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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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謎の解明 四 発想の転換

「ご名答。活躍という程ではないんだけど、どうかボクの近くでカイ達には補佐をして欲しいんだ。ギルドに所属し任務をこなしつつ、ボクのそばでアドバイスをして貰えたらなぁって。特にカイは転生者で知識も見識も深いと見れる。その知恵も大いに有用なものだ。色々な面で助けて貰いたい。政治的・軍事的な面で」


「うーん…それって大丈夫なの? ギルドに所属しながらもドーファンの手助けをしてしまったら、内政干渉にならないかい?」


 中立を旨とする人物が組織するギルドに加入しながら、王国内の政治や軍事に関わってしまうのは不味いと思うし、今までのヨゼフやドーファンの話しを聞く限り、ギルド長という人はそんなの許可しないだろうね。

 僕としてはヨゼフへの感謝の気持ちも強いし、そのヨゼフを裏切るに等しい行為はしたくない。

 けど、友達であるドーファンの助けになりたいのも本当に心から願っている。

 さて…どうしたものか……


「ふふふ、それに関してはボクにも考えがある。……カイ、君がボクの事を支持する考えを表明してくれればいいんだ。そこに駆け引きの材料が生まれる。ヨゼフさんも君を高く評価しているだろうしね」


「支持する? ……ッ! なるほど! 流石だね、ドーファンっ! 君の狙いはボクが君を支持するのを大前提にヨゼフの面目も潰さないように配慮しながら、ドーファンの補佐を軸にギルドに加入させて貰おうって魂胆なんだねっ!」


 ドーファンの策はこうだ。僕がドーファンを支持する、つまりドーファンに付き従いたいという気持ちを前提を掲げつつ、ギルドには仕方ないけど加入してあげるんだぞと、一種の脅し(まが)いの交渉をしようって訳だ。

 ヨゼフは場合によっては僕を殺せと任務を託されていた。しかし、今も僕は生きている。

 まだ利用価値があるとヨゼフが判断してとの弁であった。

 ギルド長はヨゼフを信頼して、その目を信じてそれだけの責任を与えた。

 ならば、実際にギルド長も僕の利用価値を高く評価してくれる可能性がある。

 その可能性につけ込み、僕をギルドに加入させたいなら、ドーファンの補佐を認めてくれないと入ってやらないよと建前を使おうって訳だ。

 基盤となる軸を王国に据えた、まさに発想の転換である。

 しかし、それには僕という一個人の価値を高めなければいけない。

 優秀な人材じゃなければ、そもそもギルドとの交渉のテーブルにさえ着くのを許されもしないだろう。

 多分、それには他の目的も含まれてくるんじゃないかな……


「その通りッ! 実際はヨゼフさんの顔を立てるためにも、ギルドには絶対に加入しなきゃいけないんだけどね。あくまで交渉のための表向きの話しさ。この交渉を成功させるためにも、そして…もう一つの目的の達成のためにも、カイの持っている沢山の知識の価値を飛躍的に高める必要がある」


「……帝国に対する助力の要請ってやつだね?」


「うん…中立を旨とする人物であるから、かなりの事でもない限り聞いてはくれないだろうね。国に組みさない事で世の中の平和の維持に貢献しようとしている節がある。……ならその想いを逆手に取って、平和の利をギルド長に訴えかけるんだ。それには人々の暮らしを豊かにするだけの政策、経済の向上、帝国への対抗策を説く必要がある。…期待しているよ、カイッ!」


「…えぇッ! 何それッ!? 随分と投げやり気味じゃないッ!?」


 全て僕任せにするのはあまりにも責任が重過ぎるよッ! 

 そんなに有益な情報を持っている自信は無いんだけどなぁ…。

 まだ王国の実態を見ていないから何とも言えないし……


「大丈夫だよ。だってカイはこれまでも沢山の驚きをボクに示してくれたし、カイの言った策は有用だ。間違いなく帝国の意表を突く素晴らしい策だ。それにキャロウェイお爺さんが興奮していたように道具の知識もあるようだし、そういうこの世界にはない物を生み出し流通させ、この国における経済的成長を促進させれば、帝国への経済的優位性を確保し、各国との連合を組むための条件も多少は緩和されるだろう。そのために、君の知識とボクが政治に専念出来るようになれば、この国の人々の暮らしは豊かになる。その姿をギルド長に見せつけてやろうっ!」


 にっこりと笑いながら夢物語を語ってくれた。

 ……上手くいく保証なんてないのに、ドーファンは笑っていた。

 未来が確約されている訳でもないけど…何となく上手くいくような気がしていた。


「……わかった。ドーファンを支持するってヨゼフに伝えてみよう。…まぁ、殺されない事を願うよ」


「あはははっ! 大丈夫だよっ! きっとヨゼフはカイの事を気に入っているしさっ!」


「そう願うよ。……さて、こちらの二つ目の条件を伝えさせて貰おうかな」




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