こころの夜
ステンドグラスで作られた華美な窓が紅と黄金の絨毯で飾られた廊下を優雅に照らす。
最奥にはすぐに到着した。
「伯爵様、いかが致しましょう。」
「おまえならもう、わかるだろう?」
「……承知いたしました。」
そう主に申し上げ、例のものを取りに行った。
やがて玉座の間に再び戻ってきた。
「お持ちしました。こちらでございます。」
「ふむ、上出来だ。」
「ありがとうございます。」
主にお渡しする。見上げる形になり、伯爵様が神秘的に月光に照らされているのが分かった。
「まだ希望はあります。今すぐに地下から逃げればきっと……」
「ヘルベール。」覇気のある声に硬直する。
「それは、決して許されない。ここで、悪夢は終わらせなければならない。皆のためにも。」
思わず言葉が喉まで出かかった。
しかし、伯爵様の意思を尊重することは責務であるのだからと自戒した。
次第に遠くの方から大勢の兵士の声が聞こえてきた。
「これは試練だが、最大のチャンスでもある。」
「皆によろしく頼む。」
「……ぁ…い……」
声にならない声で返事をし、そして振り返り、唇を嚙み締めながらいよいよ決意をした。
この大扉の先の廊下に広がる闇はおそらくどこまでも暗いのだと悟った。
――去り際にこのように独り言をおっしゃったように聞こえた。
「……まさか最後の晩餐も、この『サラダ』になるなんてな。この地域を、皆を、守り抜かなければ。絶対に。絶対に、ここをあのような輩に渡すわけにはいかない。」
遠くの丘から私達の元居た城を見ると、『彼ら』の声で賑わっていた。
この世で最も感情のこもった水が、頬を滴り落ちた。止め処なく。