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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第三章『ロックバンド、砂漠の国を往く』

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五曲目『賞金の使い道』

「ふっふっふ。どう、タケル? だから言ったでしょ?」


 大食い女王の称号と賞金を手に入れたやよいが、俺に自慢げに声をかけてくる。凄いドヤ顔だ。

 俺は脱帽とばかりに、拍手でやよいを迎える。


「凄かったよ、本当に……軽く引くぐらい」

「でしょ? 凄いでしょ? って、あれ? 今、軽く引くって……」

「ヘイ、やよい! その賞金どうするんだ?」


 俺とやよいが話していると、ウォレスが賞金の使い道を聞いてきた。

 中々な高額賞金だったけど、これはやよいが手にした物だ。なら、使い道はやよいが決めるべきだろうな。

 すると、やよいは笑みを浮かべてサクヤの肩をポンッと叩く。


「これはサクヤの<防具服>を買うのに使うよ!」

「……ぼくの?」


 突然の提案に、サクヤが驚いたように目を丸くする。

 防具服は俺たちが着ている、モンスターの素材で拵えられたその名の通り防具になるほどの頑丈な服のことだ。

 なるほどな。サクヤの今の格好はボロボロな布のローブだけ。俺たちは防具服を着ているのにサクヤだけがそんな格好なのは、ちょっとな。


「それはいいな」

「でしょ? <コルド防具服店>って全国展開してるって言ってたし、ヤークトにもあるんじゃないかな?」

「そうだな、探してみるか」


 という訳で俺たちは防具服の専門店、コルド防具服店を探し始める。

 この街は結構広いし、見つけるのはそう簡単にはいかないだろうな……と、思ってたけど。


「……意外とすぐに見つかったな」

「ハッハッハ! まぁ、これだけデカい(ビッグ)なら当然だな!」


 探し始めて五分もかからずに、コルド防具服店ヤークト支店を見つけることが出来た。

 他の店とは一線を画すほど大きく、清潔感のある立派な外観だ。

 俺たちは店に入ると、中にいたメガネをかけた優しそうな男性が頭を下げて出迎える。


「いらっしゃいませ、コルド防具服店ヤークト支店にようこそ。ご利用は初めてでいらっしゃいますでしょうか?」

「あ、いえ。マーゼナル王国にある本店を使ったことがあります」


 そう言いながら、俺たちが防具服を買ったマーゼナル王国にある本店。その店長のコルドさんに貰ったカードを見せる。

 すると、男性は驚いたように「そ、それは……」と呟いた。


「そのカードは、コルド様が懇意になさってるお客様にしかお渡ししない物。なるほど、失礼いたしました。私はヤークト支店の支店長をしております、ラルドと申します」


 カードを確認したラルドさんは深々と頭を下げた。これ、そんなに凄いカードなのか。

 カードを眺めていると、ラルドさんはにっこりと笑いながら商談を始めた。


「今日はどういったご用件でしょうか?」

「この子の防具服を見繕って欲しいんです!」


 やよいはサクヤの背中を押して、ラルドさんにお願いする。

 すると、ラルドさんは「ふむ」と呟くとサクヤの頭から足の先までジッと見つめて考え事を始めた。


「ダークエルフ族の方ですね。ふむふむ、物静かな性格で徒手空拳で戦う方だとお見受けします。でしたら、派手すぎないゆったりとした動きを阻害しない防具服がよろしいでしょうね」


 一眼見ただけでそこまで分かるのか。

 呆気に取られているとラルドさんは店内に展示してある防具服を見渡し、ある物に目を止めた。


「これはいかがでしょうか?」


 そして、手にした防具服をサクヤに手渡す。

 受け取ったサクヤはジッと防具服を見つめ、どうしていいのか分からずに戸惑っている様子だ。


「ほら、サクヤ! 試着してみようよ!」

「……分かった」


 やよいに言われて、サクヤは試着室に入っていく。

 それから十分ぐらいして、試着室からサクヤが出てきた。


「……どう、かな?」


 サクヤが少し照れた様子で感想を求めてくる。

 上は少し大きめの深い青色をした、ふくらはぎぐらいまであるロングパーカー。パーカーの前の部分は右側にあるボタンで留められ、口元が隠れるようになっている。

 手には黒いオープンフィンガーグローブ。下に黒いアンクルパンツと同色のブーツを履いたサクヤを見て、やよいは目をキラキラとさせていた。


「うん、似合ってる!」

「……そう?」


 やよいに褒められたサクヤは頬をポリポリと掻きながら目を逸らす。

 そこでラルドさんが満足そうに頷いて口を開いた。


「よくお似合いですよ。ちなみにその防具服に使われている素材なのですが、<アースクアーロ>の素材をふんだんに使っています。そのままだと触れただけで傷ついてしまうので特殊な加工法でザラザラとした表面をなめし、柔軟さと強靱さだけを残しています。それを<ドラゴンビアード>の深い青みのある実を使って染め上げました。ズボンはヌークの皮と、裏地にアースクアーロの皮を使った一品です。防御力もありながら動きを阻害せず、それでいてサクヤ様に似合う物を選ばせて頂きました。ちなみに、そのグローブは逆にヌークの皮を裏地に使い、アースクアーロの一番硬くそれでいて柔軟性のあるヒレの素材を使っております」


 あ、やっぱりここでもその長い説明はあるのか。

 アースクアーロってたしか、地面を泳ぐサメ型のモンスターだった気がする。つまり、サクヤの防具服はサメの素材をふんだんに使った物ってことか。


「どうでしょう?」

「……気に入った」


 ラルドさんはサクヤの答えに満足げに微笑む。サクヤも気に入ったみたいだし、これにするか。


「それでお値段なのですが……カードがございますし、これぐらいでいかがでしょう?」


 ラルドさんが提示してきた値段は、やよいが獲得した賞金の半分ぐらい。正直、防具服にしてはかなり安かった。


「え? い、いいんですか?」


 心配になったやよいが問いかけると、ラルドさんはにっこりと笑みを浮かべて答える。


「えぇ、もちろんですよ。あなた方はコルド様が懇意になさってるお客様でございますので。それでも気になるようでしたら、これからもコルド防具服店をご贔屓にして頂ければ」

「……分かりました! これからもコルド防具服店で買うし、他の人にも宣伝していきます!」

「それはそれは。今後ともよろしくお願いいたします」


 ラルドさんは最初は目を丸くしていたけど、すぐに嬉しそうに微笑んで頭を下げた。

 こうしてサクヤも防具服を手に入れ、俺たちはコルド防具服店を後にする。


「あとは魔装だよなぁ」


 サクヤに必要なのは魔装だけだ。だけど、骨董品屋で売られていた魔鉱石は今の俺たちには届かないほど高い。

 クリムフォーレルの素材がどれぐらいで買い取られるのか次第では、当分この国で依頼をこなして金を貯めるしかないか。

 鑑定もそろそろ終わってる頃だろうし、一度ユニオンに戻ろう。


「ただいま帰りまし、た……」


 ユニオンに戻ってきて最初に目に入ったのは、死んだ目をした真紅郎がうなだれている姿だった。

 そのあまりにも悲惨な姿に、俺たちは唖然として何も言えなくなる。すると、真紅郎は俺たちに気付いてフラフラとした足取りで近づいてきた。


「やぁ、タケル……おかえりなさい」

「お、おぉ。だ、大丈夫か?」

「え? 大丈夫に見えるの? 本当に?」


 こ、怖い。かなり怖い。マジで怖い。

 無表情の真紅郎は、濁った目で俺を見つめてくる。何があったんだ?


「へ、ヘイ、真紅郎。何があった(ホワットハプンド)?」

「……聞きたい?」


 ウォレスの問いかけに真紅郎が問いかけで返すと、嫌な予感がしたのか「の、ノー」とウォレスは目を逸らす。


「おぉ、あんたたち帰ってきたのかい? クリムフォーレルの鑑定終わったよ」


 黒いオーラを纏っている真紅郎をどうしたらいいのか困っていると、アレヴィさんが話しかけてきた。

 これは張本人に聞くしかないな。


「あ、あの、アレヴィさん? 真紅郎に何をしたんですか?」

「あん? あぁ……ちょっとね」


 いや、そのちょっとを聞きたいんですけど!?

 でも聞いたら後悔しそうな気がするな。


「……で、どれぐらいで買い取ってくれるんですか?」


 結論、無視しよう。触らぬ神になんとやら、だ。

 アレヴィさんはニヤリと笑みを浮かべると俺に金が入った袋を手渡してきた。


「まぁ、ざっとこれぐらいだ」

「お、重っ!?」


 袋は思ったよりも重く、思わず落としそうになった。

 中身を確認すると、かなりの大金が詰まっている。


「クリムフォーレル……ドラゴンの素材ってのは欲しがる奴は多いが中々手に入らなくてねぇ。だから今回はかなり助かった。その礼も兼ねて、相場よりも多少は高めに買い取らせて貰ったよ」

「あ、ありがとうございます」


 結構な値段で売れたものの、これと今の手持ちを合わせても魔鉱石には届かないな。


「ねぇ、ウォレス。ボクの話を聞いてくれる? ねぇ、ねぇってば」

「ヘイ、真紅郎! それ以上オレに近づくんじゃねぇ! 怖いんだよ! ホラー映画も真っ青だぜ!?」


 真紅郎とウォレスを無視して、俺はサクヤの魔鉱石を手に入れるために頑張って依頼をこなしていこうと心に決めた。




 


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