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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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行き着く先は…

「さぁ、全くわからぬ」


「…ッ!! 君もどうやら気付いていながら知らないと言うのだから…調べた後なのだね」


 開き直ったようにツクモはとぼけてみせた。しかし、それで怒る蕭何ではなくかえって冷静にツクモの反応から答えを導き出す。


「ねぇ、蕭何。そんなにここにある食糧庫は少ないの? 僕には具体的にどのくらい違うかわからないんだけど…」


「具体的にか…ここにある食糧のほとんどが小麦だと仮定した場合、大きい麻袋一つに百二十斤は入る。これが縦に積み重なっているのが大体…三十だな。それがあの屋敷に比べて二倍程の大きさの建物に入っている。だが、管理をするために十×十で一つの纏まりにされ、それが等間隔に置かれて積まれているからその実は少ない。…おおよそ三千六百万斤だな」


「さ、三千六百ッ!?…」


 斤は中国の重さの単位で五百グラムだ。つまり、麻袋には六十キロ入る事になる。

 それを踏まえて計算すると、ここには六十万キロの小麦が収められているって事か…。


「しかし、あの徴収された小麦に関する情報を統合するなら…国への献上分を抜かして本来は五倍の小麦が収められているはずだ。粟や稗などを含めたらもっとあるべきだ」


「…ッ!! そ、それってとんでもない事に繋がるんじゃ…」


「あぁ。ここ以外に食糧庫を領内に設置していないとするならば…()()()()()()()()()()()()()、だ」


 大問題であった。それだけの量が国に知られずに消えるなんて…。普通に考えればどこかに違和感や痕跡が残って、国にもバレてしまうだろうに。


「ご名答。来てすぐにこの疑問に行き着くとは、やはり優秀な方のようですな。我らも調べましたが未だに証拠は見つかっていない」


 老人の眼光には光があった。欲しい答えをスラスラと見出した蕭何にとても感心しきり手の内を明かしてくれた。


「まぁ、証拠は見つかっていないが…思考を巡らし答えを一つ一つ潰していけば、自ずと答えはわかるがのう。…童、お主にはわかるか?」


「…ふぇッ! ぼ、僕ですかッ!?」


 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。な、何で僕? うーん…多分、試しているのかな? 僕がどこまで理解力があるかを知りたいようだ。


「えーっと…まず、王国は違いますね。王国には偽りの税を献上しているようですから、国にこっそり納めるなんて考えられません」


 ひとまず前提として考えから外すべき答えを述べた。共通の認識を踏まえながら、一つずつ答えを絞りつつ思考に試行を重ねる。


「次に証拠という点で考慮すると、大量の食糧を隠しておくなんて簡単ではありません。この領内で他に食糧を保管する場所がないという情報を踏まえますと、他の…それも国に見つからない場所に置いているでしょう」


 自分で話していくうちに、靄がかかっていた見えない答えに少しずつ輪郭が帯びてくると同時に…何だか嫌な予感が浮かび始める。


「商人…を通して売る事も出来るでしょう。ですが、自国内の商人達に対して売ってしまうと国内の流通の変化などから、国に勘づかれる危険性が高まってしまうでしょう。つまり…」


 言うべき答えは鮮明になった。だけど、その答えを口から出すのが恐ろしくなってしまう。

 それが指し示す恐怖というのは…シャルルの、いや…僕達の立場を脅やかすものだから。




「つまり……この土地を治めるアルデンヌ侯爵は国境という領地を利用して、食糧を…帝国に流していた?」





 麻袋に詰められる重量を60kgとしたのは、コーヒー豆を詰める麻袋のサイズを参考にしました。

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