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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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三傑の英雄 蕭何 劉邦との出逢い 三

「な、何だあの軍勢はッ!! こんなに多いとは聞いていないぞッ!! 蕭何…貴様、もしや謀ったなッ!?」


「何を仰せなのでしょう、県令様?」


「貴様は劉邦の手勢を引き入れ、私の首を取ろうというのが実のところなのであろうッ!! …こやつを殺せッ!! こんな者を生かしてなどおけんっッ!!」


「け、県令様っ! それはなりませんっ! 蕭何殿は民からの信頼も厚い御方ですっ! もしここで蕭何殿を殺してしまえば、間違いなく民は県令様を討とうと動きましょう。気をお鎮めになられて下さいっ!!」


 結局、私は県令に殺される事はなかった。周りの者達の取りなしで、なんとか県令の怒りを抑えられた。だが、不安だけが残った。

 “この男ではダメだ”。誰しもの心中に浮かび上がったのは共通の一つの感情であった。

 我々の上に立つ者に求められるのは、城内の皆を率いるだけの能力と人望が必要だ。不安な情勢下にあって多くの者を安心させられるだけの器量がなければならない。


「…蕭何殿、貴殿が皆の上に立たれてはいかがであろう?」


「私には無理だ。内なる事には励めても大衆を率いる軍事の才覚はないからな」


 それに…責任を取らされる立場になどなりたくない。もし反乱が失敗してしまっては、首魁たる者は間違いなく命がないだろう。この場に集う者達の中に自分がそのような立場になりたいなどと名乗り出る者は一人もいなかった。


「アイツしかいないか…今日の夜にでも城を抜け出し話しをつけてこよう。曹参(そうしん)、共に劉邦の元に行こう。アイツに我々の大将になって貰うのだ。いい御輿になってくれるだろう」


 夜が深まるまでの間に城内の有力な権力者達にも話しをつけ、劉邦を迎え入れるための前準備を整える。

 城門を固く閉ざされ、劉邦の手勢も外で待ちぼうけをくらっていた。夜陰が深まる頃にこっそりと劉邦が休む陣営に近づく。


「こんな夜分に誰だッ!? 頭の元へは近づけねーぞッ!!」


「蕭何と曹参だ。劉邦に逢いたい、案内してくれ」


 顔見知りばかりの者だったのですんなりと劉邦の元へと案内され、篝火(かがりび)がひときわ燃え立つ場所に彼はいた。珍しく静かにただ一人で火を眺めていた。


「劉邦…私だ」


「……うん? 蕭何殿に曹参殿? こんな夜遅くにいかがされた? それに何だ、あの昼間の仕打ちは…。なぜ俺達は外で待たされなきゃいけねーんだ」


「それがなぁ…県令様がどうも君達の軍勢を見て恐れたようでな。君が県令様を殺そうとしていると、そして私も君のグルだと思い違いをされてな」


「はぁ? 何だそりゃ? んじゃあ俺達はまた山に帰っても良くなったのかい?」


「それはダメだ。ここで我らも明確な態度を示さねば反乱軍はじきにここにも兵を向けてくるだろう。そうなればこの地は灰燼に()してしまう。君の家族や友人とて無事では済まなくなる。無論、我々もだ…」


「それじゃあ…どうしろって言うんだ?」


 



「劉邦…君が立ち上がるんだ」





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