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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第三章『ロックバンド、砂漠の国を往く』

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七曲目『アスワドの実力』

 アスワドの攻撃は、まさに苛烈だ。手にしているナイフを振り回し、時に蹴りを放ったりと怒涛の攻撃の嵐が襲いかかってくる。

 俺はナイフを剣で防ぎながら、同じように蹴りを放った。ぶつかり合う足と足。剣とナイフ。アスワドの攻撃の激しさに防戦一方だ。


「おら、どうした!? そんなもんか、てめぇは!」


 するとアスワドはまたどこからかナイフを取り出し、二本のナイフを振り下ろしてきた。苛烈さが増す攻撃に、思わず舌打ちする。


「……タケル、どいて」


 そこにサクヤが割り込んできた。

 無理矢理に間に入ると、拳をアスワドに向かって突き出す。だけどその攻撃は軽々と避けられ、アスワドはそのままバックステップで距離を取った。


「っとと。んだよ、ガキ。邪魔するんじゃねぇよ」

「……ガキじゃ、ない」


 ガキと言われて少し怒ったのか、サクヤが一気に距離を詰めて殴りかかる。

 右、左と拳を突き出し、その場で一回転すると右の後ろ回し蹴りを放った。

 アスワドは拳を後ろに下がるだけで躱し、回し蹴りをバク転で避ける。


「はんッ、見るからにガキだろ」

「……また、言った」

「何度でも言ってやるよ。ガキ、ガァァァキィィィィ!」


 子供か。

 アスワドの子供じみた挑発に見事に乗ったサクヤは、どんどん前に出て攻撃をしていく。

 その光景を見ていたシエンは、アスワドに歓声を上げていた。


「いいッスよ、アニキ! やっちゃえッス! って、危な!?」


 アスワドを応援しているシエンに向かって、魔力弾が放たれる。

 ギリギリで避けたシエンは魔力弾を放った犯人、木目調のベースの形をした銃を構えていた真紅郎に向かって叫んだ。


「危ないッスよ!? いきなり何をするんッスか!?」

「いや、これ戦いだからね?」

「オレは戦闘は苦手なんッスよ!?」

「……なら大人しく捕まってね?」

「ちょ、この女怖いッス!? なんか黒いッス!」

「ボクは、男だよ?」


 女に間違われたからか、真紅郎はシエンに向かって魔力弾を連続で放った。

 シエンは慌てながら魔力弾を避け、「嘘っス、女にしか見えないッス!」と叫んでいる。

 どうしてこう、地雷を踏むかな? ほら、魔力弾の数が増えてるよ。

 真紅郎はシエンと、やよいとウォレスは男たちと戦ってる。見た感じ、心配する必要はなさそうだな。


「おっと、いけない。俺はアスワドに集中しないとな」


 気を取り直して、サクヤと戦ってるアスワドの方に顔を向ける。

 すると、サクヤの攻撃によりアスワドの持っていた二本のナイフが吹き飛ばされていた。


「……シッ!」


 短く息を吐いてサクヤが一歩踏み出し、右拳を振り被る。

 アスワドは向かってくるサクヤにニヤリと笑みを浮かべると……またいつの間にかナイフを片手に持っていた。


「おらぁ!」

「……くッ!?」


 無手のはずのアスワドがナイフを持っていたことに驚いたサクヤの動きが一瞬止まり、その隙を逃さずにアスワドがサクヤを蹴り飛ばす。

 両手をクロスさせて防いだサクヤだったけど、体重差のせいで吹き飛ばされてしまった。


「……どこから?」


 吹き飛ばされたサクヤは片手を地面に着け、一回転してから地面に着地する。

 そのまま俺の隣まで移動したサクヤが、アスワドの持っているナイフを見ながら首を傾げた。


「どうした? 俺のナイフがどうかしたのか?」


 そう言いながらアスワドは曲芸師のようにナイフを上に投げる。するとまたどこから取り出したのか分からないけど、もう一本のナイフを投げてジャグリングを始めた。

 ナイフは一本、また一本と増え、合計四本のナイフをクルクルと回しながら投げ続ける。

 そして、最後にはナイフは二本に減り、両手に一本ずつ持って構えた。


「はんッ、間抜け面ぁ晒してんじゃねぇぞ? おら、かかって来いよガキ」

「……また、言った」

「ちょ、ちょっと待てサクヤ! 一度落ち着け!」


 ガキ呼ばわりされたサクヤが、怒りのままに突進しようとしているのを慌てて止める。

 無策で飛び込むのはやめた方がいい。アスワドには何か隠し玉がありそうな気がする。

 だけど、サクヤは俺を無視して飛び込んでしまった。完全に怒りで我を忘れてるな。

 仕方がない、俺も一緒にやるしかないか。


「あん? 次は二人でか? いいぜ、相手してやるよぉぉぉ!」


 二対一でも関係なくアスワドは突っ込んでくる。

 右のナイフでサクヤを牽制し、左のナイフで俺が振り下ろした剣を防いだ。


「おらぁ!」


 そのまま右の回し蹴りをサクヤのわき腹に食らわせ、態勢を崩したサクヤが俺にぶつかってくる。


「……邪魔」


 サクヤは俺を押しのけて、またアスワドに突っ込んでいった。

 頭に血が上ってるのもあるけど、そもそも俺とサクヤは対人戦でのコンビネーションなんて練習したことがない。

 どちらも近接型だし、上手く動きが噛み合わないな。


「喰らえやぁぁぁ!」


 アスワドが気合いの入った声と共に、両手のナイフを同時に振り下ろす。十字を描くナイフはサクヤの体を斬り裂いた。

 衝撃で吹き飛ばされたサクヤは受け身が取れずに、地面を転がっていく。


「ってぇぇぇ!? んだよ、それ防具服か!? お高いもん着てんじゃねぇよ!」


 防具服の頑丈さに助けられ、サクヤにほとんど怪我はない。逆に斬ったアスワドは手が痺れたのか、ナイフを取り落として両手を振っていた。

 チャンスだ。今の状態は俺とアスワドの一騎打ち。それなら俺が、負けることはない!


「__<フォルテ!>」


 一気に走り出し、一撃強化(フォルテ)を使う。

 その勢いのまま剣を振り被ると、アスワドはまたどこからかナイフを取り出して防ごうとした……と、思ったらいきなり後ろに下がった。

 目標を失った剣が地面を叩き、強化された一撃は地面を砕く。


「あ、危ねぇ……なんか嫌な予感がしたんだよなぁ」


 勘が鋭いな。冷や汗を流したアスワドはゆっくりと息を吐くと、ナイフを構え直した。


「お前がアタマだな? 他の奴らとは違う……てめぇ、結構強いだろ?」

「まぁ、それなりに鍛えてるからな」


 俺の答えにアスワドは楽しそうにクツクツと含み笑いをする。


「ククッ、そうか……ま、俺の方が強いけどな」

「たしかに強そうだけど……俺が戦ってきた人に比べれば、全然だと思うぞ?」


 俺がこれまでで一番戦ってきたのは、ロイドさんだ。

 歴戦の最強の剣士にしてユニオンマスター、そして__俺の師匠。

 その人に鍛えられた俺は、そう簡単に負けないし負ける訳にもいかない。

 ロイドさんに比べれば、大抵の人は弱い。それは、アスワドもそうだ。

 なら、俺が負ける道理はない!


「はんッ、そうかよ……だがなぁ、俺は強い奴と戦うと逆に燃えてくるんだよ」


 ナイフの柄をギリッと強く握りしめて楽しそうに、面白そうに口角を歪ませたアスワドは体勢を低くする。


「__今の俺は、最高に燃えてるぜぇぇぇぇ!」


 地面を蹴って突っ込んできたアスワドは、勢いのままナイフを薙ぎ払ってきた。

 その攻撃を防ぐとアスワドはそのまま俺を通り過ぎ、しなやかな動きでジャンプすると空中で一回転してナイフを振ってきた。

 曲芸じみた動きに一瞬気を取られたけど、すぐに剣で防ぐ。


「でぇりゃあぁぁぁ!」


 アスワドはなんと、空中で身を翻すと俺に向かってかかと落としを放ってきた。

 すぐに側転でその場を離れながら避けると、アスワドのかかとが地面を砕く。

 あの体勢からこの威力……ナメてかかったら、負ける。


「<アレグロ!>」


 側転し、足が地面に着いた瞬間に敏捷強化(アレグロ)使ってからアスワドに肉薄する。

 一瞬で距離を詰められたアスワドは、その速度に目を見開いていた。その隙を狙い、剣を右から左に薙ぎ払う。


「危ねぇ!? なんだよその魔法、さっきから詠唱はどうした!?」


 アスワドは地面に頭が着くぐらい思い切り上体を逸らして避け、俺に向かって文句を言ってきた。

 通常、魔法を使う時は詠唱をしないといけない。だけど。音属性魔法は魔法名自体が詠唱(・・・・・・・・)だから、長い詠唱を言わなくてもいいのが利点だ。

 まぁ、他の人からしたら意味が分かんないよな。

 横に振った状態の剣を即座に振り上げ、アスワドに向かって振り下ろす。


「ナメんな!」


 俺の攻撃をアスワドは上体を逸らしたままその場で一回転し、遠心力を使って後ろ向きのままナイフを振ってきた。

 予想外の動きに俺は剣を振るのを止め、しゃがんで攻撃を避ける。

 そして、しゃがんだまま俺も一回転し、下からすくい上げるように右の後ろ回し蹴りを放った。

 俺の蹴りは見事に、アスワドの右頬に直撃する。


「ぐお!? いってぇなぁ、ごらぁ!」


 だけど、アスワドは怯むことなく飛び蹴りをしてきた。

 剣で防いだけどその勢いに押されてたたらを踏み、距離が離れてしまう。

 口から血を流したアスワドは、地面にペッと血を吐いて笑った。


「いいな、てめぇ。俺が戦ってきた中で、間違いなく一番強い。こんなに熱くなったのは初めてかもしれねぇな」

「そいつはどうも。お褒めに与り光栄だ」

「はんッ、思ってもないこと言うんじゃねぇよ。変な魔法に、武器は魔装。着ているのは防具服。成金野郎かと思えば、それに見合う実力……おい赤髪、てめぇの名前はなんだ?」

「……タケルだ」

「そうか、タケルだな」


 俺の名前を聞いたアスワドはナイフをどこかに仕舞い、無手で立ち尽くす。


「タケル。てめぇはかなり強い。下手すれば俺よりもなぁ……だけどよぉ、俺はまだ本気を出してねぇんだよ」


 そう言いながらアスワドは、自分が着ている黒いローブを掴む。


「こっからが俺の本気だ……黒豹団のアタマ、ナメんじゃねぇぞ?」


 ニヤリと笑ったアスワドは黒いローブを思い切り引っ張った。

 そして、黒いローブは形を変えて(・・・・・)武器へと変貌する。


「な!? まさか、それは……ッ!」

「魔装を持ってんのは、てめぇだけじゃねぇんだよ」


 アスワドは右手に魔装__わずかに曲がった細身の片刃刀、シャムシールを構えて不敵に笑った。


 

 

 


  


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