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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第一章 “歴史を紡いではならない”
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夢からの目覚め

「うっ、うぅぅん...」


 またあの夢だ。

 もう何度となく繰り返された日常の一コマと化した夢。


 この世界に来てから前にいた世界でも見たことも願ったこともない夢幻の夢。

 自分の記憶と感情が一切反映されない誰かの想い。


 自分に関係のない夢だけに最初の頃は何かの啓示か! 

 …ってビクビクしながら生活してたけどもう慣れたもんだ。


 うぅぅ...とうなされながら起き上がり、次にはこの言葉をかけられる。


「大丈夫か。今日も酷くうなされてたぞ」


 父のバータル。

 日本人っぽい顔立ちと肌色で、なおかつ黒髪なのに名前がバータルなのは、物凄い違和感ありありだ。

 だけど、日本人の一般的な男性よりも体格がよく、がっしりとした健康的な身体をしていて、見た目は威圧的で怖い感じがするが、見た目に反して穏やかで温厚な性格をしている。

 こんな風に、この酷い夢を見た時は心配してくれる優しい父さんだ。

 ふと廊下から響いてくる声が届いた。


「二人共ご飯よ〜。カイは顔を洗ってから来なさいね」


「「は〜い」」


 父さんと一緒に良い返事をしすぐに行動に移す。


 声をかけてきたのは母のセオラ。

 いつも温かい雰囲気を纏った優しい母さん。ただし、怒らせると父さんよりも恐い。

 母さんは金髪に西洋人のような顔立ちをしていて肌も白い。

 息子の僕が言うのもなんだが、顔がとても整った綺麗な人だと思う。


 両親の顔立ちが違う事から、異国間の国際結婚が認められた世界なのかと思ったがどうも違うらしい。

 村の人達も東洋系、西洋系、中東系等々、本当に多民族だ。

 こんな小さな村で色んな人種の人がいるのだから、国全体が大きな多民族国家なのだと思う。


 これはまだ僕の推測だけど、これだけ色んな人種の人が一つの村にいて民族を尊重し合える文化があるのだから、ある程度発達した国なのだとは思う。

 他民族同士がお互いを尊重出来るようになるためには最初はお互いを受け入れ難いこともあり、かなりの時間が必要だ。歩み寄るための時間は膨大な時間となる。


 このことを踏まえこの小さな村一つだけを考えてみても、人種差別や偏見などは見られない。

 ある意味平和的な環境であるとも言える。

 まあ、後程触れるがあまりこの国を取り巻く状況は良いとは言えないので、文化が進んだ国であるとだけは、なんとなくだが感じている。文明は発達していないけれど…。


 僕の家は村の郊外にあり、家の近くには隣の国との国境になっている、大きな川が流れている。この川から水を毎日汲んで来て、家の炊事や掃除に使ったり、もちろん生命線となる飲み水にも使っている。

 川沿いに家があるので本当に便利だ。動線が短く済むので時間も有効活用出来る。


挿絵(By みてみん)


 日本にいる頃は上下水道が整備されていて、蛇口を捻れば水が出てくるのが当たり前だったことを考えると、以前の自分が生まれた時代は恵まれていたとつくづく感じる。


 ただ、不便な生活の中にも日本にいた頃には味わえなかった特権があるっ!


 僕は母さんに言われた通り顔を洗いに行く。

 そう、この大きな川で顔を洗うことが出来るのだ。

 朝の静かな時間と共に川も穏やかに流れており、冷たい川の水を手で(すく)い上げ、自分の顔をその水で豪快にバシャバシャと洗う。


 …いや〜、凄くスッキリするっ!

 これをする事で気分が高揚しつつ、一日の始まりだと身体と脳が活性化される。

 今では立派なモーニングルーティンだ。


 僕が顔を洗った後、再び静寂が訪れせせらぎの音だけが辺りを包む。

 その川の水面には僕の顔が映り、久しぶりにマジマジと自分の顔を眺めてしまう。


 女の子としか思えないよ…。

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