第89話
大変お待たせいたしました?別に待ってないと言う声も聞こえそうですが、カクヨムからの移植が大変で遅くなりましたが、今日から毎日完結まで投稿していきますのでよろしくお願いします。
「田中くん、ちょっと来て」
文化祭も終わって次は期末テストに向けて勉強しなきゃと、少しだけ憂鬱になっていた今日この頃。昼休み中にいきなりだな。
いつもの態度はどうしたのかと言う程凄い剣幕で俺を連れだそうとする春川。
春川がここまで感情を露にする程俺は何かやっちゃいけない事をやったか?……やってない筈だか。
「何だいきなり?理由位言えよ?」
謂れの無い、怒りにも似た感情をいきなり向けられて、少しだけ険のある言い方になるのは仕方ないよな?
「良いから、とりあえず来て」
俺の腕を強引に引っ張って連れていこうとする春川。何時ものような穏やかな雰囲気は微塵もなく、何処か切羽詰まった様にも見える。
「わかったから、引っ張るな」
何かあったんだろうってのはわかったから、とりあえず大人しく着いていく事にする。
春川に着いていくと、そこには三人の人物が居た。最も最初に目についたのは、階段に座り込んで顔を落としてる立花。もしかして泣いてるのか?
他は、その立花の背中を擦りながら何事か話し掛けてる委員長。そして、普段より険しい顔付きの王子が二人の横に立っている。
「あっ、コウ」
俺を見付けて最初に王子が声を掛けてくる。同時に春川の方を見て何とも言えない表情をしてる。
「コウ?……麻衣、コウには言わなくて良いって言ったのに…」
やはり、泣いてる様子の立花。なんだ?何があったんだ?
「それは駄目、今回の事は私と田中くん両方に関係してるし、ちゃんと言わないと駄目」
「あのさ、とりあえず何があったのか説明して貰っても良いか?状況が全くわかんないんだが」
二人とも当然の様に話してるが、まずまず俺は何でここに連れてこられたのかを、わかってない。
「麻衣、なにも言わずに連れてきたの?」
少し非難するような目で春川を見る立花。何時もなら大体何をやっても立花が許してる気がするが、今回は余程の事なのか、目線が厳しい。
「他のクラスメイトが居るのに喋れないでしょ?それに、田中くんなら絶対協力してくれる」
今日の春川はどうしたんだ?変なもんでも食べたのかよ。
「美咲、僕もコウには言った方が良いと思うな。自分が関係してるのに、何も知らないじゃ…あんまりじゃない?」
立花は俯いたままだか、うーうー唸りながら、何か葛藤しているようだ。
しばらくすると、バッと顔を上げて潤んだ目でこちらを見てくる。不謹慎ながらドキッとした。立花は意を決したように話し始める。
「あのね、コウ今日担任から──」
立花の話しはこうだ。
朝登校すると、担任に生徒指導室に呼び出され、さして心当たりがない立花は、不思議に思いながら部屋へ向かったそうだ。
そこには担任が待っており、とりあえず座って話を聞く様にと言われたらしい。別に何もしてない立花はそのまま座って話を聞いていた。
担任が言うには匿名で立花が、イジメや恐喝、他にも脅迫をしていると告発があったそうだ。それを理由に志望校への推薦を取り消すとの事。
勿論立花本人は立ち振舞いだけで、実際にはそのような事実は無いので否定したらしいが、担任は推薦取り消しだけで済んでるのは、立花の日頃の行いのお陰だと諭し、これ以上否定するなら事を公にしなければと、半ば脅しとも取れる発言をしたらしい。
立花は公にされても良いから、ちゃんと調査して欲しいと頼んだそうだか、担任の答えははっきりとせず、そのまま授業が始まる時間が迫っていたので、一旦解散になったそうだ。
そして、昼休みに抱えてた不安が爆発して様子がおかしいと気が付いた春川と委員長が話を聞いて話が発覚し、王子に春川が連絡をして、春川本人は教室まで俺を迎えに来たそうだ。
「それで…イジメは、まあ見る人が見たらそうだか、恐喝と脅迫はなんだよ?」
立花が金品を脅し取るか?完全な濡れ衣じゃ無いのか?脅迫だって、どうなんだ?学校以外はわからないが、立花がそんな事する筈無いだろ。
「脅迫は、この間の文化祭の準備の時に1組の男子をその…諌めてたでしょ?それだそうよ」
委員長が代わりに説明してくれる。屑とアホ面の事か?……まあ、彼女を盾に取った脅しだと穿った見方をするならそうだろうが…。
「でも、あれは事情が─」
「そうね、でも見てる人からしたら、わからないんじゃない?」
確かに、途中から見てたらそう勘違いしてもおかしくは……無いか。
「告発した人がどう見たかが重要なんでしょう。それに他にも目撃者は居る訳だし、うちの担任なら尚更そちらを信じるわ」
うちの担任は事無かれ主義であまり大きな揉め事を嫌う傾向が強い。もし自分のクラスからイジメや脅迫の犯人が出てきたら確実に面倒になると思うだろう。
ある程度の証言もあって、普段から優等生の立花一人に罪を被せてしまえば、内々に処理できるとでも考えたのだろうか?
「まあ、イジメと脅迫はわかったが、恐喝は完全な濡れ衣だろ?それだけでもどうにかならないのか?」
俺が話すと皆が一斉に俺を見る。なんだ?おかしな事でも言ったか?俺は?
「まあ、本人は気が付いてないか」
王子が微妙な表情でこちらを見る。
「それはね、田中くん──」
春川が俺の目をしっかり見て、俺に言い聞かせるように……。
「君のせいです」




