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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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転生者の条件 三

「そこまでして…お前は国を守りたいのか?」


「当然ですよ、ヨゼフさん。きっとそれがこの世界での私の役目なんですから」


「そうか……なら、どうやらお前との間で交わした“宣誓の儀”の上書きが、後日必要になってきそうだな」


「……へ?」


 そう言ってヨゼフはドーファンの前に膝を着いて屈み込むと、臣下の礼を示しこう宣言した。


「我が名はヨゼフ・バッセベテ。今はギルドに忠誠を誓う身ゆえに、すぐに王にお仕えは出来ませんが、必ずやシャルル王のためにこの槍を振るうと誓う。……今はひとまずこんなもんだろうな」


「…い、いいんですか? 貴方はその、前の世界で仕えていた主にとても想い入れがあるようだし、こんな“ボク”なんかで……」


 さっきまで格好良く“私”などと一人称を使っていたけど、動揺の余りにいつもの“ボク”に戻っていた。

 やはり聞き慣れたドーファンのボクの方が素の姿っぽくて好きだ。

 

「“ボクなんか“じゃない。”お前だからだ“。……俺が今回の任務を引き受けたのも、この国を守るためにってのが目的だった。それがギルド長との取引だったしな。俺は帝国のやり方は好きじゃねーし、この国の民が好きだ。もう、王都の奴らには顔馴染みが沢山出来ちまったからよ。何より…お前が誰よりも”国を想う“奴だって知れたからな。お前はそんなに自分を犠牲にすんな、ドーファン。お前には俺がこれから付いていてやるからよ。かのダビデ王に仕えたヨゼフがな」


「…ダビデ? ……ッ!! えぇッ! ヨ、ヨゼフさんってあの“ヨセブ”ですかッ!? あの三勇士のッ!? わわわ、ど、どうしよう…今まで大変な無礼を…」


「ドーファン。ヨゼフが賊をやっつけた時に僕がテンション上がってせっついていたの見てなかったの?」


 意外な反応だった。ドーファンは僕がヨゼフのフルネームを言い当てたのを聞いていなかったのかな。


「だ、だってあの時はヨゼフさんの槍の凄さに呆然としてしまったから…。カイとヨゼフさんのやり取りは何か言っているなぁ程度に聞いてたし、その後すぐにズゥオさんが現れたしね。それにボクのいたフランスでは三勇士の筆頭は”ヨセブ”とか“ヨセフ”って伝わっていたし…フランス語ではそもそもジョセフだしね」


 そうだ。ヨセブ又はヨシェブが残された聖書の記録であったと僕も記憶している。

 歴史を辿るにつれて発音の仕方や本来の名前の呼び方が変わったのだと勝手に解釈していた。ドーファンは以前の記憶からの固定概念に囚われていたようだ。

 ジョセフか……。いいや、今は変な考えはよそう。あれもあくまで僕の予想に過ぎないし…。


「ジョゼフ? 不思議な呼び方もあるもんだな。俺は…ヨゼフだ。正真正銘のな。とりあえずはお前に本格的に仕えるのはギルド長と話してからだな。しっかりお前が説得するんだぞ。アイツはかなりの知恵者だから厄介だ。頼んだぜ、我が主」


「えぇ〜ッ! そんなの聞いてないですよッ!!」


「今、言ったからな」


「「「ぷふふ…あははははっ!!」」」


 困り果てた少年の姿に笑いが込み上げ、次第にその声は大きな合唱のように盛大に楽しい声で響き渡った。ひとしきり笑い合った後に彼は切り出した。


「た、た…楽しい時に悪いが、結局は私はや、やはり転生者とやらなのか? そ、そんな自覚はないんだが…」


 そうだった。すっかり本題を忘れていた。ファンさんがきっかけでこの会話を始めたんだったっけ。


「多分ね。君の能力はずば抜けているし、とても優秀だと肌で感じれる。何よりさっきのあの挨拶は、私やズゥオのいた地域の独自の挨拶だ。この世界ではあんな挨拶をする人はいないしね。君は間違いなく転生者だよ。ただ……」


 クワンさんは一呼吸置くと、神妙な面持ちで彼への疑念を語り出した。


「君についてわからない事が二つある。一つは、赤子の姿でもないのに自分が転生者かどうかもわからない点だ。私、ズゥオ、ヨゼフ君はいずれも大人の姿で転生を果たしたが以前の記憶を有している。それなのに君は自分がわからないと言う。…まぁ、これについては私の推測だが、君は何か強いショックを受けたのだろう。以前の記憶を遡ろうとした時に身体が大きな拒絶を示したからな」


 うん…僕も同じ見解だ。きっと彼は何かの出来事がきっかけで記憶を失ってしまったのだろう。さっきの反応は脳が想い出そうとする彼を制止、想い出してはいけないと彼を守っているようにも見えた。


「二つ目は、こうして今も君は我々と会話をしている。…もう、ここにいる全員はわかっているだろう? 散々君達が犯した失敗だ。そのせいで私とズゥオにもバレたんだからね。………君は今、我々の話している“帝国語”で会話をしている。それから君は、あの村人の罵声の内容も理解し、カイ君が必死に君を守ろうと村人に向けて話した“共通語”もわかっていた。これはつまり…君がただの記憶喪失者ではない事の裏付けだ。君はどこかで間違いなく二つの言語を学ぶ機会があった。つまり君は…つい最近に転生してきたという訳ではなく、言語を学ぶだけの期間をどこかで過ごしたという証明でもある」



 ヨゼフの示した臣下の礼について、全く資料が見つかりませんでした。


 当時の人々が王への忠誠を誓う際に、どんな儀礼に則ったのかについて調べたのですがわかりません。


 資料を見つけたら後日、詳しい描写で書き換えておきます。

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