謎の解明 五 石鹸
ここまで僕の望んだ流れであり、ドーファンの目的とも合致している。
あの村で決意した想いは未だに変わりない。
告げる唇に迷いはなかった。
「軍事でのアドバイスをってドーファンも要望していたけど、実は僕も望みがある。もし、帝国との戦争が決まった時、僕も最前線で戦わせて欲しい。そして、軍においての発言力を高めさせて貰いたいと考えているんだ。来るべき日に備えるためにも、実績を表明出来る機会を与えてくれないかい?」
「えぇッ!!? カイは戦うつもりなのかいッ!? …うーん、ボクの考えでは…あくまでカイにはボクのそばで助言をくれたらと思ってたんだけどなぁ…」
どうやらドーファンの想定とは違ったようだ。
ははーん…なるほどぉ……。ドーファンは僕の助言は欲しいけど、権力まで持たせる予定ではなかったんだね。
そこまで望んでいない理由、望めない理由もわかる。
「まぁ、無理なお願いだってのはわかるよ。ドーファンの派閥はそこまで権力もないって言ってたからね。そもそもの政治的・軍事的な発言力も小さいだろうからね」
「…ぐふッ! い、痛いところを鋭く突くねぇ…。その通りなんだけども。ボクの予定ではカイの考えた人々の生活に役立たせる物を流通させ、経済を活性化させ、政治的意見の力を高めた上で、その次に軍事においても発言力・影響力を向上させたかった。まずはやはり国の資本を潤してこそ、貴族達は王たる権威を認めるからね。政治における実績が不可欠なんだ。そのためにも貴族達への根回しは重要だ。ゆっくりと自分達の派閥に組み込ませ、他派閥の力をじっくりと削いでいく。それからようやく軍の方にも力を及ぼせるだろうね。だから軍に関わるのは当分先になるかなぁ……って。」
「……けど、その頃には帝国に攻められているんじゃないかな。僕はその前に軍においての発言力を得ておきたいんだ」
「……うぅぅ…その可能性は否定出来ない。だけど…それなら何か別の方法がカイの中にはあるのかい?」
大まかにはドーファンと同じ考えだ。商業において国内の影響力をもたらすのは重要だ。
支持基盤を得るのに必要なのはいつだってお金。
多くの者の利益に繋がるお金を生み出さなければ支持は得られない。
貴族のしがらみの中にあって協力を得るには、いつの時代もいかに国全体や貴族にとっての利をもたらすかだ。
これは無視する事の出来ない鉄則だ。なら、ドーファンの持つ影響力を有効活用するしかない。
「簡単だよ。ドーファンが広告塔になってくれればいいんだ。僕の考えた物を使ってくれたらそれでいいんだっ! それも、みんなに気に入って貰える物を造ればこの上なしだねっ! そうすれば多くの人は、“王様も使っている”っていう謳い文句に靡いて買ってくれると思うよっ! 曲がりなりにもドーファンは王様なんだよ、この国で一番偉いんだよっ! 少なくとも興味は持ってくれる事間違いなしだよっ!」
「こ、広告塔? うーんと、つまりボクが宣伝材料になるって事かい? ……なるほど、それは考えた事がなかったな…。で、でも…それにはまずは何を造るかを早く決めなくちゃ。カイの望む早々の段階で軍での発言力にはとても…」
「それなら一つ目は決めてあるよ」
「……へッ!!?」
ドーファンは思いもよらなかったのか、驚きのあまりあんぐりと口を開けながら呆けていた。
「カ、カイは一体何を造ろうって言うんだいッ!? 一体どんな物を…ッ!?」
今度は興味津々になりながら前のめり気味に尋ねてくる。
僕はこの旅で触れてきた記憶を思い出しつつ、これまで触れてきた物を思い起こし、その名前を口にする。
「"石鹸"だよっ!」
少しずつ内政要素が出てくると思います。




