8>>■カハル視点4
最低限の物しか入ってなかった空間収納鞄でも、剣と火種さえあればそこそこ生きていける。
魔物の肉を食べ、水の確保の為に川沿いを歩く。
目指すは隣国。
その前に身分証を作る為に、俺たちは新しい名前を付けた。
「俺は今日からルジオンな。
セドは今日からリオンだ。
俺はリオって呼ぶからセドはルジって呼んでくれ」
「分かった」
「俺たちは腹違いの兄弟って事にする。父親の暴力から逃げ出して逃亡中。多分所作から分かる者には俺たちが元貴族だってバレるだろう。その時は『見つかったら連れ戻されて殺される』と思わせるんだ。それで誤魔化していこう」
「おう!」
「出来るだけ国から離れよう……。
俺たちは死んだ事になってる筈だ……生きてるなんてバレたら余計に皆を悲しませる……」
「……分かってる……」
「…………遠い国に行こう。そしたら、すこしはゆっくりしような……」
そう言って、俺はセッドリー改めリオンの頬に手を添えた。
薄汚れてしまったその頬に親指を這わす。
「俺は、ハル……ルジが居るならそれだけで安心出来るから……」
ジッと目を見つめてそんなことを言う。
嬉しくて目を細めるとリオンは照れくさそうにはにかんだ。
「……ずっと側にいて欲しい……」
自然と口からそんな言葉が漏れた。
一瞬驚いた顔をしたリオンが頬を赤らめて唇を尖らせる。
「……今更。
……嫌がったって離れねぇからな」
そんな言葉と共に照れ笑いしたリオンが愛おしくて、俺はその唇に噛み付いた。
[完]