ハルは人が怖いのです
グレープがハルを抱いて戻ると
「グレープ殿ずいぶん時間かかってたようですが」
「ちょっと妹がぐずりだして、あやしてて…」
ハルはずっと私の胸の中に顔を埋めて泣いている
そこに先ほどの少女が私達に近づいてくる
「私があやしましょうか」
「お嬢様行けません!まだはっきりと安全とわかった訳ではないのです!」
メイドの声に反応してハルがさらに泣き出してしまった。
「リズム黙って!私達はあの時全員死んでたのです!それにこの方グレープさんが私達を助けてくれた方かも知れないのですよ!」
「お嬢様、何を根拠にそのようなことを言っておられるのですか?」
「私の勘よ!いいからあなたは黙って!」
「怖いのぉーハルまたどこかに連れていかれるのぉ ビェーン ビェーン ビェーン グスン」
「あの申し訳ないですが、妹もこの状態なので私達は失礼して先に進みます!それに先ほどから何か勘違いされてるようですが、私には高レベルのロマリオ様を含めこのような方々を追い込むようなレベルの者を倒すことは、できません!」
グレープはずっと胸に顔を埋めて泣いているハルをあやしながら歩きだす
「待ちなさい!そんな状態で行かせないわ!」
グレープは、目の前で両手を広げ立ちはだかる令嬢を睨み
「ずっと思ってたんですが、お嬢様はずいぶん失礼な方なんですね、ロマリオ様は身分を証すことの出来ない方の護衛とおっしゃったわ、それってお嬢様のことですよね、そのような方が得たいの知れない者の前に無防備に近づくって、バカなの?もう少し考えて行動された方がよろしいと思いますよ!それに先ほどから名乗りもしないで、そんな失礼な方に大事な妹を触らせるわけないじゃないですか!」
「な・何よ!バカとは!失礼な!私は、モーリスト国第一王女アリス・エル・モーリストよ!」
王女が名前を名乗ったとたんに、ロマリオが王女の前に立ち私の動きを遮った。
「お嬢様!名前だけでよかつたんです!何を身分までばらすのですか!」
私はハルを横に座らせ片膝をつき頭を下げる
「アリス王女とは知らずご無礼な発言申し訳ございません!どうか妹の命だけは助けていただけないでしょうかはなの」
「な・何よ急に!」
「お嬢様あれが普通なんです!お嬢様が身分を明かされたことでとられた行動です」
納得しない王女にメイドが近寄る
「それにお嬢様、このグレープ様のおっしゃった通りです、身分を明かされずに名前だけでもよかつたんです、それにロマリオ様が身分を言わず、護衛をしてるその方自ら、敵か味方かわからない者の前に姿をさらすなんて、考えられません!」
「な・何よ!リズムまで私をバカだと言いたいの!」
「お嬢様よく考えてて下さい!ロマリオ様の行動グレープ様の行動、ロマリオ様は要人の護衛と言って相手に警戒をさせる、グレープ様は身分をさらすことで自分には敵対心が無いことを示したのです」
「敵対心がないならいいじゃない!」
「はぁ…お嬢様、いくら敵対心がないからと言って、相手はAランク冒険者です、妹さんを背負って息も切らさずこの森を歩いて来た方なんです、グレープ様が力を示せばここにいる兵士ではお守り出来ませんよ!しかもお嬢様はグレープ様の大切な妹様に手を出そうとされた、敵対心が無い者でもそこで芽生えるかもしれません!お嬢様グレープ様に謝罪の言葉をおかけください」
「グレープ様ごめんなさい!」
「いえ、王女様お止めください、不敬罪で命が助かっただけで十分です、それに王女様にそのように呼ばれるのはちょっと…」
メイドは、グレープの前に出て頭を下げながら話す
「グレープ様私達の無礼な対応申し訳ございませんでした。それでお願いがあります」
「どうしたの?リズム何をお願いするのよ」
「お嬢様は黙ってて!これ以上ポンコツぶりをさらさないでください」
「な・何がポンコツよ!」
「私が先ほど言ったことまだ理解されてないでしょ?私はグレープ様に大事なお話をします、その事をおわかりになりますか?たぶんロマリオ様はわかっておられると思います」
「な・何よそれくらいわかるわよ!ロマリオはわかってるの?」
「もちろんです!お嬢様、リズムが言わなくても私がお願いしたと思います」
「な・ならいいわよ!私もその方がいいと思うわ!」
「さすがお嬢様よく理解できておられ嬉しく思います」
メイドは、王女を見てにっこり笑う
グレープは、王女達から離れるタイミングを逃し、ため息をつき嫌な予感がするのを感じた
はぁー 何かまずいことになりそう…