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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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“尽忠報国”

「ズゥオさんはパラド伯爵と知り合いなんですかッ!? 」


 続け様に新たな情報が出てきたので、状況整理のためにもすかさず質問を繰り出す。


「ねぇ、ドーファン。ここの領地を治めている伯爵様って…」


「…っ! あぁ…ごめんよ、カイ。話しについていけなかったよね。……ジャン・ド・パラド伯爵。ここの領地、つまり帝国と接する領地の一つを治める貴族の一人だよ。そして、数少ないボクの味方の一人だ。まさかズゥオさんが知り合いだったなんて…」


「私が知り合いだったのではありません。クワン様が知り合いなのです。私はクワン様の護衛として付いて来たに過ぎず、そのままパラド伯爵様を頼ってこの地に落ち延びたのです」


 何とも意外な繋がりが明かされていく。

 まだまだズゥオさんは語るのをやめない。


「カイ殿はご存知ないかもしれませんが、帝国と王国、他にはドワーフの国と接する位置にネヴァードマイン公国はあったのです。パラド伯爵様とクワン様は隣国同士で外交上の付き合いが以前からありました。国同士の付き合い以前に、領土上のやり取りは少なからず生じます。その際の伯爵様の手腕と人となりを観て、クワン様は有事の際は王国に亡命しようと以前から考えていた様です。現実になるとは思いもしませんでしたがね……」


 なるほど。クワンさんが認めるという事は優れたの人物のようだ。

 それにドーファンを理解してくれる数少ない理解者の一人。

 自ずと逢ってみたい気持ちは高まっていく。


「そんな繋がりが…。でも、ズゥオさん。そんな大事な内容をペラペラと語っていいんですか? ましてや貴方が主と(あが)めるクワンさんの断りもなしに」


 後でクワンさんが知ったらガミガミと文句を羅列して呪文のように唱えてくるだろうな。

 想像に難くない情景が、瞼の裏で勝手に演劇を始めてしまう。


「ご心配なく。クワン様とも最初からその様に約束しておりました。……───王。いえ、ドーファン殿とこの場ではお呼びした方がよろしいでしょうか?」


 突然ズゥオさんはドーファンの呼び方を確かめた。

 その約束とドーファンに何の関係が…


「どちらでも呼びやすい方で構いません。ボクはどちらの名も背負って生きていくと決めているので」


「……立派な(こころざし)です、ドーファン殿。これだけの方に就寝前に偉そうな事を語ってしまい、お恥ずかしい限りです」


 面映(おもはゆ)げさを()っすらと浮かべ、それを照れ隠すように小さく微笑んでいた。

 

「そんな事ないですッ! ボクはズゥオさんみたいな立派な英雄ではありません……あの言葉は胸に響きました。今のうちに頑張るのを慣れるように…って。せっかくこの世界で新しい命を得られたんです。前向きになりたいと励まされました」


「…私の中では貴方の方が立派な英雄だと認識しております。先程の話しを伺っていると、貴方は命尽きる時まで国のために尽くしてこられた。私などとは大違いだ……」


 苦汁を()めたような表情だった。

 とても苦々しい気持ちが込み上げている心情を読み取れてしまうくらいに、悔しそうに奥歯を噛み締めていた。

 

「失礼。私は以前の世界から…一つの(むね)を守り抜く事を自分の中で決めていました。しかし、前の人生でも…この世界でも…未だに果たす事は出来ていません。クワン様に対し、この国に逃れる前に私はこう言いました。“私は今度こそ…仰ぐべき旗を自分の目で確かめさせて頂く”…と。……私が望むのは“尽忠報国”。ただそれだけなのです」

 



 王国の爵位持ちの貴族は“──・ド・──”で統一させて頂きます。

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