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Spin A Story 〜この理不尽な世界でも歴史好きは辞められない〜  作者: 小熊猫
第二章 “冒険者編〜霞たなびく六等星達を求めて〜”
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マメ? あれ?

第百十七節

「爺ちゃん、よろしくなっ! 俺、まだまだ知らない事ばかりなんだっ! 一緒に旅をしている時に色々と教えてくれっ!」

「私も! お爺ちゃんは物知りそうだから知ってることは何でも教えて欲しいっ!」


 ハイクとイレーネの二人は、早速人懐っこくキャロウェイお爺さんに近づいて、キャロウェイお爺さんに旅の道中での教えを今の内にお願いしている。


 僕とドーファンは、さっきの失敗をした事への思いが尾を引いて、すぐには明るく振る舞う事は出来なかった。


「あぁ、もちろんじゃ。当分の間だがよろしく頼む。ハイク、イレーネ」


 気前のいい返事をしたキャロウェイお爺さんは、ハイクとイレーネに頼られたのが嬉しかったのか、顔を綻ばせながら返事をしていた。


「さて、俺達のやるべき事も決まったことだし、全員食べ終わったな。………ん? カイ、お前それどうしたんだ? 何で食べなかったんだ?」


 そう言われたヨゼフの視線の先には、僕がヨゼフに向かって食べたいと言った心臓(ハツ)肝臓(レバー)、砂肝を残したままだった。

 ちょっと元気はなかったけど、返事だけはしっかりしなきゃ。心配をかけちゃいけないもんね。


「あ、これ? 食べようと思ってたんだけど、ちょっとお腹一杯になっちゃって……。それに、キャロウェイお爺さんの夜のお酒の”(さかな)“にあげようと思ったんだ。さっき言ってたでしょ? “美酒佳肴(びしゅかこう)は月の光と共に”って。なら、このお肉は最高だと思ったんだよね」

「………そ、それを人にやるのか?」


 ヨゼフは明らかにうげぇ〜って顔をしてドン引きしている。いや、多分食べないのヨゼフぐらいだよ? そう思ってたけど、どうやらハイク、イレーネ、ドーファンもヨゼフの反応を観て、積極的に食べたいと言ってこなかった。絶対に美味しいと思うんだけどなぁ。


「む? カイ、それを儂にくれるのか? お前さんも食べれば良かろう」

「でも、この部位のお肉の量は少ないしキャロウェイお爺さんの宿屋でお世話になるから、少しでもお爺さんに感謝の気持ちと思って……それに、せっかくだからお酒と共に楽しんで貰いたいんだ」


 ドワーフっていうからには、お酒も好きなんじゃないかな。この村で“酒も作った“って言ってたし、今でも作ってるんだと思う。宿屋の前に近づいただけで濃厚なお酒の香りが漂ってくるくらいだから。


「ありがとうの。だが、カイが食べようとしていたのに、お前さんが遠慮する必要はない。まだお前さんは子供じゃ。子供は沢山食べて大きくなるのも子供の仕事の一つじゃ。夜のひと時にお前さん達で食べれば良かろう」


 そう言われてハッと気付いた。まだヨゼフに今日の夜の時間についてお願いをしてなかった。


「そ、そうだっ! ヨゼフっ! 今日の夜、僕とハイクとイレーネだけで、ちょっと話し合う時間が欲しいんだけど……」

「お前達だけでか………そうだな。確かにそれは必要な事だな。わかった、それじゃあこうしよう」


 ヨゼフは僕の手元のお皿に残ったお肉を指差して、ある提案を持ち掛けてきた。


「俺とドーファンと爺さんで、カイとハイクとイレーネで夜の食事も別にしてそれぞれ過ごそう。そして、その肉を半分ずつに分けて、食事の後の夜の時間の語らい合いに、それを食べながら過ごそう。少しでも時間があった方がいいだろう?」

「い、いいの?」


 まさかヨゼフがそんなすんなりと受け入れてくれて、その上さらに夜の食事の時間からハイクとイレーネと過ごしていいと許可してくれると思わなかった。

 

「お前達にも話し合う時間が必要だろ? しっかり三人で話しておける内に話しておけ。ただし、風呂に入る時間になったら呼びに行くから、それまでの間だぞ。明日から本格的な山登りだ。それにお前達も疲れている筈だ。……一番疲れているであろう、お前が最も休息を必要としているんだ。それを守ってくれるなら俺は構わない」


 ……バレてたんだね。あのジャイアント・グリズリーを相手に自分の持てる最大量の魔力を叩き込んで魔法を使った事で、ずっと頭がぐらぐらした感じになっていた。

 師匠との修行の時でも出した事がない程の、今までで一番の魔力を一度に使って魔法を行使した。一気に魔力が身体から放出された事で身体に負担が掛かったようだ。


  多分、ヨゼフは僕がジャイアント・グリズリーを倒した後、僕の様子を観てすぐに気付いたんだろうな。あの時、ハイクの弓を僕が持つように指示した事の意味がようやくわかった。あの時点でヨゼフは僕の魔力がほぼほぼ無くなっていた事に気付いていたんだね。

 僕自身もあの瘴気の森から抜けた時、魔法ではなく弓でワイルド・ドッグを倒していった。魔法を軽い感覚で使えない程に、自分の身体が疲弊していたことを自覚していたから、ヨゼフの弓を使えという指示にも快く、むしろ自分から望んで従った。

 ヨゼフは周りのみんなに余計な心配を掛けさせないために、あえて黙っていたんだろうな。こういう一面を見ると、やっぱりヨゼフは指揮官向きだとつくづく思う。


「わかった。約束は守るよ。……気遣ってくれてありがとうね、ヨゼフ」

「いや、俺もお前達に助けて貰っているからな……」

「え? それってどういう…」

「さぁて! それじゃあ、片付けて村長の所に行くかぁ! よし、さっさと片付けて行くぞっ!!」


 僕の質問は無かった事にされ、ヨゼフはそそくさと片付けに入り始めた。……ヨゼフも恥ずかしがり屋だね。

 でも、そんな人間らしいところが、とても魅力的な人だなって僕は感じているよ。




「ふむ、時間は本当に無いようだな……。カイ、お前さんは儂と共に残ってくれ」

「ふぇ? 僕だけ?」


 何で僕だけ残るかな。……あ、そっか。後でキャロウェイお爺さんは僕に教えたい事があるって言ってた。


「ヨゼフ。儂はカイには鍛治について、刃の砥ぎ方について教えてやりたい。この工房が使えるうちに教えておきたい事がある。村長の家にはお前さん達だけで行ってくれんか?」

「別に俺はカイがそれで良ければ構わないけど、カイはそれでいいか?」


 ……そうだっ! せっかくの機会だし作りたいと思ってた物を、キャロウェイお爺さんと一緒に作っちゃおうっ!! 

 僕だけで作るのは少し不安があったから、この機会を逃すのはもったいない。それに、この焚き火場を観て思い付いたアイデアも相談してみようっと。


「うんっ! 僕もキャロウェイお爺さんに相談したい事があったから、是非ご指導よろしくお願いしますっ!」

「お、おう。さっきと大分態度が違うが、まぁ…よかろう。では、食器と包丁等使った物を持って付いて来てくれ。さっきヨゼフが軽く洗った食器も持ってじゃ」

「……爺さん、マメだな。まぁ、あれの方がいいか」

「マメ? あれ? ヨゼフは何を言っているのかしら?」

「さぁ、わからないですね。一体、何をするのでしょうか?」

「ほれ、皆の者付いて来い。すぐ近くじゃ」



 ちょっと短めですが投稿です。


 次に出そうと考えていたある物の歴史を調べていたら、詳しくは言えませんが物語の辻褄が合わなくなるので、まるっきり違う物を使って代用するか等を検討したりさらに調査をするので、少し資料調査に時間が掛かるかもしれません。

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