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Level.4 目覚め


「人間は生まれながらにして一つだけ《SAI》を持っている……か」


俺は図書室で《SAI》について詳しく書かれた本を借り、公園で昼食を食べながら調べものをしていた。


「俺人間じゃ無いのかな……」


そう考えると辻褄が合う……わけがない。


そんなくだらない事を考えながら俺は、学園内にあるショッピングモールで買ったファーストフード店の限定20食のロワイヤルバーガーを食べようとした。


「ふむ……どう見ても人間にしか見えないが?」


その時、自分が今座っている公園のベンチの隣から声をかけられた。

恐る恐る右を見るとすぐ近くに不思議そうな顔でこっちを見ている女子生徒がいた。


「だ……誰?」


「私はアリス・メイブン学年は2年だ

 一つ言っておくがお前が後からここに座ってきたのだぞ?

 その本を見て独り言をぶつぶつ言いながら……な」


自分の《SAI》のことで頭がいっぱいだったのだろう。

しかしこの公園にはベンチが一個しかなかったので俺は出来るだけ端っこに座った。


「しかしそうか……お前が例の能無しか」

そう言ってアリス先輩は俺の本を手に取り読書を始める。

どうやら学園内の生徒ほとんどに俺の無能っぷりは広まっているらしい。



「今の世の中で生きる為に必要なものはなんだ?」



アリス先輩は唐突に質問してきた。

いやその話全く本と関係のない内容なんですけど……



「お金……ですか?」



「そうだ

 今の時代何をするにしてもそのお金が発生するだろう?

 だがこの学園内では戦績がそのお金の代わりとなっている」


……なるほど言いたいことがわかってきた。


「それ故にこの学園内では強い力を持った人間は全てにおいて優遇される

 つまりは弱肉強食という訳だ」


その瞬間、俺は体が動けなくなっているのに気がついた。

いや違う……動かせないのは服だ。

服が固定されているかの様に動かないのだ。

その証拠に手や足の先顔は動かすことができる。


「物体を固定する《SAI》……!!」


「……察しがいいな

 だがどうすることもできないだろう?

 では私はこのまま君の限定20食のロワイヤルバーガーを勝手にいただくとしよう」


そう言って彼女は俺の昼食を奪い取った。

……なるほど弱肉強食だ。

確かに今の俺には何も出来ない。


「ふむ……なかなかに美味だったぞ?

 まさにカモがネギを背負って来ると言った感じだったな」

と言って彼女は俺の昼食を食べ終えてこっちを見て迫って来た。


「しかしお前……よく見れば可愛い顔立ちをしているじゃないか」

と彼女は俺の顔に手を添えて近づいてくる。


しかしその瞬間……。

アリス先輩と俺の顔の間に刀が割って入る。


「襲われて動けないとは情けない……」

と片手にハンバーガーを持った水凪さんが現れた。


「み……水凪さん?」

どうでもいいけど顔に刀の刃が当たりそうなんですけど。


「村雨……それが私の名前」

いや知ってるけども……


そこからフッ……と風切り音が鳴り目の前から刀とアリス先輩が消えた。


「……これが水凪さんの《SAI》」

風?だろうか……。



「村雨……それが私の名前」

……わかったからそんなドヤ顔でこっちを見るなよ。


「村雨……はなんでここにいるんだ?」


「ずっと後ろにいたけど……?」

……なんで声かけねぇんだよ。

というよりいつから後ろにいたのだろうか。


「誰の物に手を出したかわかっているのか?」

とアリス先輩はすぐに戻ってきた。

アリス先輩は少し制服に傷を負っているものの先程の村雨の一撃を凌いでいた。


「……しつこい女は男に逃げられるよ?」

どうやら村雨も完全に臨戦態勢に入っている。


「いやあの俺動けないから!

 戦るなら離れてくれ!」

と言っても二人とも話を聞いてくれない。


「なんとかして離れねーと……」

そう思った時、俺は体の内側にナニカを感じた。

そして次の瞬間には服の拘束が解けて動ける様になっていた。


「……今のは?」

何故服の拘束が解かれたのだろうか。

しかしアリス先輩の方を見ても何が起こったかわからないといった表情をしている。


「私の拘束を解く方法は私を倒すか……効果範囲外まで私を飛ばすか

 その二つだけの筈だ……」

しかし俺はこうして動けている。


「エルレイド放射光……」

村雨はそう呟いた。

エルレイド放射光とは《SAI》を使う際に出る特有の光のことだ。

つまり俺は今自分の《SAI》を使ったということになる。

そこでようやく俺は全てを理解した。


「無いんじゃない……無くすことが俺の《SAI》だったんだ」

その時、遠くからサイレンの音が聞こえた。

段々と近づいて来るそれが警備ロボだということに気がついた。


「逃げるぞ!!」

俺は村雨の手を引っ張りその場から退散する。


「面白い男だな……

 次のユニオン交流戦で必ず手に入れてみせるぞ」

逃げる俺達を見ながらアリスはそう怪しげに笑った。


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