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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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兵站 二

「……す、凄いですね。誰にも言っていない本当の狙いを指摘されるとは…」


 口では言葉を並べて称賛を贈るが、心臓の音は暫くの間は止みそうにない。見事なくらいに僕の真の目的を言い当てられたのだ。焦燥が訪れるのは必然だった。


 来たるべき戦争に備える上で、兵站を整えるのはとても重要だ。クワンさんに対して、戦争で最も大事なものであると宣言する以前から、一切変わらない不変な真理とも考えているくらいに。

 兵站を意識する上で、滞りなく兵糧を供給するシステムを構築したとして、その後の実際の戦場ではどうだろう。調理をする時間や場所の確保も考慮すべき要因になってくる。

 軍の移動や戦場での戦いでの兵の疲労を考えた時、調理をする時間を短縮するなら体力の温存にも繋がる。

 また、砂漠などの資源物質が少ない地域で、鍋を吊るすだけのそれなりの木を探したり、鍋を置くための即席の石窯の原料となる石を見つけ出すのも至難の業だ。

 鍋での調理に拘ったのも理由がある。最悪の場面を想定した時、兵糧が少なくなってきた際には鍋の中にお米と多めの水を入れて炊けば、ファンさんに提供したお粥も作れるからだ。水でふやかせば腹持ちも良くなるし、温かいものを食べれば戦場では大きな活力を生む原動力にもなる。

 食事は兵站の一部でもあり戦いの基本そのもの。兵站のしっかりした軍は歴史上においても強かった。古代ローマは兵站で勝った軍隊とも言われていたし、古代ローマを参考にした中世の北方の獅子王もいた。

 

 それらを踏まえた上でこの人は指摘したのだ。

 農耕への知識だけでなく、軍事的才能の片鱗が影から姿を覗かせている。

 つまり…軍への運用にも理解のある人物であると示唆している。この人は一体……。

 

「……どうやらなかなかの慧眼をお持ちのようですね、ファンさん」


 ドーファンも彼の秘められた能力の高さにすぐに気付いたようだ。それはクワンさんも同じようだった。


「なるほど。これは逸材だ。神の巡り逢わせというところかな」


「あれ? クワンも神様を信じているのか?」


「…ただの言葉の綾だ。そんな気分になってもおかしくない出逢いだろう?」


 ハイクは何気なしに聞いたつもりだったのだが、クワンさんは軽く返事をあしらってファンさんを見つめ直した。


「どうやら君はなかなか鋭い視点で物事を見れるようだ。……率直に聞こう。君は転生者か?」


「て、て、転生者……。わからない…それは一体何だ?」


 真顔で彼は質問に質問を返した。嘘偽りない反応のようで、さっきまでの的確な反応は見られなかった。


「…野暮な質問だったかもな。忘れてくれ。とりあえずは…ね。………さて、そろそろご飯も出来る頃だろう。少しは友好を温めたんだ。さらに友好を深めるべく食事を共にしようじゃないか」


「…ッ! あ、ありがとう…。受け入れてくれて。あ、貴方には何だか…と、とても頭が上がらない気になってしまう。何でだろう……」


「フッ…それはこうあれだよ、私の中から溢れる知性が君を魅了しているからだろうな」


「まーたクワンったら調子にいい事を言ってるんだから! 行くわよ、ファン。貴方はもう…私達の仲間なんだからね。一緒にご飯を食べましょ」


「あ、う、うん」


「こらっ! せっかくの私のいい場面を奪い獲らないでよイレーネ! …あ、ちょ、勝手に行くなーっ!」



なかなか投稿出来ず申し訳ございません。

次は食事風景を少しばかり挟みます。

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