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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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させている

「ほほぅ、フライドポテトなるものがあるのか。実に興味深い。よし、わかった。今すぐにでも作れ」


「………はい?」


 先日、ヨゼフ達に食べて貰っていたのはフライドポテト。とてもシンプルだけどみんな大好きなアレだ。

 ヨゼフ含め、みんな食べた事がなかったようだから試しに紹介してみたがエラい食い付きようだ。

 あまりにも性急過ぎて耳を疑う。駆け引きも何もなく、ただ自分の要求を無理矢理にでも通そうと必死さすら肌で感じ取れる。


「ギルド長、流石に横暴が過ぎまするぞ。未知なる食べ物に惹かれるのはわかりますが、今は少し抑えて下さいませ」


 無言を貫いていた副ギルド長が、ここで呆れながら息と共に苦言を吐いた。


「そうだったな。すっかり忘れていたが、ここで頼めばかえって要求すらされてしまう。後でレシピをきちんと書いて渡してくれ。…そう言う訳で、話し合いはここまでとさせて貰います」


 聞き分けよく、すぐ様に状況を把握して自分の立場の不利になるかも知れなかった現状(少し先の未来)を華麗に避けた。

 そこからピシッと線引きすらして、ここで自ら墓穴を掘る前に…見事なまでに徹底して会談の終了を突きつけた。


「いいでしょう。では早速、このままボクと和尚は先に城へと戻ります。いなかった間に生じた政務やみんなを出迎える準備を整えておきます。…ギルド長、少しの間ですがみんなをよろしくお願いします」


「言われなくとも丁重に扱わせて頂く。…みっちりと働いて貰ってな」


「お、お手柔らかに…」


 ギロッとこちらへ送られる視線にブルブルと震える。

 去り際に、シャルルはずっと言いたかった事をさりげなく話す。

 

「ギルド長、最後に一つ。カイ達がここの暮らしに慣れてきたら、すぐにでもお願いしたい仕事があります。いずれ正式に要請させて下さい」


「正規の手段と見合った金銭を出資するなら応えましょう。副ギルド長よ、あとは頼んだ」


「かしこまりました、ギルド長」


 こうして緊張間あふれるギルド長との対面は終了した。


 行きと同じく副ギルド長の案内で迷路のような庭園の中をぐるぐると戻り、やっと建物内に戻る頃にようやく、肩の荷が多少は降りた感覚になった。


「お疲れ様、カイ。結構頑張っていたじゃない」


「まぁね、これでも全力は出し切ったつもりだよ」


 イレーネが肩をポンと叩いて褒めてくれる。まだ気を抜く場面ではないというべきだろうけど、甘んじて軽口で返事をする。


「なぁ、カイ。あのギルド長ってすげーのか?」


「……うん、油断出来ない相手だよ」


 ハイクはいつもの気の抜てしまうのんびりとした口調で尋ねた。

 他愛無い会話の振りなんだろうが、真面目に返事をしてしまう。

 

 あのギルド長こっちの動揺を誘う罠にも掛かった素振りはなかった。もし、黒だった場合…感情の起伏を自在に操れる猫の皮を何重にも重ね着した化け猫と言ったところだろう。




 “教会という勢力は何かの狙いがあって、この国を内部から廃れさせようとさせているのではないでしょうか?”




 している…ではなく、させている。


 これは否応でもなく、他の協力者がいるのではという憶測を含む。


 そして、それを否定しなかった。これはつまりそういう事だ。


 ギルドも何かしらの協力ないしまたは手助けをしているのではないか?


 そんな漠然とした何とも言えない不充分に過ぎる疑問。


 疑われたというのに至って冷静に、かつ何もなかったかのように問答を続けた鉄の心の持ち主。


 うーん、一体誰なんだろう…。


「そうか。俺にはそこまで観る余裕はなかったからなぁ。ちゃんと話しも聞けなかったし」


「…え?」


「だってよ、傍に控えながらいつでも俺達を仕留めてやろうとしてきてたろう? あの人」


 指差した先には一人しかいない。声を潜めながら話してはいても、きっと今もこちらの一挙手一投足を背面越しに監視しているであろう人物だった。






 副ギルド長、その人だ。







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