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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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残る者と向かう者

 ファンの台詞に一同は頷き、(おの)ずと誰が残り、誰が向かうかは皆がわかっていた。


「…仕方あるまい。私は残るしかないのであろうな。本来なら王の補佐と貴族の懐柔の一助になりたかったのだが」


「ごめんね、伯爵。ここは一時的にとは言え、隣領を治める伯爵にこのアルデンヌ領の混乱を収めて貰うためには残って欲しい。他の貴族の介入を防ぐためにもね」


「承知しました」


 まずは伯爵が残るのが決まり、反乱後の領地の後処理を担う方針が明確になる。となるとこの人も名乗り出るしかない。


「ま、そうなると私の出番でもあるかな。パラド伯爵の右腕として民の慰撫と戸籍の確認、それから税務に関する事を一度見直す必要があるだろうからな」


「公国の名宰相がいてくれるだけで心強い。共にお願いしますぞ」


 政務と兵站の天才たる蕭何も残り、残存する山積みのアルデンヌ領の悩ましい課題に立ち向かう。持ち味を一番に活かせる場面でもあるからね。


「わ、わ、私も残る。か、か、川の氾濫の問題も放置されたままだろう? な、なら私の得意分野だ」


 開墾事業が得手であるファンも進んで名乗り出てくれた。

 すぐさま対応しなければいけない事業の一つであり、民達の暮らしを守るために必要不可欠な作業の一環でもある。


「そうなれば儂の出番も出てくるのぅ。杭やら石の加工や木の伐採だってしなければならんだろう。儂も残る」


「それなら同じ老人の(よしみ)として私も協力しよう。これでも用兵に心得がある。先程の策を実施する上でも役に立てるはずだ」


 キャロウェイお爺さんと実際の策の立案をしたツクモも参加を表明してくれた。

 実際問題、ツクモがやった方がいい。そういう経験があるからこそのやり方を知っているだろうから。


「シャルル王、私も残ってもよろしいでしょうか? 敵方が何かしらの手段に出る事も考えられます。対処する者が必要でしょう。それとパラド伯爵の農民兵やこの地の民から兵に志願したき者を鍛えたく存じます。来るべき時のための兵は今のうちから育てておくべきかと」


「わかりました。それではこの地に残るのは伯爵、蕭何、岳飛、ファン、キャロウェイさんの五人に任せたいと思います」


「って事は俺とカイ、ハイク、イレーネ、優男、武辺者はシャルルについて行くって事だな」


「優男だと? もしかして俺の事か?」


「おい、其方…もしや武辺者とは拙者の事か? 名も名乗ったのに名で呼ばぬとは何と無礼な」


「あぁん? 俺は俺が認めた奴しか名で呼ばねーんだ。そこんとこよろしく頼むぞ」


「「何がよろしく頼むだッ!!」」


「まぁまぁ、その男は捻くれ者だから許してやってくれ」


「ケッ、人を信じられない卑屈などっかの宰相様がよく言うぜ」


「せっかく取りなしてやろうとしたのに君は随分と狭量な人物のようだ。これだから古い時代の人間は野蛮な思想の虜にしかなれないのだろうね」


「おい、聞きづてならないな。表に出ろ」


 我が強い者達の集団はどうしてこんなにも己の主張をぶつけ合うのだろう。

 はぁ…何だか先が思いやられるよ。


「おいおい…仲良くしろとは言わないが、少しは協調性というものを身に着けてから王都に向かってくれ。私がいない間に王の身に何かあったとなれば心配して夜もおちおちと寝れんではないか……」


「ふふ…大丈夫だよ、伯爵。何だか今から王都への道中が楽しみでしょうがないよ」


 シャルルはくすりと微笑み頼もしい限りの返事をくれた。

 ふと和尚の方を横目にした時、彼も同じくシャルルを見て安堵したように顔から強張りが消えていた。


「なぁ、カイ。いつになったらさっきのアレをやるんだ」


「もういい頃だと思うよ。今後の方針は纏まったようだし。ねぇ、シャルル?」


 ハイクの疑問をそのままシャルルに横流し判断を(あお)ぐ。


「うん。それじゃあ、さっきの話し合い通りにまずは民達に助力と約定を宣言しよう。伯爵、この街にいる全ての者を集めて欲しい」




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