広場で輝くものたちに
広場の噴水で、私は魔法を使う。
「水魚」
パシャリと水でできた魚が跳ねる。
何回か同じことを行うと、人が集まってきた。
「水魚群」
水でできた小さな小魚が群れを成して噴水から跳ね、また水に戻る。
「たいしたもんだ」
人だかりから聞こえた声に気をよくした私は、青空に向かって種をまく。
「花開花」
種が一気に成長し花となり、人だかりに舞い降りる。
ふと見ると小さな子が空に必死に手を伸ばしていた。
「影人形作」
小さな子の陰からペンギンが出てきて花を渡す。
目を輝かせながら、喜ぶ子供を見て、私もつい微笑む。
頭を下げて、地面に帽子を置くと、硬貨が飛んでくる。
食事代を稼ごうと、大道芸の真似事をしてみたら、結構な金額になった。
(気前のいい人たちだねえ)
私はそんなことを考えながら、硬貨を空の袋に入れる。
「お昼は豪勢に行きますか」
私は広場近くのレストランに向かう。
(ここでもらったお金なら、ここで使っておこう)
この町の人たちが気前よくくれたのだ、気前よく使ってしまおう。
そう考えて、ちょっとお高い店長のおすすめを頼んでみる。
ランチタイムに入ったせいか、お店が混んできた。
店員さんに相席をお願いされ、承諾する。
「腕も気前も良い魔導士さんですな」
一緒の席になった男性に声をかけられてきた。
年齢は青年から中年の間だろうか。なかなかハンサムな顔をしている。
私はマントにローブ、ネックレスを身に着けていて、男性も似た服装。
強いて言うなら、頭にバンダナがあることぐらいで、同じ魔導士と思える。
「実はその腕を見込んで、頼みたいことがあるのですよ」
男性は私と同じ今日のおすすめを頼む。
「頼みたいこと?」
「ええ。この後広場で若手の魔導士が魔法のパフォーマンスをしあうのです」
おうむ返しに聞く私に男性は答えた。
「立会人になれ、と」
「具体的には、その補佐をお願いしたく」
「なるほど。つまりなんかあった時のサポートが欲しいと」
「はい、そういうことです」
旬の野菜や魚を使ったムニエルやらスープやらが次々に運ばれてくる。
「わかりました。受けましょう」
「ありがとうございます。細かいことは後程にしましょうか」
おいしそうな料理が並び、目がそちらにとらわれた私に男性が言う。
「そうですね。今は食べましょう」
お互いに、いただきますをして食事を始める。
(旬のものは俊に食べるのも良いよね)
あくまでも個人的な感想のため、私は心の中で舌鼓を打った。