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「奇跡じゃなくていい~美しくなくていい~」


「何歌おうかなー」


「うぅ…」


大学2年の夏休み、アルバイトを週三日程して、それ以外は家でゲーム、外でりゃパチンコ、競馬、酒飲みをしてだいぶ荒れた日々をすごしている俺(20)と最近仕事を辞めてニートになった友達のノブ(20)、同じ大学に通っていたが最近大学を辞めてしまい相当落ち込んでいるヨシ(19)の三人でカラオケ屋に来ていた。



「うぅ…いてぇ。」


「まだ痛いんか?ノブ?」


ノブがお腹を両手で抑えてうずくまっている。


「う、うん…」


「もしかして緊急事態?」


「…かもしれん。うぅ…」


ただの腹痛ならいいのだが、ノブの顔を見る限り顔色がだいぶ青白くなっている。

しかももう腹痛を訴えだしてからかれこれ1時間くらいたつ。

腹痛は時間がたつにつれ増しているようでただの腹痛ではなさそうだし、俺たちは病院に連れていくことにした。


「んじゃ俺の車だけどヨシ頼むわ!」


「あーはいはい…主催者がへばってどうすんだよって。」


「仕方ねーじゃんか~ちょっとは許してやれよ~」


「チっ」


「あ、今舌打ちしたな~」


「いいからはよ乗りやがれ!」


ヨシが大学を中退して相当落ち込んでいたためノブの提案でヨシを慰める会をしていた。

そして大学を中退したことによってヨシの親がブちぎれ、ヨシを家から半強制的に追い出したことによって若干ホームレス状態になったためカラオケ屋でオールして朝帰る予定だった。

そんな時にノブの緊急事態が起きたため酒を飲んでいた俺とノブは車が運転できず、まだ20になってないヨシは酒を飲んでなかったため必然的に運転をすることになった。


「じゃ出発するぞ。」


「おねげーします!」


「うぅ…」


なんだかんだ言ってヨシはすでに元気を取り戻したようだ。

いつもの本調子のしゃべり方に戻っている。

俺はノブの看病をするため一緒に後部座席に座った。


「近くの病院って何分くらいかかるんだ?」


「とりあえず、oo病院に行くけどこっからだと30分かかるなー」


「30分かーお前持ちそう?」


「う、うん、大丈夫だ。」


「無論飛ばしていくけどね。」


「お!そうこなくっちゃ!」


ここら辺はだいぶ田舎で周りに田んぼと畑しかないような一本道だ。


「…のろいなーこの車抜いていい?てか抜く。」


「んだね。さすがにのろすぎだろ。」


深夜1時を過ぎているのにこの田舎道で珍しく俺ら以外の車が前を走っていた。

その時俺らの車は法定速度60キロのところを80~90キロ出していた。

途中現れたこの車はだいたい20キロくらいだった。


「なんか昔の車っぽい。」


「うん、おんぼろって感じだな。」


最近の車はラメが入っていたり、ピンクに近い赤だったり、種類が豊富だが、前にいる車は昔の女の人の赤い口紅のような赤単色の車で軽だった。

結構目に焼き付く色だ。


「なんかきみわぃ…追い越したら因縁つけてきそうw」


「変なこと言うなよー、そうとしか思えなくなったろー。」


最近見たあおり運転のニュースで、前の車がわざと低速で走って後ろの車を困らせたり前に行かせないようにすることがあるそうだ。

こういうのを逆あおり運転というそうだ。


ヨシが右の指示器を出す。


そのまま右に車を寄せたときだった。


「んん?」


ヨシは前の車を追い越すことなくまた後ろに戻った。


「どした?」


「いや、前の車が右の指示器出してんだけど…」


「本当だ…」


確かに右の指示器を出しているがなかなか右へ曲がろうとしない。


「何で曲がらねーの?」


「知らねーよ。前に車がいるわけでもないし。」


ヨシは右の指示器をいったん下げた。


すると前の車も指示器を下げた。


「え、結局何だったの?」


「し、知らねーよ。」


「やっぱりあおり運転だったのかーw」


「笑い事じゃねーよ!てかノブは大丈夫か?」


「あぁ…何とかまだ…」


「お、おう。とりあえず急がねば…」


「指示器出さないで一気に飛ばして抜いてみたら?」


「そうだな…まあ、あぶなかっしいけどそしなきゃ間に合わん…」


ヨシは前の車に気づかれないようこっそり右によった。


「緊張するな…」


ヨシはアクセルを思いっきり踏んで追い越そうとした。


が…


「え…」


「そんなのありかよ。」


今度は前の車もアクセル全開で一気に100キロくらいの勢いで走っていった。

そして俺たちの車の速度が戻るとあの赤い車も速度が戻った。


「まじで腹立つな…こんな時にあおり運転とかお前も不幸だな…」


「こんなやつ相手にしてても仕方ない。」


「うん。」


「遠回りになるけどこっちの道から行こうや。」


「そ、そうだな。俺も腹たつしきみわぃから賛成。ノブもう少しの辛抱だ。」


「う、うん。」


前の赤い車と車間距離が近づく前に途中で左折して遠回りすることにした。


あの赤い車は俺らの車を追いかけてくるようなことはしなく、そのまま見ることはなかった。


「残念ながら虫垂炎ですね。」


「ってことは手術ですか…」


「いや、あなたの場合はまだ軽いほうなので薬で散らして様子を見ましょう。」


「本当ですか!よかった…」


ノブは虫垂炎だったが、緊急入院することなく、今回はそのまま帰宅することになった。


「よかったな!軽い症状で。」


「うんまじで感謝っす…助かった。」


「にしてもあの赤い車何だったんだろ…」


「確実にあおり運転だよなー。あっそういやお前の車ドラレコついてるだろ?あれ警察に出してみよーぜ?ww」


たしかあおり運転の罰則が強化されたとかなんとかニュースでやっていた。

それはあの赤い車に対する俺らの一番の仕返しになるだろう。


「だな。とりあえず、今日は遅いし、皆眠いだろ。明日ドラレコ確認しよう。」

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