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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第一章 “歴史を紡いではならない”
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“歴史を紡いではならない”

 “歴史を紡いではならない”


 それは僕にとって、何の喜びもない只々生きる屍と化した人生を、疑問も抱かずに生きろと言われているようなものだ。

 この国では歴史という概念が放棄され、もし日記帳に何気ない日々を綴ろうとしようものなら、最重要犯罪人として惨たらしい死が与えられる。

 なぜこのような法律を帝国が最も大事にしているかが分からない。

 日本でいう憲法第一条のように“どんっ!”と国民の総意を前面に押し出しているようなもんだ。

 帝国の場合は日本と違い“総意”ではなく“相違”ではあるが...。


 歴史を紡いで人類の貴重な資産としないなんて、かえって国の進展を願う帝国の意志に反する行為をしていると感じざるを得ない。

 どのような残念な思考の末に…そのような法律を定めたのだろうか……。




「今日さぁ、帰ったら畑の手伝いしなきゃいけないんだけどお前らも?」


 ハイクが僕の意識に反して不意に話を振ってきた。


「そうだね。僕も今日帰ったら手伝いだね」


「私は機織りかな。要求量も増えたからお母さんの手伝いをしなきゃならないのよね」


「税も増えてるもんな。二毛作のやり過ぎで土地も痩せてきてるから、そろそろ土地休めの期間を貰って、その間に新しく土地の開墾させて貰えたらいいなぁって、父ちゃん言ってたけど無理かな?」


「無理だと思うよ。軍の侵攻をさらに広く広げるためか、もしくは、いま戦を仕掛けてる戦場のどちらかで必要かはわからないけど、父さんたちが作る兵糧も母さんたちが織る軍服も、年々課される割合が増える一方だしね。多分増やされ続けるってことは、今が帝国にとっての勝負どころなんだと思うよ」


 多分、断言は出来ないけど近々この村も戦争に巻き込まれそうな気がする。


「そうよね。でも、それがいつまで続くのよ」


「流石に僕も、そこまではわからないかな。三年...五年...十年後なのか」


「十年はきついよな。来年には終わってくんないかな」


「来年は無理じゃないかな」


「...どうしてそう思うの?」


「ここ最近、この村の敷地を通り過ぎて隣の国に出入りしてる人をよく見かけるよね」


「確かにな。みんな商人だったな。この村に商人のおっちゃん達が、泊まってくれたりしたら良いのになぁ」


「そうね。商人の人たちが増えたら、帝国から私たちの村を街に認めて貰える日がいずれ来ると思うのよね」


 そんな日が来ればいいなとは思う。

 だけど、そんな日が来る前にきっと情勢は変わっているのではと危惧してしまう。


「……多分だけど、あの人たちは商人じゃない」


「…ッ!? どういう事ッ!?」


「あくまで僕の予想でしかないけど幾つか理由があるんだ。もうすぐ学校に着くから、この話はまた今度...いや、僕だけの秘密にしておいた方がいいかな…」


「おい、教えてくれよ!」


「そうよ! 気になるじゃない」


 ……よしっ!


「理由を話すと長くから面倒くさいよ」


「カイの教えてくれない理由がまず理由になってないじゃない! …いいわ、帰り道で人気の少ない道を歩けばいいでしょ? その時に教えなさい。そしたら誰かに聞かれる心配もないし、私たちも満足出来るし」


「僕の話すメリットがないんだけど…」


「まぁまぁ、カイが気になるところで話しを打ち切ったのが悪いからしょうがねーよ。この事は学校のみんなにも秘密にするから教えてくれ」


 はぁ…とりあえずハイクとイレーネに、この話しの気を引いて貰えて良かった。

 もったいぶらして秘密の話題感を匂わしたから、学校でも無闇やたらに話すこともないだろう。

 二人にもあの商人のような人達に少しでも警戒心を持ってくれるなら、それが僕にとってのメリットだ。

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