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漂流ロックバンドの異世界ライブ!  作者: 桜餅爆ぜる
第三章『ロックバンド、砂漠の国を往く』

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プロローグ『砂の大地』

「あついあついあついあついあつい……」


 燃えたぎるように輝く太陽。足が取られて歩き辛い砂。乾ききった風。

 そんな広大な砂の大地<アルデラ砂漠>を、俺たちロックバンド<Realize(リアライズ)>は進んでいた。

 目的地はアルデラ砂漠にある商業の国<ヤークト商業国>。そこを目指して歩き続けているけど、正直体力の限界が来ていた。


「ねぇ、まだ、なの? 私、もう、キツい……」


 最後尾を歩いているRealizeの紅一点、女子高生ギタリストのやよいがゼェゼェと荒く息をしながら聞いてくる。

 やよいの綺麗な長い黒髪は砂と汗でボサボサで、目は虚ろになっていた。

 砂漠なんて歩いたこともない上に、照り返す太陽の下で歩き続けて体力がどんどん削られていく。俺たちの中でも体力がない、女子のやよいには相当キツいだろう。


「ねぇ、タケル……いつ、着くの?」


 息も絶え絶えになりながら、やよいが俺にまた問いかけてきた。

 汗を腕で拭い、後ろにいるやよいの方を振り返る。


「いつ着くかは、分からないな……どうなんだ、真紅郎?」


 目的地のヤークトまでの距離を、栗色の髪のぱっと見だと女性に見えるほど中性的な容姿をしたベーシスト、真紅郎に聞く。

 すると、真紅郎は力なく笑いながら答えた。


「今日中には、着くんじゃない?」

「だから、どれぐらいなんだ?」

「ボクだって、知らないよぉ……」


 真紅郎も限界みたいで、がっくりとうなだれてる。

 唯一、この中で元気なのは……。


「オレ、もう、無理__って、あちちちちち!?」


 それは、鍛え上げられたがっしりとした体格に、太陽の光で煌めく金色の短く切り揃えた髪をした男。

 外国人ドラマーのウォレスはたっぷりと日の光を浴びて熱を帯びている砂に倒れ込み、その暑さからのたうち回っている。

 元気だな、こいつは。


「……暑い」

「きゅうぅぅ……」


 最近俺たちの仲間になった白髪褐色肌の小柄な<ダークエルフ族>の少年、サクヤ。

 いつも無表情で何を考えているのか分かり辛いサクヤだけど、初めての砂漠に辟易としているのが見ただけで分かった。

 その頭の上にいる、額に楕円形の蒼い宝石がある白い小キツネのようなモンスターのキュウちゃんもぐったりしている。

 モフモフとした体毛をしたキュウちゃんには、この暑さはかなりキツいだろうな。

 それにしても、暑い。これは少し休憩しないとダメそうだな。だけど、こんな砂ばかりの場所で休めるようなところはない。


「もう、げんかい」


 ここで、やよいが膝を着いた。


「お、おい! 大丈夫か、やよい?」


 俺が声をかけると、やよいは力なく首を横に振る。

 やよいの様子を見るに、多分熱中症になりかけてるな。これは、歩くのは厳しいか。


「やよい、乗れ」


 やよいの前にしゃがみ、背中を向ける。

 素直に俺の背中に乗ったやよいをそのまま持ち上げ、背負ったまま砂漠を歩き続ける。

 軽いなと、やよいを背負いながら思う。こんな華奢な体で砂漠を抜けるのは難しいだろう。

 少しでも休めるところがあったら、休憩にしよう。そう思いながら歩いていると……。


「ん? なんだろう、あれ?」


 真紅郎が何かに気付いた。

 すると、遠くの方から爆発するような音が聞こえる。

 目を凝らして見てみると、遠くで誰かがモンスターに襲われているのが見えた。


「あれは……<ヌーク>か?」


 襲われているのは<リドラ>という二足歩行のモンスターが牽引する<竜車>と、商人らしきおっさん。

 襲っているのは鎧のように岩を纏った牛型のモンスター__<ヌーク>だった。

 ヌークの数は三頭。興奮している様子で、今にもおっさんに襲いかかろうと前足で砂を蹴っている。


「ウォレス。ちょっと、やよいを頼む」

「オーライ」


 やよいをウォレスに預けた俺は、一気に走り出した。

 砂を蹴り上げて走りながら<魔装>__武器を展開し、柄の先にマイクが取り付けられた剣を握り締める。


「<アレグロ!>」


 そして、<音属性魔法>__敏捷強化の魔法を使った。

 速度を上げた俺は剣を左腰に持って行き、集中する。魔力を操作し、剣身に魔力を集めて一体化させた。

 そのままヌークに肉薄し、居合いのように剣を薙ぎ払う。


「__<レイ・スラッシュ!>」


 魔力を込めた一撃、俺の必殺技のレイ・スラッシュをヌークに叩き込んだ。

 その一撃でヌークが纏っている岩の鎧ごと、その下の肉も斬り裂く。

 

「な、だ、誰だ!?」


 おっさんはいきなり現れた俺に驚いている。

 一撃でヌークを倒した俺は、おっさんを守るようにヌークの前に立ちはだかった。


「俺はタケル! 旅人です! 助けに来ました!」


 ヌークから目を離さないまま、おっさんに答える。

 目を丸くしているおっさんに、俺は剣を構えながら声を張り上げた。


「こいつらは俺がなんとかします! その間に逃げて下さい!」

「か、感謝する!」


 おっさんはすぐに竜車に飛び乗り、リドラの手綱を取って慌ててその場から離れる。

 それを見届けてから俺は、剣を構えて叫んだ。


「来い! 俺が相手だ!」

「__ブモォォォォォォッ!」


 そのまま俺は、雄叫びを上げて突進してくるヌークに立ち向かう。

 強敵だったワイバーン__<クリムフォーレル>と戦った俺には、簡単な相手だ。

 突進してくるヌークたちを躱しながら、俺は剣を振り被った。



 

 

今日から3章スタートです!

よろしくお願いします!

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