Level.1 入学式
「これが学園の広さか?」
今俺の目の前にあるこの刃月学園は学園と呼ぶにはあまりに広くまるで一個の都市の様だ。
学園内には全て最新の設備が充実しており、様々な施設が備わっている。
レジャー施設にショッピングモール、映画館に医療施設まで、全てがこの学園内にある。
今日から刃月学園に通うことになり、学園の入り口の正門ゲートの前に立っているのだが正門前では教員が何やら生徒に黒色のブレスレットを配布している。
どうやらこれが生徒証明証の様だ。
俺は教員から受け取った生徒証明証を腕に取り付け学園内へと足を踏み入れる。
バチッという軽い静電気が一瞬、体全体を襲った。
「ここからすでに半仮想世界って訳か」
どうやら学園内全てが半仮想空間に包まれている様だ。
俺は学園内を観察しながら、とりあえず入学式の会場である第一闘技場へと向かった。
闘技場にはすでに700人ほどの新入生が集まっており、これから入学式が始まる様だった。
『えー第18期生の生徒諸君まずは入学おめでとう
私は刃月学園学園長アイリス・ベルモンドだ』
若すぎる……ていうかあれ生徒じゃねぇか?
学園長だからもっとお爺さんが出てくるのかと思っていたのだが、現れたのは同級生かと見紛うほどの若い女だった。
『これから君達はこの刃月学園で幾度となく競い、殺し合うことになるだろう……
欲しいものがあるなら奪え!!
奪われない様に自分を磨け!!
この学園では強者こそが全てであり我々は君達が真の強者になることを期待している
以上だ』
その瞬間、俺の右腕に取り付けられた黒色のブレスレットが振動する。
ブレスレットに触れると、目の前に立体映像画面が表示される。
《No.11985 柊 帝 所属ユニオン ユグドラシル》
所属ユニオン……クラスとかじゃないのか。
『今君達には証明ID番号と所属ユニオンの情報を送ってある
ユニオンとはこの学園におけるチームのことだ
新入生は今4つのチームに自動的に分かれて貰った
まぁ組分けみたいな物だと思ってくれていい』
この4チームで競い合うということだろうか?
俺はブレスレットに付いている通信機能や通貨データなどの機能を確認していく。
『ちなみにこの学園にクラスは存在しない
チームがクラスの代わりと思ってくれ
それでは諸君……チームの為そして個人の戦績の為に精進してくれ』
と言って学園長は去って行った。
説明短すぎだろ……。
するとまたブレスレットが振動する。
《新入生の皆様へ
ユグドラシル所属ユニオン代表の黒銀 寧々です
早速新入生歓迎会を始めたいと思いますので
転移許可の文字に触れてください》
転移?そんなこと出来るのか?
俺はとりあえず立体画面に映る転移許可の文字に触れる。
すると自分の体が青白く発光する。
「うっ……なんだ?」
周りの景色が闘技場から西洋風の室内へと変化してゆく。
転移が完了するとどうやら俺が一番最初だったらしく、周りには誰もいない。
と思った次の瞬間、いきなり目の前に刀身が漆黒の刀が俺の顔を両断しようと迫ってきていた。
「なんだっ!?」
俺は間一髪で刀を躱して、後ろへ飛び退く。
「へぇ……今のを避けるか
お前名前は?」
と俺を襲った背の高い青髪の男子生徒が刀を納刀しながら質問してきた。
知らない相手の顔を容赦なく斬りつけてきやがって……。
「柊 帝今年入った新入生ですよ……
これは何かの試験ですか?」
仮想世界とはいえ顔を両断されていたらと思うと流石にゾッとする。
「いや?
ただちょっと新入生をからかってやろうと思ってな
だがなるほど柊 帝か……覚えておこう」
と言いながらその男子生徒は刀を鞘に納める。
……あのまま斬られていたらどうなっていたんだろう。
と思っていると、恐らく先輩であろうその男子生徒は名乗りもせずに去って行った。
なんかやばいチームに振り分けられた気がする……。
その後、次々と新入生がこの場所に転移してきた。
「寧々先輩!!新入生全員転移完了です!!」
あれが俺達のチームのリーダーか……
身長が高くまるでモデルの様だ。
黒髪でそして何より……胸が大きい。
「新入生の諸君!!
私がユグドラシルのリーダー黒銀 寧々(クロガネ ネネ)だ
初めての仮想空間での生活に最初は戸惑う者も多いだろうがじきに慣れるので安心してくれ
それでは今から各個人の持つ《SAI》を確認していく」
これから調べる《SAI》はこの学園で行われる戦闘において最も重要な力だ。
俺に備わった《SAI》は何だろうか……
出来れば扱い易くて強い《SAI》が欲しいところではある。
自分の順番が回ってきて、検査が始まりブレスレットから立体画面で結果が表示される。
『生徒No. 11985 柊 帝 SAI能力 無 』
……ん?
俺は自分の目を疑ったが何度見ても無と書いてある。
能力無しなんてことあるのか?
測定員に聞いても能力無しですねと言われ、その日俺はその場にいる皆から笑い者にされた。