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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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転生者の条件 二

「一番…」


「…活躍出来た時……」


 想うところがあったようで、僕の台詞を繰り返すと共にそのまま黙り込んでしまった。

 それ以上、言葉を発するのも忘れてしまったように忘却の彼方に想いを向けている。それはかつての彼らの栄光の日々を綴られた心の中に眠る手記をパラパラと捲るように、一点を見つめたまま(しばら)くの間は茫然としたままだった。


「カイの推理は正しいのではないかとボクも支持します。きっと、大人の状態での転生はそうなんじゃないかとボクも考えていました。恐らくですけど…これにはきっと何か理由があるのではないかと思います」


「理由って何だ? 大人のままにこの世界に来る理由か?」


「ううん、違うよハイク。一番活躍出来た時の身体で転生を果たす理由さ。ただ…その理由までは全くわからないけど」


 沈黙を振り払ったドーファンも同じ考えで、同じ帰結にまで辿っていたようだ。

 そう、理由がわからない。なぜ全盛期の状態でこの世界で再び生命を賜わるのか。

 そして、何よりも違うのは…


「ドーファンはこの国の王様だよね? って事は君の場合は僕と同じなんだよね?」


「うん。ボクはこの国の王室の子として転生を果たした。つまり、転生にはボク達のように赤子の状態で生まれてくる場合もある」


 全盛期の状態で生まれてくるのに対し、無防備な赤子のままに生まれてくる場合がある。

 これ程の違いは何だ? どうして僕とドーファンは赤子のままに生まれたんだ。


「カイは自分が転生者っていつ気付いたの?」


「………え?」


 言われている質問の意味がわからなかった。気付くも何も……


「何を言ってるの、ドーファン? じゃ、じゃあドーファンは自分が転生者だって気付くきっかけがあったの?」


「…うん。ボクのこの世界での父親、つまり先代の父王が死んだ時さ」


「…あ、ご…ごめん」


「大丈夫だよ、気にしてない。……ボクはこの経験を通してわかった事がある。恐らくだけど、自分が転生者だという自我が芽生えるためには条件が必要なんだと思う」


「興味深い見解ですね。ぜひお聞かせ願いたく」


 咄嗟に非を認め謝った。“きっかけ”と呼ぶくらいだ。それだけの理由があるという裏付けであっただろうに思慮が足らなかった。

 ……だけど、僕にはそんな“きっかけ”なんてなかった。だからこそドーファンの説明をもっと聞こうと心動かされる。

 自然と前のめりになって聞こうと全員がドーファンの話しにより一層耳を傾けた。


「強大な影響…言い換えれば、こちらの世界に転生する以前の自分が経験したような大きな衝撃を受け、初めて自分が転生者だと自覚するんだと思うんです」


「…父王の死がドーファン様にお辛かった、と」


 声音は気遣っていた。いつものような粗さはなく静けさと柔軟性を舌に乗せて、クワンさんは察したように言葉を捻り出す。

 ……だが、違った。ドーファンは目を瞑ったまま首を横に振り、真っ正面から否定した。


「確かに…父親の死への悲しみはありました。ですが…その悲壮感がボクを…“私”が転生者だと気付かせるきっかけではなかったのです。父の死…つまりそこには、“王位継承”という忘れもしない特別な瞬間を彷彿とさせ、この問題を意識した途端に忘れ去られていた記憶が全て呼び起こされたんです。私が本当は…誰であるかという事を」


「ドーファンにとって…それは大事な問題だったの?」


「はい、イレーネ。まだみんなには私がどんな生き方をしてきたかを話してませんでしたが、少しだけお話ししましょう。以前の世界で…私は生まれた時から周囲の人々に期待されていたにも関わらず身体が弱かった。父の望むような騎士としての強さを得る事も叶わず、初めての戦場で敵国に大いに敗れました。その時、父は捕囚の身になり、私は仕方なしに王という立場に即位しました。国を、多くの者を導かなければいけなくなって…“人々が想い描いた人々の求める英雄”になる決意を抱いたのは、“王位継承”という問題に直面したからです。私にとって人生の分岐点であり、ドーファン………いいえ、シャルルという人間が確立された瞬間でした」


「………ドーファン、お前…」


「だからこそ…私がこの国の王室として転生したのは“運命”であると想ったんです。きっと…この世界で再び生命を授かったのは意味がある…“お前にはもう一度、人々の望む英雄”としての役割を託すという天命である、と…。それらをこの世界での王位継承問題と共に想い起こされ、決意を胸に抱く事が出来ました。“この国を守ろう”と」


 真剣な眼差しの中には確固たる意志が秘められ、それが簡単に揺らぐものではない事は誰の目にも明白であった。


 一人の英雄の姿が…確かにここにある。




 次に出そうと考えていたある場面について、全く資料が見つからないので詳しい描写は省いて書かせて頂きます。

 予めご了承頂きたいと思います。


 一応調査は継続しますが、詳しく判明するまではそのままの文章で掲載予定です。


 次も転生者の条件です。

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