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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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幼名

「名を見てだと? ではそのドワーフの王ってのは…」


「あぁ、恐らく其方達と同じ国の出身なのであろう。全く同じ反応を示していたからな」


 これで確信を持てた。以前、キャロウェイお爺さんが僕の食事の前の“いただきます“を見て”あの御方と同じだ“と言っていた。

 それに和尚の字を見て和尚(おしょう)と呼んだのだから、どう考えても日本の出身であるのは間違いない。


「でも、名を見てって言いましたよね? それって字で書くと和尚って名前って事ですか?」


「そうだ。拙者の幼名を切り取った名だ。…これ以上は明かさぬぞ? 其方達も自分の名を明かす危険性はわかっていよう? 転生者が自身の名を知られる欠点を。それなのに本来の名まで明かすとは拙者には考えられぬ所業だ。…王もこのような者達に名を明かすなど、不注意が過ぎるのでは?」


 …幼名? つまり、本来の名前は別って事? 

 それに切り取ってという事は、幼名自体がもう少し長いという意味かな?


「あら? もしかして嫉妬しているのかしら? シャルルに心を許された私達の事を」


「…ッ!! な、何を言っているッ!? 拙者が其方達に…し、嫉妬などとッ!? そ、そんな事あり得ぬッ!!」


「「「「「ぷふふ…あっはっはっはっはッ!!」」」」」


 イレーネの的確な突っ込みに対して、あからさまに動揺してみせて嫉妬しているよと教えてくれた。

 …口調は強い物言いではあるけど、案外と悪くない性格をしているな。


「まぁまぁ、落ち着いてよ和尚。ボクだって自ら明かした訳ではないよ。そこにいるカイがボクの名前を言い当てたんだ」


「何と? そこにいる者が…」


「多分、カイは和尚の名前だって言い当てられると思うよ。…ボク達がいない間に、お二人の名まで突き止めていたようだし」


 チラッとシャルルの視線が蕭何と岳飛に注がれる。

 まさかこんな所での自己紹介の場で、今まで明かしていなかった名をお披露目するとは思いも寄らなかったようで、周囲のみんなも不満をタラタラと述べ始める。


「そうだな。せっかく面白い場面を見れなかったのは残念だ。…蕭何の過去の話しでも聞きたかったのによ」


「うむ。三傑の英雄の見た景色を聞きたかったのぅ。今度、ぜひ話して貰いたいですな」


「フン…そう易々と私の生き様を語ってなどなるものか。私の話しは決して安いものではないのだよ、君達」


 ヨゼフとツクモの揶揄(からか)いにも辛口な言い回しで蕭何は切り返した。

 けど、よくよく見ると口元の口角はニィッと上がっている。…何だかんだでこのやり取りも嬉しそうだな。


「せっかくだ。和尚もカイに当てて貰うといいよ。その方が面白いでしょ?」


「…王もこの僅かにお逢いしない間に、少々ですが性格が変わられましたな。…うーむ、この変化を喜んでいいものかどうか」


 ちょっと困惑気味にシャルルの性格の変化に驚いているようだけど、きっと前よりも良い方向に変わったからこその悩みでもあるようだ。

 現にシャルルの変化を戒めようというつもりがないのがその明かしだった。


「それに…見てよ、和尚」


「……ッ!!! こ、これは…い、いや……そんなまさかッ!? この国の名医達を集めて治せないと断言された王の右手が…綺麗さっぱり美しくなられている…」


 シャルルの右手の甲に膨れ上がっていた、過去の世界でも癒しきれなかった傷がなくなっていた。

 そこには元々そんな傷などなかったかのように、右手の甲は滑らかであった。


「し、信じられません…一体誰が治して下さったのですか……」


「これを治してくれたのもカイだ。…つまり、カイには何やら特別な力も持っている。これだけでも十分だけどカイにはそれに加えてボクらよりも先の時代における知識も備えている。…ボクらにも必要な人材なんだ。他のみんなもそれぞれ特別な力がある。みんなを認めてやってくれるかい?」








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