晴れの舞台に影が射す
食事を終え、男性に案内された道で広場に戻る。
屋台が並ぶ道を通り、舞台近くのベンチに腰を下ろす。
「ねーパパ。さっきみたいな魔法が出てくるのかな?」
「どうだろうねえ。楽しい魔法だと良いね」
「魔法って怖いものだと思ってたけど、さっきのでちょっと安心できたわ」
集まっている人たちから、いろいろな声がする。
「うまくいくと良いですね」
「ええ。本当に」
男性はそう言うと、舞台の近くに歩いていく。
付いていこうかと声をかけたら、遠慮された。
おそらく内々で話しておきたいことが、何かあるのだろう。
なにか飲み物でも買ってこようかなと思っていると舞台に二人組が立つ。
お仕事開始と思い、私もベンチを立ち、適当な場所に移動する。
「火炎礫」
「細氷舞」
舞台に上がった魔導士たちが魔法を披露する。
しっかりと練習を積んだとは思うものの、観客の反応は薄くどこか白けている。
(まだ明るいからねえ)
日中なら水の魔法で反射させたり花を作ったりが観客受けは良いと思う。
せめて舞台を薄暗くしようかと、闇の魔法を唱えようとしたら声が届いた。
『見守っててください』
先ほどの男性の声が聞こえる。
『わかりました』
何かあると思った私は、その指示を受け入れ、魔法で言葉を送る。
舞台の人たちは離れたところに音を届ける魔法や木材を呼び寄せる魔法を使う。
観客の反応はイマイチで、昼前の魔法が良かったとひそひそ声が聞こえる。
「そろそろ派手な魔法をお見せしましょう」
舞台の人はそう言って魔法を唱える。
「木像作成」
二体の木像が即座に完成し、場が少し盛り上がる。
「抗魔化」
もう一人の人が木像のひとつに魔法を唱える。
木像があやしく光りだす。
今までの地味だった展開から少しだけ変わった、ように見えた。
「火炎礫」
「細氷舞」
「小石弾」
舞台の人たちが空中に出していた魔法を人形に向かい唱え始めた。
抗魔化がかかった木像は平然としているのに比べ、もう片方はボロボロになる。
「木像さんがかわいそう」
ボロボロになった木像を見て子供の声が叫ぶ。
観客席からヤジや冷ややかな視線が飛び、舞台の人たちはうろたえる。
「だからやめようって言ったんだ!」
「今になって言うのかよ?乗り気だったくせに!?」
舞台の人たちが剣呑となり、お互いに向かい合う。