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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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転生者の条件 六

「“想い“…”揺らぎ”……」


 ただ、言葉を反芻(はんすう)する事しか出来なかった。自分の置かれている状況を理解しようと脳が必死に思考に試行を重ねていた。

 どうして赤子として転生した僕達は、子供時代をもう一度繰り返すような経験をしなければならないんだろうか……。

 何でここまで感情を…掻き乱されなければならないのか……。


「同じ転生でも我々の転生とは随分と違うのですね。そこまでの違いがあるなんて、何か理由があるのでしょうか」


「理由ねぇ…さっぱりわかんねーな。当人である俺達がわかってねーんだ。きっと、わかる奴なんてそうそういねーだろうな」


 理由を探ろうとするズゥオさんを突き放すように、半ば諦め気味にヨゼフは長い溜息を吐いた後に意見を述べた。

 とても正論であり、それがこの場における僕達の考え抜いた帰結となる答えでもあった。その呟きを皮切りに終息への雰囲気が漂う。


「ま、そうだね。その通りだよ。これ以上議論を重ねたところで、正しい答えは今の段階では得られないだろう。カイ君の転生とシャルル様の転生の違いなんて、どっちが正しい転生の在り方かなんてわからない。そもそもが正しい転生なんて我々も知り得ないんだからね」


 意見を纏めたクワンさんは、最後に僕の方を向いてこう言った。


「そう落ち込むな…カイ君。この世界にはまだまだ謎が多い。魔法なんてものもあれば沢山の種族もいる。同じ(くく)りで判断など元から出来ない世界なのだから。とまぁ、ファン君の知りたかった転生者について、かえって謎を深めた結果になってしまったね」


「だ、だ、大丈夫だ。な、な、なんとなくわかった。ち、違う世界から来た者で赤子であったり大人の姿で現れるとわかった。も、もしかしたら私にもその可能性があるとも」


 ギュッと握った拳を見つめ、自分の持つ可能性を信じているようにも見えた。きっと、彼は自分の抱く病から生まれる悩みに打ち克とうとしているようにも見えた。


「少しは自信に繋がったようで何よりだ。……今日はもう寝ようぜ。流石に魔物を相手にしたりで疲れちまったよ。明日も早いんだしよ」


「何じゃ? まだ呑みたりんじゃろう? せっかくファンも新しく仲間に加わったというのに」


「もう十分呑みましたよ、キャロウェイ。それだけ一人で飲み干しておきながらまだ満足でないと?」


「"弔い酒は仲間のために大いに呑み、祝い酒は仲間のためにしこたま呑め"とドワーフでは言われておる。まだまだ呑み足りんくらいじゃし、ファンのためにもっと呑まなければドワーフの名が(すた)るもんよ」


「それって呑むための口実じゃねぇのか? いつでも呑むぞって」


「…ッ! そ、そんな事は…」


 ハイクの質問に"そんな事はない"という一言が喉から出る事は待てどもなく、正直者なキャロウェイお爺さんの健気な反応にみんなの笑い声が聞こえてくる。そこには僕の笑い声は含まれてはいなかった。


「大丈夫ですよ、キャロウェイさん。きっとジャン・ド・パラド伯爵の所にもお酒はあるはずです。そこで少しは御相伴に預かれましょう」


「少しどころか三樽呑んでも満足しねぇだろうよ」


「おい、ヨゼフっ! 儂とて三樽は遠慮するぞっ! せめて一樽くらいで…」


「キャロウェイ君。きっと君は二度と伯爵のご招待に預かれないだろうね。私が伯爵なら間違いなくそうする」


「そ、そんなぁ〜」


「「「「「ぷふふ…あっはっはっはっはっは!!」」」」」


 抑えきれない笑い声は焚き火を囲う絵によく似合っていた。やはりその絵の中で僕だけは浮いて見えていた事だろう…。


「どれ…そろそろ寝ましょう。今日は大人である我々で寝ずの番を交代で行いましょう。皆さんはぐっすりと寝てお休みになられて下さい」


 大人達は小さな輪を作って話し合いを続行し、本日の野営時の番を決めるようだ。


「さて、ボク達は大人達に甘えて早く寝ましょう」


「そうね、今日も疲れたわ〜」


「だな。早く寝ようぜ」


 一人が大きな欠伸(あくび)を上げると、伝染して全員が眠そうに欠伸を上げる。もちろん僕以外がだ。

 黙ったまま僕もみんなの後ろについて、そのままみんなと同じように地面へと横たわる。


 大人達が話す焚き火からさほど離れない距離で、ばちばちと火の()ぜる焚き火の音を聞きながら、眠れそうもないまま目を閉じたのだった。



 だいぶ間が空いてしまいすみません。忙しくて書く時間がありませんでした。

 なるべく書きたいのですが今週も忙しくなりそうです。出来る限りは短くても頑張って書きたいところです。

 お待たせしてしまい恐縮です。

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