Level.5 新入生ユニオン対抗戦メンバー
「ここまでくればもう大丈夫だろ」
警備ロボの追跡を振り切ってショッピングモールの中に入った。
「さっきはありがとな……村雨」
「問題ない……」
村雨はいつも通り涼しい顔をしている。
だが俺も警備ロボから逃げ、昼飯は奪われ、襲われかけたというのに気分はとても晴れやかだった。
自分だけの《SAI》。
さっきからこれを試したくてウズウズしている。
「午後の授業は……?」
「んー俺は取ってねぇかな?
明日《SAI》の技能講習までは暇だな」
「せっかくだから生活用品とか買いたい……」
確かに引っ越して来たばかりで足りない物もある。
「そういやさっきの授業の戦闘で勝った時、戦勝報酬をもらったっけ」
ブレスレット型の生徒端末に触れると2万ゴールドと書かれてある。
あの一戦だけで中々良いい報酬だ。
「生活用品ぐらいだったら買えるな」
俺と村雨はその後ショッピングモールで買い物をして家に帰った。
「おかーりー」
環先輩がリビングのソファで寝転びながら出迎えてくれた。
「およ?
お買い物してきたんだ?
二人とも仲良いねぇ?」
「何言ってるんですか……
というより俺先輩が先生をしてるのに驚いたんですけど」
「授業報酬はでかいからねぇ
柊くんもいずれは先生役になってみた方がいいよ」
と言って環先輩は寮の電子モニターの電源を入れる。
『学園内放送局のアイリスでーす!!
今回も学園内情報を放送するよー
まずは学園内で無許可で《SAI》を使用して戦闘した生徒が逃走したという情報が警備ロボから報告されております』
「うっ……」
……俺達のことだ。
もう情報が出回っている。
『えー続いて刃月学園伝統のユニオン対抗新入生代表戦の各ユニオンの新入生代表が決まったみたいなのでメンバー表を画面に映しまーす
はいドーン』
と画面に表示されたのは4つの各ユニオンから選出された計80人の名前。
入学して間もないというのにもう新入生の中でも優劣が決められているのか……。
「あれ?柊くんも選ばれてるね」
「え?」
環先輩に言われてユグドラシルの新入生代表メンバー欄を見てみると確かに俺の名前があった。
ちなみに村雨の名前も。
「いやーこの寮から二人も代表に選ばれるなんて先輩として鼻がたかいよー!!」
と言って環先輩は頭を撫でてくる。
「いやいやなんで俺が……」
今の段階じゃ村雨とアリス先輩以外は誰も俺の《SAI》について何も知らない筈だ。
つまり選ばれる理由が無い。
「これ……」
村雨が端末から立体映像を映して見せて来た。
そこにはユニオン内新入生代表選出名簿があり、名前と写真の横に選出の理由が書かれてあった。
そして俺の選出理由の所に『碧 幻一郎3年からの推薦』と書かれてある。
「誰だよこの人……」
「へぇ……珍しいね
碧くんが下級生を推薦するなんて」
同じくそれを見た環先輩は驚く。
「環先輩この人知ってるんですか?」
「同級生だからねぇ
それに彼は三年生でありながら学園序列5位だからね
特に彼の推薦なら誰もが納得せざる終えない」
誰だか知らないけど余計なことをしてくれる。
新入生代表戦まで後2日。
まだ俺は自分が《SAI》を使えることを知ったばかりだ。
「大丈夫……何があっても私が守る」
と言い残して村雨はリビングを出て部屋へと戻って行った。
「……」
少し不思議だ。
村雨は何故か俺をずっと助けてくれる。
何かあるのか?
しかし俺は考えるのを一旦やめて、とりあえず代表戦まで自分の《SAI》を鍛えることに専念すると決めた。