ジョン・ラ・パディーン
「…ルントシュテット領を抜けました。ここからは王の直轄地…つまり名目上はボクの治める領地パディーン領になります」
「おぉ、じゃあ今までみたいに警戒はしなくていいわけだなっ!」
「ハイク、残念ながら警戒は解けません。直轄地だからこそ、警戒を強めなければなりません。…そして、同時に情報を得なければいけない」
シャルルの目は険しくなった。そうだ…あの夜にシャルルはこうも言っていた。
「自分の目と耳で知りたい…シャルルは何かの噂を確かめたいって言ってたよね」
「うん、そうなんだ。和尚を通してその噂を知った。どこまでその話しが広まっているかを知る必要があるんだ。みんなにも協力して欲しい」
チラッと横目を見遣ると、シャルルは和尚に合図を送った。話して欲しいと言う事だろう。
「……王弟であるジョン殿下には不穏な噂が流れている。“王位を乗っ取ろうとしている”…と」
「「「えぇッ!?」」」
まさかそんな一大事な噂だなんて…。シャルルにとっては見過ごせない重要な問題じゃないか。
「ジョン・ラ・パディーン。ボクの弟で最も王位に近い継承者。ボクが死んだら間違いなくこの国の王になる人物さ…」
想うところがあるのだろう。シャルルはそれ以上何も語ろうとせず和尚が説明をしてくれる。
「アルデンヌやルントシュテットは帝国に通じている可能性がある。そんな場所で調査など出来んからな。宿を取るついでに聞き込みをしようと思う。どこまでそんな噂が広まっているかを」
やはり二人の間で示し合わせていたのであろう。調査をするのは決定事項であった。
「……宿を取るのは賛成だ。急ぐ状況であっても流石にゆっくり身体を休める時間も必要だろう」
イレーネの方を気にするようにクローは賛同する。結構、周りの状況に気遣える人物のようだ。そんな人だからこそ、民のために立ち上がったのだと納得してしまう。
「では、ここからまだ距離はありますがシェケムに参りましょう。そこそこ大きな街ですし交通の要所でもあります。色んな場所から人が来るでしょうから、その分、多くの情報も得られると思います」
方針は決まった。黒雲達に負担をかけて申し訳ないと思いつつ、愛馬達に走って欲しいと号令を下す。
勢いよく走り出し大地を蹴り上げながら空を切った。
シャルルの弟の名前も明らかになりました。次はシェケムです。




