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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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誰かの視点 三

 ここは北の国との最前線。

 寒さと寒波が天候を支配する北方の地。

 男は暖かくされた陣の中にいた。

 その陣の作りはシンプルだった。

 

 壁の部分は菱格子に編んだ木材が骨格だ。

 蛇腹式になっていて折り畳むことができる壁。

 その壁の骨組みをつなげて、円形の壁を造っていく。

 そこに、南か南東の方角に扉を取り付け、馬の尻毛・タテガミでつくられたロープで壁に固定する。

 中央に2本の支柱が置かれ、丸い窓枠(トーノ)を支える。

 天井はこの丸い窓枠から放射状に渡される木材の梁が骨格となる。

 こうして建てられた骨格の上に羊の毛でつくられたフェルトを被せれば、ほぼほぼ形になる。


 さらに、このフェルトの上には厚手の布と防水用の布がかけられる。

 天窓の丸い窓枠には、ウルフと呼ばれる天窓の開閉に使う布が半分ほどかけられ、陣におくストーブの煙突穴と明かり取りとなる。

 ストーブを焚いているから室内は暖かい。

 寒い時はフェルトを重ねて室内の暖気を逃さないようにし、また床には家畜のフンがまかれ、その上に木製のパネルを敷きつめ、さらに絨毯を重ねていく。

 これで簡素で素朴な“床暖房もどき”が出来上がる。


 寒い寒いこの地でも、男の放つ英雄としての気迫は天候などで衰えることはない。

 だが、その英雄たるこの男。すなわち─────もその気迫以上に、戦況が思い通りにいかないことへの、苛立ちを隠せないでいた。


「あぁ、忌々しい。忌々しい……。なぜこうも堅固なのか。“鉄()石壁”よ」


 その男に落とせぬ砦や城はなかった。

 どこまでも蹂躙し続けて、ここまで大きな版図を拡大し続けてきた。

 だが、この地に軍を進めて来てみれば、今まで味わったことがない程の強固な敵と対峙することになった。

 それはこの英雄にとって初めての経験だった。なかなか思うように軍を動かせない。

 敵が侮れないからだ。




「あぁ、憎い。憎いぞ。……早く、早く世界を、我が手中にオサめなければ。早く世界を……」




 その英雄は、ある日から絶対に外したことがない、耳をすっぽり覆うフードを被っていた。




 そのフードの留め金には、とある文字が刻まれていた。


 

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