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美しくなるために、醜くなるモンスター

 ただ、美しくなりたかっただけ...お金も地位もいらないし興味がない。本当に美しくありたかった。どうして、こうなってしまったの?何がいけなかったの...?なぜ、私だけこんな目に合わなければいけないの...。

 目から雫が垂れ、頬に滴る。ここに一匹のモンスターがいた。『ラミア』それは、大型の蛇型のモンスターであり、上半身は人間で、下半身は蛇に似た姿をしている。舌は二股に裂けており、口は自分の身体よりも大きく開く。人を丸呑みにすることなど、朝飯前だ。そんなラミアは、元々人間の女であった。

 ごくごく一般的な家庭に生まれ、豊かではないが、比較的恵まれた生活を送っていた。人から愛され、人を愛す。それを、知った時から徐々に運命の歯車が回り始めていた。


美形な男性

「君のことが好きだ。ぜひ、僕とお付き合いしてください!」


綺麗な女性

「はい!よろこんで...!!」


彼女は物置から、その経緯を隠れて見ていた。彼女は心が張り裂けそうな気持でいっぱいになった。いつの間にか、涙がたくさん出ている。止めたくても止められない。彼女はその男性のことを慕っていた。思いやりがあり、いつも困っている人に手を差し伸べていた。

 彼女もそのうちの一人であった。きっかけは、落とし物だ。大切なお守りを落としてしまったのだ。一生懸命探しても、見つからない。周囲の人に声をかけたが、忙しいとあしらわれた。途方にくれていたところに、彼は声をかけてくれた。最初は戸惑った。もう見つからないのではないかと諦めていた。しかし、彼は真剣な眼差しで、一緒に見つかるまで探すと言ってくれたのだ。彼女は嘘でも嬉しかったのだ。こうして、二人で探し物をした。

 探し物のお守りはあっさりと見つかった。近所のおじおじいさんが、拾って後で届けようとしていたのだ。二人はそれを知って笑った。あんなに苦労しても見つからないものが、簡単に見つかってしまうことに。

 そして、彼女は彼に恩を返すために彼と行動をとるようになる。子供の遊び相手やお年寄りの荷物持ち、酒場で喧嘩の仲裁など。彼は行動力があり、危険を顧みない勇気ある人物であった。そんな彼を危なっかしく思い、彼女は支えていた。いつも彼の隣にいることが自慢であり、彼を誇らしいと思っていた。そして、彼といることは生きがいでもあった。


 彼女は続けて思い出す。


 ある日、彼は私と同じように困っていた女性を助けた。女性は父親が病気であること。その病気を治すのに、薬草が必要なこと。薬草は村のはずれにある森に生えているとのことだった。実際は道が開いている森の広場のようなところにあるのだが...。まぁ、それを持ち戻った時は、女性は泣いて喜んでいた。彼は少し照れていて、女性といい感じになっているのを横に、彼女は少し妬いていた。それから、その女性は彼に頻繁に会いに来るようになった。彼も満更でもなさそうだったのだ。

 そして、数か月が経ち「あの日」から、彼と女性が恋仲になったのだ。

 私は、美しくなり見返したい。あの女性より美しくなり、彼から思いを告げられたい。気が付いたとき、彼女は黒魔術に手を染めていた。美しくなるための媒体は綺麗な女性の髪だった。彼女は、来る日も来る日も村で集め回った。時には、街へ行き、美しい女性の髪を集めた。さらには、お金を支払って手に入れることもあった。そして、数がそろい、黒魔術を実行した。結果は見違えるほど美しくなった。その日から、彼女は多くの男性から言い寄られることが多くなった。正直、声がかかりすぎて、鬱陶しいと感じたこともあった。

 たくさんの男と遊んだ。昼も夜も、毎日毎日。働く必要もなかった。多くの男が貢いでくれたからだ。しかし、美しくても、年はとる。次第に、言い寄ってくる男も減っていった。


 彼女は少し後悔した表情をする。


 再び、黒魔術を使ったのだ。今度の黒魔術は年を取らないものだ。媒体として、最も自分が大切なもの。彼女は若かりし頃に彼と出会ったきっかけでもあるお守りを媒体として利用した。

 黒魔術は成功した。何年も年を取らず、美しいままだった。彼女は再び自堕落な生活を送った...送るはずだった...

 しかし、周りが老いて死んでいくのに、いまだ若いままだった。周囲から怪訝な目を向けられ始めたころ。彼女の身体に異変が起こった。足から鱗のようなものが出始めた。さらには、目は細くなり、舌が裂け始めたのだ。彼女は逃げ出すように、村から離れ、森に住むようになった。そこで、再び黒魔術の研究に没頭した。人の姿に戻るため必死だった。

 そして、禁忌の情報にたどりつく。自分の望む姿になる呪いに。私は歓喜した。一つ気になる点はあるが、元の姿に戻れるなら魂も悪魔に売れる。そう、禁忌の呪いの触媒は、その望む姿の生物の命だった。

 そうして、彼女は人間になるために人間を辞めたのだった。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。良かったら僕の別の作品でもある、『崩れる王国の終末譚』も読んでいただけると嬉しいです。今回はラミアについて書きました。これからも、モンスター視点で連載していこうかと思いますが、投稿頻度はかなり低いと思います。

 先日、クレイジー・ハングリー・ファットマンを出しましたが。こっちの、連載の方で出そうかと...

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