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とある半人半森人の視点 一
──この子供は危険だ。
そう、自分の本能が訴えかける。
この子供は見た目の幼さには考えられぬ知性を有している。
私が水面に投げた小さな小石が…波紋が大きく広がるかの如く、偽善たる教えにまで辿り着いた。
転生者だからというだけではない。過去の世界で知り得た知識がある。
そこから考えうる知恵も。
私よりどれだけ未来の世界を生きた者なのか…そう感じさせる知見を有している。
幼い姿なら精神幼児化の影響も大きいはずであるにも関わらずに…だ。
ここで始末するか……
いや、それは得策ではない。
奴がそれを許すはずがない。
かえって何かしらの報復すらあり得る。
この小さな子供を代役に立てた理由など、たった数分の弁舌からも明らかだ。
それに何やら不可思議な回復魔法の使い手でもある。
王の不治の病すら治したのだ。
他にも秘めたる何かがあるのやもしれん。
……なれば、これを利用しない手はない。
利用出来うるモノは何でも使わせて貰う。
以前の世界と同じように…
以前の世界とは違うように……
私は自分の野心を成し遂げてみせる。




