温度差感じる広場にて
舞台の人たちが互いに魔法をぶつけ合う。
事前に抗魔化をかけていたのか、魔法を受けても平然としている。
短所の指摘と魔法の応酬に、場は少しずつ盛り上がっていく。
状況から判断するに、舞台の上はあの二人に任せているのだろう。
「光撃」
「疾風刃」
光の魔法や風の刃を飛ばす魔法も出て、舞台も観客もヒートアップしていく。
(備えておくか)
私は舞台にいる二人の位置に注視しながら、近くの屋台に抵魔の魔法をかける。
案の定、細雪の魔法が客席に飛び、どこからか風が吹いて吹き飛ばす。
たぶん立会人の男性が風の防護壁を使ったのだろう。
そろそろ終わらせても良いとは思うものの、場がますます盛り上がっていく。
「疾風刃」
この町の風習かと考えている最中、また魔法が舞台から観客席に飛んできた。
防護壁を突き抜け、私のいる反対側の屋台にあたり、屋根がざっくりと切れる。
「浮遊」
私は宙に浮き、観客の頭上を通り抜ける。
「静寂」
屋台の崩れる音を、消音の魔法でごまかす。
客を飛び越え、崩れ落ちた屋台の骨組みに手を当てて私は魔法を使う。
「修復」
屋台は元に戻り、静寂の魔法を解除する。
「治癒」
屋台の売り子さんのケガを治す。
「ありがとうございます」
売り子さんの声を背に視線を舞台に向けると、舞台上に鳥の木像が飛んでいた。
「火炎礫」
鳥が燃え、舞台の奥の幕にあたり、突き抜ける。
「冷水球」
幕が燃え広がる寸前に水球がぶつかり、火は消える。
『あの鳥を捕まえてきます。後をお願いします』
男性の声が聞こえた。
「大地盾」
舞台に駆け寄りながら、客席に飛んできた光の魔法を土の壁でブロックする。
男性が離れたとたん、客席からざわめき声が聞こえ出す。
「ねえ、そろそろ終わりに――」
「うるせえ!すっこんでろ!」
私の声は二人が同時に発した声にかき消され、二人は戦いを続ける。
火の魔法が幕に再度あたり、燃え広がっていく様子を見てどよめき声が出た。
私は水球を出し、幕と二人にぶつけ、さらに魔法を唱える。
――ここにおられる妖精に
混乱してきたこの場所を
落ち着かせてと願います
「妖精依頼」
広場の妖精にお願いして、場と頭を冷やしていく。
詠唱を含めると威力が上がる。ただし、時間がかかる。一長一短といえよう。
「やっぱり、魔法は怖いねえ」
なにゆえに、と出てきた言葉を飲み込み、理不尽さを受け入れる。
戻ってきた男性に報告すると、報酬を渡された。お役御免ということか。