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第76話

「しかし、タクくんにも会いたかったな」


 そう言えばまじであいつ来ないな?


「コウは途中で会わなかったの?」


「今日は会ってないな。立花が女子達に囲まれてるのは見たけど」


「そっかぁ美咲人気者だからね?」


 俺からしたら、王子も十分人気者だけどね?さっきからチラチラ王子を見て顔を赤らめてる女の子がいるよ?


「おお!美咲ちゃんかあ。しばらく会ってないから美人になってるんだろうな」


 そっか、そりゃお兄さんなんだから立花も知ってるよな。


「でも兄さん、仕事大丈夫なの?時間ヤバくない?」


 そう言われてふと、時計を見るお兄さん。


「ゲッ!社員達に怒られる…コウくん!これからも弟をよろしくね!修司、学校頑張ってな。それじゃあまた!」


 早口でそう言うと、お兄さんは車に乗って颯爽と校門の前を去っていった。


「ごめんね騒がしい兄で…顔は怖いけど優しい兄さんなんだ」


 そう言いながら、はにかむ王子。本当にお兄さんの事が好きなんだろう。


「そっか、最初はやべえ人に何か言われてるのかと思ったわ」


「兄さん昔から顔が怖いから周りから恐れられてたんだよねぇ…本当は凄く陽気なんだけどね?コウも最初やっぱり怖かった?」


 王子はあまり気にした風でもなく聞いてきた。あのお兄さんなら、日常茶飯事なのかもしれない。


「ああ、殺されるかと思った」


 素直な感想を述べる。だって怖かったし!俺の回答に我慢出来なかったのか、王子が吹き出す。


「ぷっ!兄さんが聞いたら悲しむかな?でも怖いもんね?あははは」


 兄を怖いって言われて爆笑してる弟って中々居ないんじゃ無いですかね?


「お兄さんと凄く仲良いんだな。男兄弟羨ましいな」


 そう王子に言うと、少し強張った顔で


「うん……兄さんにはね、色々一人暮らしのお金とかも出してもらってるし…」


 そう言いながら、意を決した目でこっちを見てくる。うーん…両親は普通に生きてた筈だから、何か問題あんのかな?


「へーそうなんだ。そりゃ仲良いわな」


 人生それぞれ、色々あるよなぁ。


「……何も聞かないの?」


「ん?聞いて欲しいなら聞くけど、別に王子が家族と何かあったにしろ、関係が変わるわけでも無いしなぁ」


 これは本音だ。人には多かれ少なかれ、触れて欲しくない部分ってのは絶対あるしな。親友だと思ってるからって、土足で踏み荒らして良い訳無い。


「そっ…かぁ。うん!そうだね!今度タクと三人の時にでも話すよ。何だかもやもやしてたものが、晴れたみたいだ」


 そう言う王子の顔は何時もより輝いて見えた。





「あっぶねぇぇぇぇぇ!」


 もうそろそろ、遅刻だってタイミングでタクが教室に飛び込んできた。


「何やってんだよ?」


 慌てた様子のタクに聞いてみる。


「それがよ!夏休みの課題が終わらなくてよ!」


 あー…ギリギリまでやってたのか。


「昨日の深夜までやってて、ギリギリ終わったんだよ!」


「終わったんか?じゃあただの寝坊かよ」


「いやいや、俺だって深夜まで課題やってたんだから、起きられないかもしれない事くらい、わかってたわ」


 じゃあ何でギリギリなんだよって言葉が出掛かったが、まだタクが喋りそうだったので、口をつぐむ。


「そこで俺は、秘技─親に起こしてもらうを発動したわけだよ」


「そんな秘技いやだな」


 何だよその他人任せの秘技は。


「俺も出したくは無かったんだけどな?背に腹は代えられないから、土下座して母ちゃんに頼んだ」


 なにしてんだこいつは…


「どっちかって言うと、土下座の方が秘技じゃねえのか?」


 今朝もう一人の親友とは、真面目な話をしたばっかりなのに、もう一人は母ちゃんに土下座してんだぜ?


「いや!土下座が秘技は格好悪いだろ?」


「秘技─親に起こしてもらうも、十分格好悪いだろ」


「そうか?……まあセンスの問題だな?」


 何だこいつ?俺がセンス無いみたいじゃねーか。


「それで!無事起きて眠い目を擦りながら、登校してたわけよ」


 じゃあ遅れねーだろって俺が言うと、クソみたいな煽り顔で


「チッチッチッ!わかってねーな!俺はそこで気が付いたんだよ」


「何でも良いが顔がうぜえ」


 つい、本音が出てしまった。まあ良いか。うぜえし。タクは慣れた様子で俺の発言をスルーして話す。


「あれ?俺……課題カバンに入れてなくない?ってな!そこで気が付いてダッシュで家まで戻って来たから遅れたわけだ!まあ間に合ったけどな!!」


 ドヤ顔でそう話すタクを呆れた顔で見ている俺や話が聞こえてたであろうクラスメイト達。


「課題家に忘れたから取りに帰っただけで、すんだじゃねぇかよ。時間無駄にしたわ」


 そう言って乗り出していた身体を椅子に戻す。そろそろ担任も来るだろう。目でタクに合図を送り椅子に座るように促す。


 タクは納得いってないのか渋々と言う感じで席に着いた。そして、鞄を開けて中を漁り何か焦ってる様子だ。


 あいつあれだけドヤ顔で語っといて、何か忘れたな?その様子に周りからクスクスと笑い声が聞こえる。立花や春川も聞こえてたのか笑ってるみたいだ。


「おー全員いるな?じゃあ出席取るぞー」


 担任が教室に入ってきて出席を取り始める。


「次ー川島ー」


「はい……」


 先程とは打って変わって、元気の無い声で返事をするタクに、遂に耐えられなくなったのか一斉に笑い声が起こる。


「な、なんだあ?」


 担任は困惑してるが、皆新学期から笑わせてくれたタクに称賛を送ってる。

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― 新着の感想 ―
[一言] タクみたいなヤツ大好きだな。
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