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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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“紋章と指輪”

「王の直轄地を中心に…東西南北に三つずつ領地がある?」


「そうだね。王都を守るための配置なのかわからないけど、十二の領地に囲まれるように直轄地が配置されているんだ」


 それからシャルルは、あの時…レビノスやシドンに見せた紋章を取り出した。


「この王家の紋章と同じように、各領地にも代々伝わる宝石と紋章がある。紋章は首飾りに、宝石は指輪として領主に受け継がれてきた。ほら、覚えてる? ジャン・ド・パラド伯爵の首から何かぶら下がっていたでしょ?」


 ……あぁ、そう言われてみれば何か刻まれていた首飾りをしていたのは覚えている。

 木のようだったけどそれが何を指しているかまではわからなかった。


「パラド領の紋章はあの領地の代名詞である“オリーブの木“。沢山の豊かなオリーブが実る領地であったのは昔からだったんだろうね。そして、指輪の宝石は縞瑪瑙しまめのう。指導者の指である右手の親指に各領地の領主は身に着けている。他の領主と一線を画す目に見える違いだね」


 へぇー、オリーブの木を紋章にするなんてオシャレだな。…にしてもこの地図、気になるものがあった。


「ねぇ、シャルル。この地図を見ると丸く囲っているのがあるけど、これってもしかして…」


「川だよ。これが国境の川になっている。隣接する帝国とエルフの国とのね」


 僕達の住んでいた家のすぐ近くに流れていた川が、まさかこんな丸い形状なんて想像もしていなかった。

 そして、今は川の内側にいるって事か。


「これの水源はどこにあるの? そもそもこんな形なんて人工的に造らないと無理だよね?」


「…それがわからないんだ。そもそもこの川は人工的に造られたとは思えないんだ」


「……それはどうして?」


「人が手を加えようとしても、不思議な事に掘る事も切り崩す事も不可能。理由はわからない。以前、父はこの川を活かした城下町を造ろうとした。だけど…無理だったらしい。だから人工的に造ったとは考えにくい」


「それは変よ。私達のいた村はこの国境の川からの水を取り入れて小麦を育てていたもの」


「…えぇッ!? ほ、本当にッ!? …うーん、ボクが父から聞いている話しとは違うのかなぁ?」


「いいえ、王よ。その話しは正しいです。私もそのように聞いております。何やら不思議な力で川を切り崩せなかったと。しかし、その少女が申すのも正しい。我が国でも幾つもの農村はあの川からの水を得て作物を育てております」


 和尚もシャルルの発言を保証してくれた。

 どういう事だ…? 僕達の村はあの国境の川から恩恵を受け、田畑は良く育ち実りをもたらしてくれた。

 間違いなく用水路から水を取り入れられていたしなぁ…。


「うーん、いつか調べてみたいな。ボクもこの川の形状は気になっていたしね。…今は伝えられるのはこんなところかな。少しはこの国についてわかったかな?」


「大分ね。今、自分達がどこにいてどう来たかわかっただけでも、この国の広大さがよくわかったよ」


「ふふふ…じゃあ、王都に着いたらもっと驚くだろうね。この世界の広さにね」


「「「王都で?」」」


 ハイクとイレーネと声が重なる。そりゃあ当然さ。なぜ王都で世界の広さに…って、まさか……。


「この世界にもれっきとした地図がある。それも世界地図がっ!」


「おぉーっ! 見てみたいっ! …あれ? それならシャルルが今ここで地面に描いてくれてもよくない?」


「楽しみがあった方が先を急げるでしょ? さぁ、もうお昼は終わりにしよ。出発だ」


 ……上手い具合に乗せられてしまった。実際、僕の心の中のドキドキは高鳴るばかりだった。

 この世界はまだまだ謎で満ちている。それを知るのが歴史好きの生き甲斐であり浪漫とすら想う。

 高鳴った胸の心拍数以上に、想いは先へ先へとくばかりであった。

 



 

 世界地図も話しの折に加筆して書かせて頂きます。

 まだ名前を決めかねている国もあるので、時間をかけて考えさせていただきます。

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