ…」


 何だが歯切れが悪いな?


「あ、あのコウはさ?あたしが頼ったらそれに答えてくれる?」


「ん?当然だろ?今だって頼られてるっちゃ頼られてるんじゃないかと、俺は思ってるが?」


「うん、頼ってるよ。じゃあもーっと大変な時に頼っても答えてくれる?守ってくれる?」


 はぁ……まったく。


「当たり前だ、何からだって守る。立花の為なら」


 嘘偽りのない言葉を立花に捧げる。だって、何でも出来るから。立花の為なら。


「そっか。───うん!何か元気出てきた!こんな時こそ楽しい話しよっか?コウ」


 何処か吹っ切れた様に、言葉を返してくる立花に少しの安堵を覚える。俺の言葉で元気付けられたなら嬉しい。


「楽しい話…か?」


「うん!コウは年末とかどうするの?家族とゆっくりとか?」


 話題は明るい方へシフトチェンジするようだ。


「あー実は毎年家族で年末は旅行に行くんだよ」


 まあ、今年は…


「そ、そっかぁ…じゃあ年末年始は遊べない感じかぁ…」


 途端に声のトーンが落ちる立花。


「あ、いやいや、行くんだけど今年は両親の結婚20周年らしくて、夫婦水入らずで過ごすんだってさ。だから俺は留守番、置いてけぼり」


「え!そうなの!?寂しくない?」


 また声のトーンが戻る。コロコロと表情が変わるのも魅力の一つだな。顔は見えないけど。


「んー…まあ1人だから寂しいっちゃ寂しいかもな」


「へー!寂しいんだ!じゃあさ!皆で集まらない?年越しパーティーしようよ!」


 これはまた、陽の気配のする事を!


「年越しパーティーって……」


「え?やっぱ嫌だ?パーティーとか好きくない感じ?」


「楽しそうだな!やろうぜ!」


 俺の目標は青春する事だぜ?友達と年越しパーティーとか青春し過ぎてて最高じゃねーか!


「だよね!やったー!皆に予定聞いてー王子は多分大丈夫だし…後買い出しとか、お菓子とかもいるよね!」


 子供の様にはしゃいでるのが、電話越しでも分かる。俺も電話越しでニヤニヤして、人に見せられない顔してるしな。


「いいな!どうせなら、から揚げ作ろうぜ!文化祭で作れなかった最強のから揚げを王子に食わせて、驚かしてやろうぜ!」


「うんうん!じゃあ、あたしはちょっと早めに行って色々準備して──」


 そんなこんなで、年末の予定を話ながら夜は更けていった。知らぬ間に漠然とした不安も何処かに消えていた。




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