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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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悩んだら悩むな

 何か不審な動きをすれば、何が何でも殺してやる。そんな殺気を漂わせながらその男は立っていた。

 ベヘモトを倒したという会話以降、対談に一切の関与は示さなかった。むしろあの時から、こちらへ向ける目の色が変わった。


「うーん…上手くやっていけるかなぁ」


「何を言ってる。何が何でも取り入れ。それがお前達の役目だろう、童ども」


 そう言ってバシッと背中を叩かれる。例の優男ことクローだった。

 彼もひたすら黙り込んで何やら考えながら対談を見守っていた。


「取り入れって…そう言われても十二分に警戒してくる相手にどうやれと」


「一つ教えてやろう。ありがたく耳をカッポジって聞け。警戒や恨みや妬みは解くもの。結ぶものではない。相手に自分の事を理解して貰うまで諦めるな」


 思わずハッと頭を上げる。意外にもこの優男の言葉が今の自分に必要だと思えたから。


「けどよー、相手が俺達を理解してくれない相手ならどーなんだよー?」


「そんな事で悩むな。いいや…悩んだら悩むな。まずは目の前にあるやれる事をやれ。一個ずつやっていけばそのうち悩んでる暇すらなくなる。自分から相手にどんどん近づいていけ」


 不満たらたらに質問をしたハイクも、クローの言葉に目を光らせる。

 

「おい…そう言う事は私の前で話す事ではなかろう。せめてコソコソと話してくれんか」


「おっ、いけねぇな。へへっ、失礼しました副ギルド長殿」


 対して詫びれもしていないのにクローは頭を下げる。


「…チッ、これ以上話しても無駄なようだな」


 その態度が気に食わなかったのか、副ギルド長は大きく耳につく舌打ちをかまして再び前を向いて歩き出す。


「……まぁ、あんな性格(きざ)な野郎だ。実直と忠誠が取り柄の生真面目朴念仁と言った所よ。だからお前達が一所懸命な姿を見せれば自ずと理解してくれよう」


 おーい、今さっき注意を受けたばっかりだよっ!

 今も前を向きながらも耳を傾けてる副ギルド長の額には、青い筋が何本も走っているだろうな…。

 

「ちょっと、そんなの本人の前で言う事じゃないわよっ! 副ギルド長がそんな良い人だとしたら恥ずかしくなっちゃうじゃないっ!!」


 イレーネがこれでもかと追撃を入れる。チラッと見たら副ギルド長は肩をプルプルと震わせ、それを見たヨゼフとシャルルは伏せて笑うのを堪えている。


「ワッハッハッハッ!! 言ってやれ、猪尾助っ! 恥ずかしくて肩を震わせてる野郎になぁっ!!」


「き、貴様ァッ!! こ、この私を侮辱しおってッ!! 成敗してくれるッ!!」


「わぁぁぁっ! ク、クローさん謝ってっ!! ほら、謝って!!」


 まぁまぁとヨゼフが間に入り、シャルルと僕がクローに謝れと懇願し、ハァーと心の中で溜め息を吐く。

 これからギルドと上手く付き合おうって時に、本当に上手くいくのかなぁ……。

 

 ま、悩んだら悩まないことにした。

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